レコード芸術9月号

 暇潰しも兼ねて普段立ち読みだけで買うことはないクラシック音楽専門誌を買ってみました。新幹線でじっくり読みましたが、面白いですね。すごく充実しています。ただ、残念なことに肝心の対象物に目新しい新譜が少ないので準A級~B級盤にそこまで労力を割かなくてもよいのではという感想を持ちましたが、そこはプロの評論家、執筆者なので突っ込まなくてもよいのでしょう。

 驚いた記事、興味深い記事、これは楽しみと思えた新譜情報などがいつくかありました(詳細は雑誌をお買い上げのうえご覧下さい)。

・ムーティは今年4月にミラノスカラ座の音楽監督を辞任していたんですね。知りませんでした。新シーズンのプログラムが紹介されていて多様な指揮者、演目となっていましたが、スカラ座の無形世界遺産であるヴェルディ演奏をどう引き継いでいくのでしょうか。パッとしないシャイーだけではどうにもならないと思います。ダニエレ・ガッティ?パッパーノ?誰かいるんでしょうか。

・2006年6月にメトロポリタン歌劇場が来日するそうです。椿姫、ワルキューレ(ドミンゴ)、ドン・ジョバンニだそうです。溜息が出ます。観たいですがチケット入手困難です。もし可能性があるとすれば、先行予約する3演目購入券でしょうね。18万円とか20万円なんだろうと思います。サラリーマンには無理です。

・ベルリンフィルの首席オーボエ奏者のアルブレヒト・マイヤーのインタビューが載っていました。ベルリンフィルのオーボエといえば私の世代はシュレンベルガーですが、マイヤーもとてもいいです。シューマン小品集が大好きです。オケとラトルの関係は良好で、英語で話してもらってもオケは理解できるが、現在、ラトルは覚えたドイツ語でコミュニケーションしているんだそうです。これからの演奏に期待です。

・新譜の中では、アーノンクール/ウィーンフィルの「ヴェルディ レクイエム」に注目です。同じ組み合わせの「アイーダ」は従来の演奏とは一線を画するものでとても斬新なものでした。アーノンクールが奇才であるのは分かっていますが、バロック音楽、ブルックナーなどはどうしても新譜を追いたいほどではありません。ただ、ヴェルディは注目です。CDでの発売のようですが、暫くしたらDVDが出るんじゃないの?と疑惑の発売ではあります。3~4ヵ月待って、映像が 発売されなければCDを購入しようと思います。

・特集の録音史100年における「エポックメイキング・ディスク50~新時代を拓いた音盤たち」です。この手の評価で共感できないのは、マリア・カラスとポリーニです。評判なのでディスクは結構持っているのですが感覚的に受け付けないので最後までディスクを聴けません(ポリーニのモーツァルト、ドビュシーを除く)。一方で、一度聴いて感動した後、再聴していないディスクがとても多いことに気付きました。これからゆっくりと楽しみたいと思います。

・この雑誌とは別のニュースですが、日本人として初めてバイロイト音楽祭の指揮台に立った大植英次さんは、来年の指揮の予定がキャンセルになったそうですね。「難解な演出であなたの音楽が十分出せるよう作り直すには時間がいる。また戻ってきてと総監督に言われた。いい経験になった」(大植氏)とのことです。先日のNHKのテレビでもオケと歌唱の音のバランスが悪かったとかで現地の新聞の評価もよくなかったと紹介されていたのでちょっと心配していました。日本人によるワーグナー演奏が始めて檜舞台にのぼっただけでも画期的なことです。大植氏は必ず再起してくれるものと信じています。


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プリテンダーズ「ラーニング・トゥ・クロール」


 8月26日に女の子の赤ん坊が生まれました。初めて見た時は我が子とピンときませんでしたが暫くするともう可愛くて仕方のない存在です。3250gと標準サイズですが、なんて小さくて軽くて周りの加護を必要とするか弱い生き物なんだろうというのが実感です。
 独身時代が長いと一人で生活することに慣れてしまい、3人で生活するなんてとても不思議な感じがします。3人での生活の始まりはまだ1~2ヵ月先のことでまだ実感はありませんが今から楽しみです。

 大好きなプリテンダーズの第3作「ラーニング・トゥ・クロール」です。1979年に数々のヒットを飛ばし華麗にデビューを飾ったプリテンダーズですが、その後、ベーシストをドラッグ中毒で解雇、ギタリストがヘロインの大量使用で死亡するという崩壊状態になりました。当時盛んだったチャリティライブの演奏でもとても聞けるような水準でなかったことを覚えています。
 もうダメになったんだなと思っていた1984年に登場したのが、復帰作であり最高傑作でもある「ラーニング・トゥ・クロール」です。リーダーのクリッシー・ハインドが子供を生んだ後、新メンバー2人を迎えた作品で、赤ん坊と再起を期すバンドとが這い這いを覚えるという意味なんでしょうか。
 収録されている「バック・オン・ザ・チェイン・ギャング」、「ミドル・オブ・ザ・ロード」、「ショウ・ミー」などのヒット曲のかっこよさには夢中になりました。叙情的な要素も含まれたミディアム・ロックとでも言えばよいのでしょうか。ロックファンから熱狂的に支持されて、著名ミュージシャンからも尊敬されるクリッシー・ハインドの音楽が確立された作品だと思います。

 「ショウ・ミー」の中の次の一節が好きです。


 Welcome to the human race
 With its wars, disease and brutality
 You with your innocence and grace

 ようこそ人間界へ
 この世界には戦争も病気も残虐行為もある
 でも無邪気で気品のあるあなた

 Welcome to a special place
 and a heart of stone thats cold and gray
 You with your angel face

 ようこそ特別な場所へ
 人の心は石のように冷たくて灰色
 でも天使のような顔をしたあなた

 Welcome here from outer space
 The Milky Way Still in your eyes

 ようこそ 宇宙からこの地へ
 瞳にはまだ銀河がきらめいている


 2004年2月の17年ぶりの来日公演を幸運にも観ることができました。渋谷公会堂に集った中年ロックオヤジの前でクリッシー・ハインド姐御は、相変わらずの粋なロックを聞かせてくれました。かっこよかったです。痺れました。オリジナルメンバーであるドラムのマーティン・チェンバースが復帰して姿を見せてくれたのもうれしかったです。
 赤ん坊にはクリッシー・ハインドほどの激動の人生は希望しませんが力強く生きて欲しいものです。




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