習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

小路幸也『東京バンドワゴン ヒア・カムズ・ザ・サン』

2015-09-08 22:22:16 | その他

なんとシリーズ第10弾となる。毎年1冊で10年も続いているのだ。(スピンオフが2冊あるけど)毎回毎回同じようなお話で、1年の春夏秋冬の4章仕立て。同じパターンでの構成。

でも、そんな中で、家族や親戚、友人の類がどんどん増殖し、もう収拾がつかないくらいになっている。でも、毎回律儀にもそんな大家族のひとりひとりをちゃんと紹介して、彼らの毎日をフォローしてくれる。

特別なことなんか何も起こらなくても、とても楽しい我が家の毎日。そんな感じがとても素敵だ。それにしても、ここまで続くとは思いもしなかった。小路幸也はこのシリーズだけではなく他にも多作なのに、凄い。

ほんというと、ここまで続くとさすがに飽きてきそうなものなのに、そうはならない。不思議だ。でも、その理由は、明らかである。今の時代ではもうファンタジーの領域にある大家族という設定を、この時代のリアルとして提示できたところにある。

お決まりの「LOVEだねぇ」もそうだ。今時、それはないだろ、と思うところを、そうはさせないで納得の展開で切り抜ける。

少しずつ成長していく家族の姿もこの作品の魅力だ。変わらないのは、変わり続ける、に裏打ちされている。今回は本棚から本が落ちる怪談話からスタートして、研人の高校受験を巡るお話で締める。変わりない日常がこんなにも愛おしい。


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