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映画・演劇のレビュー

『イントゥ・ザ・ワイルド』

2009-05-11 21:49:19 | 映画
 ショーン・ペン入魂の一作である。2時間半に及ぶ超大作だ。大学を卒業仕立ての若者がアメリカを旅する。そしてアラスカを目指す。両親に反発し、就職するでもなく、自分の生き方を模索する。旅を通して何かを発見する。

 正直言ってこの男の甘っちょろい考え方には辟易させられるが、まだ子供だし、傲慢で身勝手なのは若さの特権だし、と、とりあえず思うことにして、何も考えずにこの子の旅を目で追うことにする。雄大な自然の中、まずその風景に圧倒される。これは大スクリーンで見るべき映画だった。なのに、これをTVサイズで見ている。実に勿体無い。

 アラスカでの放置された不思議なバスの中で生活する最後の日々を描くシーンを基点にして、そこから遡って回想されていく。この構成にはなんの問題もないのだが、気になったのは、彼はあのバスでの生活の中でどこに到達したのか、ということだ。偶然に死んでしまっただけなのか、それともあそこに行き着いたことで彼の中で何かが変わったのか。偶然でしかないことは承知の上で、でもそこに何かを感じさせるのが映画ではないか、と思うのだが。

 様々な場所で、様々な体験をしていく姿を描くロード・ムービーなのだが、この青年を距離を置いて見つめ、共感も批判もしない、という姿勢はいいと思う。だが、監督であるショーン・ペンはこの映画で何を描きたかったのだろうか。それが見えてこないからなんだかもどかしい。毒草を食べて無駄死にするという愚かさの中からは何も見えてこない。

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