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映画・演劇のレビュー

『グッド・シェパード』

2008-08-18 23:39:39 | 映画
 2時間48分の大長編である。61年のキューバ危機から始まり、そこからCIAの歴史を遡り描いていく。マット・デイモン演じる主人公が、どうしてCIAの仕事をするようになったのかが描かれていく。映画は、彼の人生を追っていきながら、それがCIAの歴史であり、その過程を、彼の家族との関わりを通して淡々と描いてみせる。

 時間を前後させながら、今の状況とこれまでの日々が交錯していく中、アメリカがなぜ、こんな内偵機関を作ったのか、また、それによって何が起きたのか、それをたった一人の男の目を通して綴る。ここまで淡々とエピソードを見せていくのは普通ではない。ハリウッド映画にあるまじき映画だ。ヒットさせることなんか、あまり考えていない。なのに独りよがりにはならない。眠くなるくらいに静かなタッチで、これだけの長尺を、わざと地味に見せていくなんて、なかなか出来ることではない。ロバート・デ・ニーロ監督、入魂の一作。

 マット・デイモンは表面的には、ただ無表情に仕事をこなしていく。その姿は、映画自体のルックスと見事に一体感を為す。彼と、対極にあるのが、彼の一人息子で、この少年(成長して大人にまでなる)が感情的で、その対比がおもしろい。彼がこの映画に風穴を開けてくれる。でも、映画のラストで、彼にはとんでもない不幸が待ち受けている。

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