いつまでこれを読んでいるのか、と思うが、仕方ない。まだ読んでいる。ようやく老いに辿り着く。最後のエピソードは2001年の4月、朝日新聞に書いた『風穴をあける』という文章。その時、彼は70歳。詩について書いた文である。これを最後に持ってきたのは作為的な選択だろう。
僕はこれを読んでいる間に、他の本は5冊読み終えている。基本通勤用にして読んだからこれだけの時間かかった。20代から70までの50年間に書いたエッセイを時系列に並べてある。92歳の今の心境を述べたエッセイも欲しいけど、田原さんが選んだ45編のアンソロジーは心に沁みる。大好きな谷川俊太郎への愛が詰まった随筆集になった。
白眉はタイトルにした『からだに従う』であろう。最初と最後、2度読み直した。老いに抗わない。可能な限り楽しみたい、ということばが心に沁みた。自分のうちから湧き出てくる生きる歓びを大切にしたい、と言う。
「私はうんこ、しっこが生きることの究極の現実だと思っている」という最後の一文が素晴らしい。