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映画・演劇のレビュー

『ぼくのエリ 200歳の少女』

2011-06-23 22:45:08 | 映画
こういうバンパイアものはめずらしい。これはホラーではない。ひとりの孤独な少年と、少女が、心を寄せ合いひとつになるまでの物語だ。

北欧の閉ざされた空気の中で、ひっそりと延々の時間を生きる少女。彼女をみつめて、彼女と共にこの世界から孤絶してもいいと願うことになる少年。誰かを好きになるって、とても孤独なことなのかもしれない。そりゃあみんなに祝福されて、幸せに生きる恋人たちもいるだろう。だけど、みんながみんなそうではない。ひとりぼっちとひとりぼっちが肩寄せ合い、周囲から離れて自分たちだけで、傷を舐め合うようにして生きる。そういうことだってある。

 ここでは彼女がバンパイアだから、という前提は実はどうでもよくて、これはそういう枠組みを使って象徴的なドラマとして見せた孤独な魂へのレクイエムなのだ。心静かに彼らの孤弱を哀れんで彼らが誰からも知られることなく、息を潜めて生きていこうとする姿を見守るしかない。それがどこに行き着くことのなるのか、それさえもわからない。決して幸せには続かないだろう。だが、彼らはこんな風にして生きていく。その事実を受け止めよう。

 それにしても、このタイトルは酷い。もう少しなんとかならなかったのか。200歳の彼女、なんて言われたらそれだけで見る気が失せる。余談だが、昨日映画館に行った時やっていた『モールス』という映画の予告編を見て、驚く。なんとこの映画そのものだった。ハリウッドお得意のリメイクである。予告を見た感じでは、まるでそのままだった。

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