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『ハイライフ』と同時にもう1本レンタルしてきたのがこの映画だ。この2本に共通するのは、世界から誰もいなくなるという部分。さらにはほとんど説明がないこと。しかもこちらは最後まで何が起きたのかを描かない。いや、起きたことはわかる。でも、その理由がわからないまま、終わる。たまたま(きのうのことだ。)この2本を手にした。たまたまである2本にいろんな共通項があったのが面白い。さらにはコロナの影響下で人気のない世界で暮らす自分たちの置かれる状況ともリンクする。
『ハイライフ』もこの映画くらい説明にあたる部分を徹底的に描かなければもっと面白くなったかもしれない。冒頭の30分くらいの赤ん坊と男だけの部分の緊張感がその後のこれまでの出来事を描く部分で損なわれてしまう。この映画は最後まで回想シーンがない。目に前にある時間だけが描かれていく。
世界からすべての人間が死滅した。主人公の男(ピーター・ディンクレイジ)ただひとりだけが残された。偶然寝ていて目覚めると、みんな死んでいたようだ。そして、数年が過ぎたみたいだ。主人公が小人という設定も興味深い。そこに特別な意味は与えないのもいい。そんな彼の日々のスケッチが淡々と描かれていく。彼一人の時間は30分以上ある。ここまでは今回の2本に共通する部分だ。
ある日、ひとりの女の子(エル・ファニング)がやってくる。なんと登場人物はほぼこのふたりだけ。(終盤あと2人登場するけど)過去は彼女との会話や、彼の行動を通して少しだけ明らかになるが、回想シーンはない。目新しいドラマはない。何もないまま、お話は綴られる。だから、少し退屈する。(そういうところも『ハイライフ』の前半と同じだ。)でも、その無口で淡々とした描写の連鎖がこの映画の魅力になる。ある日、突然お話が動き出すのだが、それが映画全体を損なわないのがいい。新しい展開を男が受け入れて、それでも、彼が(と、同時に映画自体も)変わらないのがいい。こんなにも刺激のない映画では楽しめないと思う人もいるはずだ。『ハイライフ』がアート映画で、フランス映画なのに、あんな展開を取ったのに、こちらはアメリカ映画であるにも関わらず、お話主導には陥らないのは立派だ。どちらも娯楽映画だとは言い切れない作品だけど、これのほうが志は高い。監督はリード・モラーノ。この人の映画は初めてだ。
最初から最後まで、静けさに包まれたまま、映画は幕を閉じていく。事件はある(たったひとつだけど)にもかかわらず、である。映画を見終えたとき、彼女と同じように、たった1匹いたあの犬の行方が気になるのも、素敵だ。