Deux jeunes filles ou La Belle Rosine
19世紀中ごろに活躍した、ベルギーの画家アントワーヌ・ヴィールツ。
ルーベンスを思わせる躍動的な巨大絵画を描く一方、この「麗しのロジーヌ」のような寓意的幻想画もある。
同時代のイギリスにはラファエロ前派があるけれど、ヴィールツはいささか趣を異にする。
彼の活躍後30年ほどして、ベルギーはもとよりフランスなどにおいて起こった象徴主義に近いだろう。
それは、ヴィールツの絵のほの暗い雰囲気、扱うテーマの違いによるのだろう。
かつてヴィールツがアトリエ兼住居としていた建物が、今は彼の美術館として残る。
閑静な住宅街の路地の奥にひっそりと、確か明るいグレーの色で塗られた入り口があったように思う。
来館者もまばらな明るく広い室内に巨大な絵が飾られて、時間が停止したかのようない空間をつくる。
確か、ここから程遠くないところに自然史博物館があって、さまざまな鉱物の陳列にときめき、ミュージアムショップに手ごろな石が売られていたので数点買い求めたのであった。
これらの記憶とあいまって、ヴィールツの絵が私の思い出の中に深く刻み込まれ、きらきらと初夏の光と輝く緑を宿した明るいグレーの蛍石の姿をなしている。
結晶となったそれらの印象は、もはや朽ちることは無い。
私の心の中で、永久に光を放ち続けていくのだ。
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