山崎貴監督のデビュー作『ジュブナイル』がとても好きだ。子供たちが生き生きしていて、彼らとともに時間を旅する香取慎吾が子供たちをしっかりとリードする子供心を今も持ち続ける大人を演じた。今回の作品はあの映画のテイストを引き継いだものだ。彼にとってもある種の原点帰りの一作であり、初心に戻り、今の自分を再確認する、そんな作品になったのではないか。
僕はあの映画を見て彼のファンになった。あんなにも楽しくてワクワクさせる映画はめったにない。その後のすべての作品を公開時の劇場で見ている。1本として期待を裏切らない。この20年さまざまなタイプの映画に挑戦して、確実な成果を上げているのだ。凄い。自分の得意ジャンルを中心にして、でも、与えられたチャンスをきちんとものにして、キャリアを積んできた。なんと次回は『ゴジラ』の新作に挑むらしい。彼が作るならきっと今までのゴジラ映画とはまるで違う心のこもった作品になるだろう。今回彼は再び夏休みの子供向けの娯楽映画に挑んだ。『学校の怪談』シリーズのようなテイストのファミリーピクチャーだ。でも、子供だましの子供に媚びた安易な映画になんかするわけもない。暖かくて、優しい。そして見終えた後、心に沁みる映画だ。
仕事を失い、仕方なく田舎の小学校の産休教員として赴任してきた新垣結衣と、彼女が受け持つことになったクラスの3人の男の子たちが、ゴーストブックに導かれて、まさかの冒険に出る。自分たち以外誰もいない異世界(そこは彼らが住む町と一見同じなのに、いろんな細部がなんだかヘンテコで、それが徐々にエスカレートしていく)に連れ去られた彼らが、なぜか今事故で死の淵にあるクラスのなかよし女の子と一緒におばけを探し出す。もちろん先生も一緒だ。この5人組がおばけたちを捕獲することで願いをかなえるまでのお話。ちょっとなんとなくゴーストバスターズのようなお話でもある。串団子式のお話の展開はのんびりしていて心地よい。今時のスピード優先の派手で荒っぽい映画ではない。
小さな子供から大人までもがそれぞれ「自分の今」と向き合いながら、見ることができる映画なのだ。大人には懐かしさを、子供にはワクワクを提示する。こういう映画が子供時代に見れるって素敵だ。ぜひ小学生に見てもらいたい。