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映画・演劇のレビュー

『遠い道のり』(『最遙遠的距離』)

2010-02-18 16:02:06 | 映画
 つまらないわけではない。だが、期待したほどではなくちょっとがっかりした。『言えない秘密』『藍色夏恋』のグイ・ルンメイと『一年の初め』のモー・ズーイーが主演のハートフル・ヒーリング・ロード・ムービー!(なんちゅう説明だ)

 説明がほとんどないのはいいけど、主人公の気持ちまで、説明なしで理解せよ、と言われているようで、それは監督(リン・チンチェ )の独りよがりです。彼らの想いは映画の中からしっかり伝わって来なければ映画としては失敗ということになる、と思うけど。設定はおもしろい。だが、あまりにご都合主義すぎて乗り切れない。

 寝坊で仕事(映画の録音技師をしている)を首になったシャオタン(モー・ズーイー)は、台湾一周の旅に出る。かっての恋人に、旅先での様々な音を集めたカセットを一方的に送りつける。精神科医の中年男は自分もまた精神を患ってある日旅に出る。旅の途中で偶然の事件からシャオタンと出会い一緒に旅をすることになる。

 以前この部屋に住んでいた住人宛に届くカセットテープ。それを無断で、聞いてしまうシャオユン(グイ・ルンメイ)。そこには様々な波の音が録音されてある。その音が彼女の心を捉える。やがて、何度となく届くカセットが彼女の楽しみとなっていく。都会での味気ない生活。職場の上司との不倫。そんな毎日に苦しむ彼女は、送られてくるカセットの差出人を捜して旅に出ることにする。音が録音された場所に立ちその風景を確認する。少しずつ彼に近づいていく。

 この2人の主人公は映画の最後まで出逢わない。前半は、シャオタンの一人旅。途中から精神科医との2人旅となる。シャオユンは届けられるカセットの音を聞きながら都会での味気ない暮らしに耐える。やがて彼女も旅立つ。男2人の旅と、女ひとりの旅とを交錯させながら、美しい台東の風景をバックにした旅が描かれていく。

 あまりにありきたりで都合のいい展開は、それなりに心地よいリズムを形作る。だから、別に腹は立たないが、メルヘンとしてもう少し上手く見せて欲しかった。それならきっと納得がいくのだが、嘘くさいので、これでは乗り切れない。静かな映画で、風景だけを見てる分には癒されるのだが、もうすこしお話に工夫が欲しい。











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