ムーティ/ミラノスカラ座「再建50周年特別コンサート」


 さすが熱血漢リッカルド・ムーティです。やってくれます。第2次世界大戦で爆撃を受けて使用不能となり1946年に再建されたミラノスカラ座の再建50周年の記念コンサートの映像です。1996年5月18日に行われ、50年前にトスカニーニが指揮した再建杮落とし公演のプログラムと同じなんだそうです。
 熱いです。クールな現代人の我々にはこのような熱い男が必要です。疲れを知らないのでしょうか。

 昨日の仕事帰りに久しぶりに渋谷の音楽ショップへ寄りました。探していたディスクは見つからなかったのですが、気になる新譜が数枚ありました。
 まず、ラトル/ベルリンフィルのドビュッシーアルバム、牧神や海などです。牧神の冒頭はパユのうっとりするようなフルート独奏で始まりますと手書きの推薦メモにあるとこれは聞き逃せないぞと思うのですが、ベルリンフィルのゴージャスな音だけの演奏には最近要注意なのでまずは様子見です。ラトルは好きで、ベルリンフィル就任後の演奏もいくつか聴きました。高水準でよいと思うのですがまだ指揮者よりもオーケストラの方が雄弁でどうしても聴きたいという演奏にはなっていません。
 もう一枚、パッパーノ指揮/コヴェントガーデンによるトリスタンとイゾルデ、トリスタンはドミンゴです。ドミンゴのワーグナーはローエングリン、ワルキューレでも素晴らしかったのでトリスタンも聴いてみたいなあと思いました。パッパーノはプッチーニなどイタリアものはとてもよく安定しています。一方で、海賊盤で聞いた2001年のバイロイト音楽祭のローエングリンは伝統的な演奏とは異なる明るくて軽いイタリア風のワーグナーでした。オペラを得意としているのでおそらく悪くはないのだと思います。ただ、名盤揃いのトリスタンの中で輸入盤で7千円弱払うのはどうかなあと迷った結果止めておきました(いつか買うとは思うのですが…)。
 購入するディスクはないなあと思っていたところ、タワーレコードの映像コーナーに山積みされていたのがこのミラノスカラ座の記念コンサートの映像です。
 先日のプログで最近ムーティのディスクが少なくて寂しいと書いたばかりだったので飛びつきました。

 ヴェルディを中心にロッシーニ、ボーイトからの選曲です。50年前と同じプログラムとはいえムーティの得意曲ばかりです。「ウィリアム・テル序曲」、「ナブッコ序曲」、「行け、わが思いよ、金色の翼に乗って」、「シチリア島の夕べの祈り序曲」などなど。有名ピースに合唱曲やフレーニ、レイミーのアリアも織り交ぜたプログラムとなっています。

 正直言って、私はそれぞれのオペラの既出のライブ映像の演奏のほうがよりムーティらしさが力強く出ていて好きです。ただ、50周年という節目の一発勝負の記念コンサートだけあって弛緩するところがない高水準の演奏です。ムーティよりも旨くヴェルディを演奏できる指揮者は現在いません。トップクラスのスカラ座のオーケストラ・合唱団も映像で見る限り音楽学校の生徒のように言われたとおり淡々とやってますという感じなのですが、ここでしか聞けないヴェルディ、イタリアものの絶妙の音楽を聞かせてくれます。これが最近映像慣れしてきたベルリンフィル、ウィーンフィルとは違うところです。見た目素人っぽいですが地元はさすがに違います。

 有名曲集、有名歌手も3~4人出演するという映像は結構ありますが、それとは一線を画する緊迫感ある演奏です。円熟味の増したスケールの大きい演奏ともいえます。
 若手の発掘がうまいムーティにしては当時既に旬ではなくなっているフレーニを起用しているのはどうかなというのと、映像が高画像ではないのでその点はマイナスですが、イタリアオペラ好きの方、ムーティ好きの方であれば絶対に楽しめる映像だと思います。

(明日から夏休みに入り帰省します。暑中お見舞い申し上げます。)


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