原作は先にすでに映画化された「神童」「マエストロ!」のさそうあきらによる同名音楽マンガ。それを同じように「音楽もの」である『バジーノイズ』で好演した井之脇海の主演で映画化した2021年作品。松本穂香も出ているから見ることにした。京都が舞台で、芸大生たちのドラマというのにも興味を引かれた。今時「学園もの」は高校生がほとんどだから大学生が主人公というのは珍しい。
監督は『時をかける少女』(2010年版)の谷口正晃だし。昔何度か芝居を見たことのある劇団「とっても便利」の大野裕之が脚本を担当した。
しかしわずかな期待は見事に裏切られた。これはあまりにつまらない家族の諍いでしかない。亡くなった有名な指揮者、音楽家だったの父の後を継ぐ兄と愛人の子の弟の確執なんて見たくない。もっと純粋な学園ドラマでいいじゃないか、と思う。こんな安直で嘘くさい話ではせっかくの松本穂香がもったいない。彼女の歌声をこんなにフィーチャーするのなら、普通に彼女と井の脇海の恋愛ものでもよかった。原作が音楽家の話でもあくまでも大学生の話で、彼らの青春群像劇で充分。だいたい美術科に入ったにもかかわらず、絵の話は一切ないって、なんかおかしい。いいかげんな設定だと思ってしまう。盗作疑惑もつまらないし。谷口監督だけど、これはいただけない映画だった。