昨年公開された映画だが、とても見たかった1作だ。レンタルされていたので、ようやく見た。この手のSF映画を『パリ、18区、夜。』『ネネットとボニ』のクレール・ドニが手掛けるというのが最大の興味の焦点だ。死刑囚や終身犯を宇宙に放り出して、そこで死ぬまで過ごさせる、なんていうお話も別にどうでもいい。そんなことよし、彼女がこの設定の中で何を見せてくれるのか、それが気になったのだ。
とても静かな映画で、そこは期待通りだ。だけど、その先がない。見棄てられた宇宙船の中で、たったひとりで赤ん坊を育てる男(ロバート・パティンソン)を主人公にして、その生活が淡々と描かれる。そこまではいい。だけど、その後の説明にあたる、それまでの経緯を描いた部分がなんだかつまらない。ジュリット・ビノシュのマッド・サイエンティストのお話が実は中心を成すなんて、なんだかなぁ、と思う。安物のSFじゃあるまいし。
だいたい宇宙空間で生まれた赤ちゃんが成長して年頃になる、という終盤からが本題なのに、そこがほとんど描かれないまま、エンドを迎える。これでは肩すかしだ。父親と娘だけで生きる閉ざされた空間での物語が、何を象徴し、どこにたどり着くのか。ブラックホールに突入したらどうなるのか、なんて別にどうでもいいから、(しかもそれ自体も結論は描かれないし)たった二人で過ごした彼らの日々が何だったのか、そこがちゃんと伝わる映画にして欲しかった。これでは、なぜSFなのかも、よくわからないし。閉ざされた空間で、未来もない場所で、たったひとりで生きること。(最初は数人の仲間がいたけど、映画の大半は赤ん坊と二人だけだ。)それがどれだけ過酷で、それがどういう結果を招くのか。描くべきことはきっとそこに尽きるはずだった。なのに、、、、。
70代に突入した彼女が、あえてこんなジャンルに挑戦した理由がまるで見えてこない。これはよくあるアメリカの宇宙を舞台にしたSF映画では断じてないはずなのに、その差もまるで伝わらない。出来損ないでしかない。