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映画・演劇のレビュー

『17歳』、そして、年末見た映画のこと

2015-01-06 20:52:16 | 映画
年末に見た10本の映画のことを書こうと、思っていたけど、何もしない間にお正月休みは終わってしまった。選んで借りてきたから、はずれはない。少し冒険した作品には、確かにちょっと問題ありの映画もあるけど、それは最初から許容範囲内だ。誰が『ザ・タワー』(もちろん、韓国版『タワーリング・インフェルノ』である)なんて映画を傑作だと思うものか。(でも、豪華な顔ぶれで、韓国映画界が総力を結集した超大作である。2時間、手に汗握る作品だ)『セブン・サイコパス』も、他が重い映画ばかりなので、しんどいから、息抜きで借りてきただけ。(かなり、ぶっ飛んだ映画で、好き嫌いはあるだろうが悪くはない。)

そういうのは除くと、後はちゃんと選んで借りた作品だ。『セッションズ』『もうひとりの息子』『はじまりは5つ星ホテルから』『共喰い』『バーニー みんなが愛した殺人者』そして、フランソワ・オゾンの新作である『17歳』。すべて、傑作ばかりだ。ちょっと冒険した中国映画『東京に来たばかり』は、残念ながら少し作品としては突っ込みどころ満載だが、でも、気持ちのいい映画だった。それにしても、我ながらバラエティの富んだいい選択だ。1本として同じ傾向の作品はない。そんな中からまず1本。『17歳』である。

『17歳』は衝撃的な映画で、(というか、いつもオゾンはそうだが)「なんで、」の連発。どうしてそんなふうになってしまうのか、理解に苦しむ。でも、彼女は、僕たちに理解してもらおうとは思ってない。たぶん。

自分にもわからないのかもしれない。体を売ってお金を稼ぐため、ではない。興味本位から、でもない。では、何なのか。わからないまま、そうする。「若くて、きれいで、」(これが映画の原題)何不自由はないはずなのに、こんな危険なことに身を委ねる。やがて、心臓発作で死んだ老人を放置したことから、すべてが知られる。

この映画を見ながら、わけのわからない衝動に突き動かされることが、若さの特権、だなんて思う人はいない。でも、そんなことでしか、納得できないようなものがここにはある。もちろん、そんなことで納得するわけではない。「ばかな、」と思う。自業自得、などという輩もいるだろう。(もちろん、そんな人をこの映画は相手にしていない。)

この映画は人を不安にさせる。この世の中には不可解なことがたくさんある。そのことを知る、(そんな事実があるということを知る)それだけでも、重要な意味がある。終盤の彼女の客で行為中に死んだ老人の妻(シャーロット・ランプリング)と会うシーンの孕む緊張が凄い。

リンクレイダー監督の一見コメディか、と思わせる『バーニー』(ジャック・ブラックが出ているだけで、みんなそう思う)もそうだ。わけがわからない。だが、そこにある事実に衝撃を受ける。凄い映画はたくさんある。


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