シリーズの第4章であり最終章だと思ったのだけど、なんだかまだまだ続きそうな一作。最初の『かげろうのむこうで 翔の四季 夏』はとてもよかった。だけどその後なんだか方向性が変わってしまって戸惑う。もちろん作者である斉藤洋さんにとっては最初からこのつもりだったのかもしれないが、僕はもっと淡い感じの話を期待したみたいだ。主人公の翔を取り巻く人たち、そして彼自身の小さな成長を描く1年間の軌跡。それだけでよかった。彼には世界との微妙なズレ、違和感がある。実際時間がズレて聞こえるのだ。
だけど、それだけで他には変わったことはない、はずだった。なのにそのズレがだんだん大きなものになる。エピソードごとに同じような仲間がひとりひとりと増えていく。シリーズを重ねるごとに、である。そしてここには4人になった彼らの戦いが描かれる。
日常の中でそんな違和感と戦い、踏み越えてしまう瞬間が描かれる。学校を休んで北海道にいる祖母(霊媒師)を訪れる杏、知里がトイレの花子さんを演じたことから始まり、都市伝説「首なし女」のことに至る。翔と涼のふたりにこの女の子たちを含めた4人はこの先どこに向かうことになるのか。話は佳境に至るところで終わった。ということは次が完結編なんだろうか。
翔たちはこの世界とどう向き合い、どこで折り合いをつけるのか。6年生になった彼らの冒険はやがて小学校生活最後の夏に向かっていく。