夏の終わりに見るべき芝居だ。今回で僕が見るのは、3度目になるけど、何度見ても飽きささない。よろずやは再演が多い劇団だが、それだけその作品に自信を持っているという事だ。そして、大事にしている。マンネリになるのではなく、その都度新鮮な芝居を提示してくれるから、何度も見たくなる。代表作『オーマイリョーマ』は公演のたびに改稿もしているが、この作品はどうだろうか。細部の手直しはあるのかもしれないけど、そこは気にならない。基本的には同じ。同じでいいし、同じがいい。キャストはその時の事情でどんどん変わる。それも悪くない。それでいい。
お盆の里帰りする家族のスケッチだ。なんでもない、どこにでもある風景が丁寧に描かれていく。なんだか、懐かしい。もうそんな習慣は僕にはない。両親が徳島の実家から大阪に出てきて、そこで暮らし、ひとりは死んで、もうひとりは老いていく。徳島に祖父母がいた頃は毎年夏には帰っていた。まぁ、そんな習慣も小学生の終わりとともに自然消滅した。だからもう僕は田舎には帰れない。だが、この芝居の三姉妹は、両親が亡くなってもここに帰ってくる。次女の夫婦が実家を継いだからだ。うらやましい。そんなこんなのどうでもいい個人的なお話をここに書く必要はない。
今回の芝居もまた、安心してみることができる秀作に仕上がっていたのが嬉しい。というか、寺田さんの演出にはブレがないから最初から面白い作品であることはわかりきっている。里帰りする気分で見ることができる。とても暖かい気分にさせられる。芝居を見ながら、こんなにもほっとしている。彼女たちと一緒に広島の田舎に盆がえりした、これはそんな芝居なのだ。