なんだかこれは凄いタイトルではないか。こんなタイトルを付けた本がいったい何を描いたのか、それが気になって読み始めた。作者の青山ゆみこさんは初めて。彼女がどんな人なのかも知らないまま読み始め、そこで初めてこれが小説ではなく、自分との戦いを描くエッセイだということを知る。
2020年から23年にかけてのお話。これもまたコロナ禍のドラマだが、彼女にとってはコロナなんて関係ない。今は自分自身の危機と向き合うことだけでいっぱいいっぱい。2020年10月、心がポキッと折れた。そこから始まる。
50年近く生きてきた。そんなある日、心と身体に限界が来た。あからさまな不調の原因は明確ではないけど、もう元気じゃない。生まれたところから始まる原因追求、さりげなく結婚やアルコール依存性のことも(はっきり)描きながら、真正面から自分と向き合う。これは凄い。ここまでやるのか、と思うほどに。
終盤になってさらにお話は怒濤の展開を遂げる。病気を克服していくのだが、つまらない美談なんかではない。アルコール依存を克服するなんてまだ始まりに過ぎない。そこから本当の自分との戦いが始まる。まず『自分の居場所を作る』(第5章)。誰かと関わるために、小さな部屋にこもる(6章)。それは逃げ場ではない。戦うためのアジールだ。そしてクライマックスである『めまいを巡る冒険』(7章)が始まった。原因の根底に迫り解決に向かう。この強さがどこから生まれたのか。彼女はうつ病と戦い、勝たないけど、負けない。とても立派だった。