シノーポリ指揮/ウィーンフィル「シューマン交響曲第2番」


 クラシック音楽を好きになったきっかけは、大学3年生の時に深夜のラジオ放送でベートーヴェンの悲愴ソナタを聴いたことが始まりだったと思います。心に染み入る音楽で衝撃的でした。翌日、音楽店のクラシックコーナーに初めて立ち入り、アシュケナージのベートーヴェンのピアノソナタが3曲入ったLPレコードを買ったのを覚えています。

 それから十数年、モーツァルト、ブラームス、マーラー、バッハとクラシック音楽の森を分け入って進んでいき、最終的にはオペラ、ワーグナー、ブルックナーなども好んで聴くようになりました。一体何枚クラシック音楽のCDを持っているのかもう数えるのを諦めましたが2千枚は超えていると思います。私の宝物です。

 もうほとんどの有名曲は聴いてきたつもりですが、それでもつい最近まで本当の良さが分からなかった、CDの枚数は多いけど愛聴はしていなかった作曲家が何人かいます。シューマンとR・シュトラウスとシベリウスです。

 R・シュトラウスとシベリウスはまた改めて取り上げるとして、シューマンです。いつシューマンの音楽に開眼したのか記憶が定かではないのですが、おそらくエッシェンバッハと北ドイツ放送交響楽団の演奏を聴いたときに、シューマンってこんな音楽だったっけと衝撃を感じた時ではないかと思います。何故このディスクを購入したかというと、失礼ながら繊細なタッチの音楽はいいけどそれ以上ではないピアニストだと思っていたエッシェンバッハが指揮者になって、バイロイト音楽祭でワーグナーを振るという記事を読んだからだと思います。あまりにもイメージとかけ離れていてピンとこなかったので評判のいいディスクを聴いてみようと手に取ったのだと思います。

 エッシェンバッハのディスクに触発されて、それまで好きではなかったけど何だかんだで結構持っていたシューマンのディスクを聴き直してみました。それまでそんなに好きではなかったけど突如気に入ったCDを5枚~10枚も聴けるのは至福の喜びです。サバリッシュ、アーノンクール、ティーレマンどれも素晴らしく感動しました。

 特にいい曲だなあと感じ入ったのが交響曲第2番です。その中でも世評も高いバーンスタイン盤、シノーポリ盤にはシビれました。
 構造は弱いけど美しく病的な音楽。繊細、諦観、憧れ、初々しさ。特に弦と木管の絡みが素晴らしいです。
 こういった複雑な楽想を絶妙に再現するためにはレベルの高いオーケストラによる演奏、クリアな録音でないと伝わらないと思います。ブランド好きの作曲家といえるのでしょうか。普段は録音状態があまり気にならないクーベリック、セルの評判のディスクもあまりいいとは思えません。

 今回、改めてバーンスタイン盤、シノーポリ盤、エッシェンバッハ盤を聴き比べてみました。驚異的なオーケストラの演奏で恐らくお勧めになるだろうと想像していたシノーポリ盤がやはり一番良かったです。第3楽章などはバーンスタインの独壇場かと思える音楽ですが、シノーポリの方がいいです。ウィーンフィルの演奏歴に残る名演だと思います。その他の楽章も激しく情熱的に演奏していても音が濁らないのはさすがです。モーツァルトでないのに聴いて生きている喜びを感じるなんて滅多にないことです。

 シューマンの見方を変えるきっかけとなったエッシェンバッハ盤も本当によかったです。絶好調時のウィーンフィルに匹敵する演奏というのはそうそう出来るものではありません。
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