『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督の新作。今年の2月にひっそりと日本でも劇場公開されていた。主人公の18歳の少女マレンを『WAVES ウェイブス』のテイラー・ラッセル、その恋人となる青年をティモシー・シャラメが演じたロードムービーなのだが、単純な青春恋愛映画ではない。お話の中心にあるのは彼らが人肉を食うということ。だからこれは一応ホラー映画に分類されている。残酷なシーンも多々ある。R18+の映画だ。(もちろんエロはない)
なんと2時間11分の長尺。この手の映画は(ホラーですよ!)せいぜい1時間40分までが普通だけどこの長さは異常だ。まぁこれが通常の(普通の)ホラーじゃないからだろう。ルカ監督はホラーを作っている気はまるでない。設定に利用しただけ。
あくまでも居場所を失った少女の旅を描くことが眼目だ。だけどそれだけなら人肉を食べるという設定はなくてもいい。敢えて食人族のような設定を利用したのは彼女の抱える孤独を絶対的なもにするためだろうか。誰からも理解されないし、話も出来ない。だが彼女は旅の途上でたくさんの同族に出会う。彼らは優しいし彼女のことをわかってくれる。でも、それぞれが抱える孤独を共有できるわけではない。いろいろとお話には仕掛けはあるが、あまり説得力はなし、納得はいかない。なんとも中途半端で残念な1編だった。(劇場で見なくてよかった)