昔懐かしのジュニア小説の作品世界を、今に再現したようなお話で、この幼くも純粋な世界にどっぷり浸かって、彼ら2人に寄り添うようにして、この芝居を見れたなら幸せなのではないか。
あうん堂の杉山晴佳さんは、今回は職人に徹し作家としての顔は一切見せず黒子になりきりこの芝居を作る。とても賢明な判断である。原作のイメージを損なわないことをまず大切にして、丁寧にそれを舞台として置き直していく。演劇としての冒険はここにはなく、原作の<演劇としての再現>に終始する。
まるでラジオドラマのようにナレーションを多用して、ストーリーとして芝居が流れていくようにする。だから、演劇としては見るべきものはない。
しかし、丁寧に若い2人の960キロに及ぶ旅のドラマを見せていき、ロードムービーのスタイルで2人の生きることに対するひたむきな気持ちを伝えようとしていることには、好感が持てる。それが演出のねらいであり、主人公を演じる大竹野春生とめんやちさとが一生懸命に演じており気持ちがいい。
彼女と出会ってから15日間の物語ということだが、その間の時間の経緯が今一歩よくわからないのは気になる。2人の出逢いから逃避行までの意識の流れがあまり上手く描けてないのも気になる。2人の日常を描いた導入部があまりに平板で、彼の気持ちに乗り切れないから芝居に感情移入がしにくいのだ。
さらに、ホスピスを脱出して車で淡路島までの移動も、セリフを通してしか分からない。ラストで海に入っていく(自殺する)部分も気持ちとしては分からないでもないが、すべてが綺麗ごとの域を出ない。もちろん、作り手はそんなこと、よく分かった上で作っているのだからしかたないが。
要するに、絵空事のラブストーリーを全て承知の上で見続ける気がなかったならこの芝居にはついていけない、ということだ。
あうん堂の杉山晴佳さんは、今回は職人に徹し作家としての顔は一切見せず黒子になりきりこの芝居を作る。とても賢明な判断である。原作のイメージを損なわないことをまず大切にして、丁寧にそれを舞台として置き直していく。演劇としての冒険はここにはなく、原作の<演劇としての再現>に終始する。
まるでラジオドラマのようにナレーションを多用して、ストーリーとして芝居が流れていくようにする。だから、演劇としては見るべきものはない。
しかし、丁寧に若い2人の960キロに及ぶ旅のドラマを見せていき、ロードムービーのスタイルで2人の生きることに対するひたむきな気持ちを伝えようとしていることには、好感が持てる。それが演出のねらいであり、主人公を演じる大竹野春生とめんやちさとが一生懸命に演じており気持ちがいい。
彼女と出会ってから15日間の物語ということだが、その間の時間の経緯が今一歩よくわからないのは気になる。2人の出逢いから逃避行までの意識の流れがあまり上手く描けてないのも気になる。2人の日常を描いた導入部があまりに平板で、彼の気持ちに乗り切れないから芝居に感情移入がしにくいのだ。
さらに、ホスピスを脱出して車で淡路島までの移動も、セリフを通してしか分からない。ラストで海に入っていく(自殺する)部分も気持ちとしては分からないでもないが、すべてが綺麗ごとの域を出ない。もちろん、作り手はそんなこと、よく分かった上で作っているのだからしかたないが。
要するに、絵空事のラブストーリーを全て承知の上で見続ける気がなかったならこの芝居にはついていけない、ということだ。