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映画・演劇のレビュー

『お嬢さん』

2017-03-08 23:40:24 | 映画
パク・チャヌクの新作だ。昨年『シークレット・ガーデン』でハリウッドデビューを果たした彼が再び韓国に戻り、作った大作である。日本の統治下にあった朝鮮を舞台にして、朝鮮で育った日本人女性と彼女の世話をすることになるメイド、彼女の持つ遺産を奪うため彼女に近づく詐欺師の男、その3人のお話。3部構成で2時間半の大作である。視点を変える3つの同じ話が(微妙に重なるという程度だけど)そのズレを通して、彼ら3人のひとつのお話へと収斂されてくる。



だいたい全体の半分が日本語での会話で構成される韓国映画である。しかも、日本人をキャスティングしてない。それだけで困難が生じるはず。でも、前作で全編が英語の映画(アメリカ映画ですから)を作りあげた彼にとって半分日本語くらいなんでもない(かも、しれない)。



だましだまされ、どれがほんとうでどれがうそかもわからない。もちろん、主観のモノローグには嘘はないはずだから、各エピソードの独白部分は信じる。でも、人の気持ちは揺れ動く。3人それぞれの事情や思惑が交錯する。かなりどぎつい描写もあるけど、とてもおしゃれでスタイリッシュな映画に仕上がっている。こんな話なのになぜか泥臭くない。



ただ、昔のパク・チャヌクの映画と較べると、なんだか、きれいすぎて、つまらない。洗練されないよさが、彼の身上だったのに、これではなんだかカッコよすぎる。(それって、ドロドロのほうがよかった、ということなのか?
なんかそうじゃない気がするんだけど)

話自体はドロドロで、もうどうしたらええねん、の世界なのだが、なんだかなぁ、なのである。



ラストの爽快感は悪くないし、お嬢さんが新しい世界に手を携えて旅立つのも、悪くない展開だと思う。だけど、なんか、あと少し何かが足りない気がする。
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