秘録エロイムエッサイム・12
(促成魔女初級講座・実戦編・2)
まき散らした紙屑は、真由の周りに一杯になって旋回し、広がったかと思うと、数百人の真由になった。
「あたしがいっぱい!」
びっくりしたのは、国際通りのお土産ビルの最上階のフロアーだった。ちょっとしたレストラン街になっているフロアーで、様々な食材の匂いが立ち込めていた。現実の国際通りと、そこにあるお土産ビルと少しも変わらないんだけど、ビルの中には真由と清明しかいなかった。
表通りでは、無数の色の薄い者たちと、真由そっくりな式神たちが、睨み合っていた。
「やつらは、本体の真由を探しているんだ。見つかる前にバトルを始めなさい」
「あ、はい」
真由は、無意識にバトルを始めた。瞬間コントローラーの〇ボタンが頭に浮かんだ。
「安心して戦いなさい。Z指定の様式にはなっていないから、相手をやっつけても血が流れたり、手足が吹き飛んだりはしない」
真由は、少し安心した。ゲームでも『バイオハザード』みたいなものは苦手だ『ファイナルファンタジー』のような、血しぶきが出ない、やりこみ系のRPGが得意だ。
式神たちは、数は少ないがHPの値が高く、敵の攻撃を受けても容易には倒されなかった。また式神同士の連携がよく、一人の式神が敵に取り囲まれると、どこからか仲間の式神が集まり、敵を倒していく。
中には、仲間の支援が間に合わずに苦戦する式神もいた。つい助けてやりたくなる。
「助けちゃ、この場所が分かってしまう。じっと辛抱して見ているんだ」
敵の式神は、真由の式神のツーアタックぐらいで消えてしまうが、真由の式神はガードが高かった。一撃をくらうと、着ている服が一枚ずつ無くなっていく。どうやら、服がガードになっているようである。
中には、仲間との連携が悪く、裸同然になっている式神もいる。
「あの裸になっていくの何とかならないんですか?」
「あれは、君の頭の中で作った、最高のガード方法だからね。ボクには手の出しようがない」
と言いながら、清明はなんとなくニヤニヤしているようにも見えた。
十分ほどのバトルで、敵のザコの式神はほとんどいなくなった。
「これ、チュートリアルですか。なんだかあっけなく済んでしまいそうなんですけど?」
「いや、実戦だよ。そろそろボスが……」
清明が呟いたとき、真由の式神たちは全員素っ裸になったかと思うと、あっさり消えてしまった!
なんと、数少なくなった敵の真ん中で、光り輝いている小学生低学年程の少女がこちらの窓を見上げていた。
「あれがボスだ。外に出るよ!」
テレポのようにして路上に出ると、今までいたお土産ビルが、一瞬でカオスに飲み込まれたようにグニャッとなって消えてしまった。
「あなたね、私たちの新しい敵は?」
小学生の少女の姿ではあるが、言葉には凄味があった。
不意に魔法攻撃が頭に浮かんだ。観察を頭に思い浮かべると、敵のHPとMPが分かった。真由自身の倍はある。
いきなり火属性の魔法攻撃をくらった。防御が間に合わず、真由は下着姿になってしまった。
「フフ、ザコと同じように服で防御しているだけのようね。じゃ、素っ裸にしたうえでトドメをさしてあげるわ」
真由は反射的に魔法防御をかけた。だが、敵は、まさかの風属性の魔法をかけてきて、下着の上が吹き飛ばされてしまった。
「ハハ、あんたってバスト貧弱なんだね」
小学生の姿で言われるので、恥ずかしいより腹が立つ。
再生魔法をかけると、服は元通りになった。
「バカね、見場に気を取られて。今の再生魔法で、あなたのMPゼロになってしまったわよ。下手な羞恥心が命とりになるの覚えておきなさい!」
敵のガキは、連続攻撃を加えてきた。真由は反射的にガードしていったが、そのたびに着ているものがなくなり、あっという間に、元のパンツ一丁になってしまった。
「トドメ!!」
閃光が走り、真由は自分の浅はかさを思い知らされた……その瞬間、敵のガキが倒れていた。
「仲間がいたのね。ぜんぜん気配を感じなかったけど、あんたの周囲に二つエネルギーを感じる……」
そう呟きながら、ガキの姿はフェードアウトするように消えてしまった。
静かになった国際通りには、清明とシーサー姿のハチが居るだけだった……。
(促成魔女初級講座・実戦編・2)
まき散らした紙屑は、真由の周りに一杯になって旋回し、広がったかと思うと、数百人の真由になった。
「あたしがいっぱい!」
びっくりしたのは、国際通りのお土産ビルの最上階のフロアーだった。ちょっとしたレストラン街になっているフロアーで、様々な食材の匂いが立ち込めていた。現実の国際通りと、そこにあるお土産ビルと少しも変わらないんだけど、ビルの中には真由と清明しかいなかった。
表通りでは、無数の色の薄い者たちと、真由そっくりな式神たちが、睨み合っていた。
「やつらは、本体の真由を探しているんだ。見つかる前にバトルを始めなさい」
「あ、はい」
真由は、無意識にバトルを始めた。瞬間コントローラーの〇ボタンが頭に浮かんだ。
「安心して戦いなさい。Z指定の様式にはなっていないから、相手をやっつけても血が流れたり、手足が吹き飛んだりはしない」
真由は、少し安心した。ゲームでも『バイオハザード』みたいなものは苦手だ『ファイナルファンタジー』のような、血しぶきが出ない、やりこみ系のRPGが得意だ。
式神たちは、数は少ないがHPの値が高く、敵の攻撃を受けても容易には倒されなかった。また式神同士の連携がよく、一人の式神が敵に取り囲まれると、どこからか仲間の式神が集まり、敵を倒していく。
中には、仲間の支援が間に合わずに苦戦する式神もいた。つい助けてやりたくなる。
「助けちゃ、この場所が分かってしまう。じっと辛抱して見ているんだ」
敵の式神は、真由の式神のツーアタックぐらいで消えてしまうが、真由の式神はガードが高かった。一撃をくらうと、着ている服が一枚ずつ無くなっていく。どうやら、服がガードになっているようである。
中には、仲間との連携が悪く、裸同然になっている式神もいる。
「あの裸になっていくの何とかならないんですか?」
「あれは、君の頭の中で作った、最高のガード方法だからね。ボクには手の出しようがない」
と言いながら、清明はなんとなくニヤニヤしているようにも見えた。
十分ほどのバトルで、敵のザコの式神はほとんどいなくなった。
「これ、チュートリアルですか。なんだかあっけなく済んでしまいそうなんですけど?」
「いや、実戦だよ。そろそろボスが……」
清明が呟いたとき、真由の式神たちは全員素っ裸になったかと思うと、あっさり消えてしまった!
なんと、数少なくなった敵の真ん中で、光り輝いている小学生低学年程の少女がこちらの窓を見上げていた。
「あれがボスだ。外に出るよ!」
テレポのようにして路上に出ると、今までいたお土産ビルが、一瞬でカオスに飲み込まれたようにグニャッとなって消えてしまった。
「あなたね、私たちの新しい敵は?」
小学生の少女の姿ではあるが、言葉には凄味があった。
不意に魔法攻撃が頭に浮かんだ。観察を頭に思い浮かべると、敵のHPとMPが分かった。真由自身の倍はある。
いきなり火属性の魔法攻撃をくらった。防御が間に合わず、真由は下着姿になってしまった。
「フフ、ザコと同じように服で防御しているだけのようね。じゃ、素っ裸にしたうえでトドメをさしてあげるわ」
真由は反射的に魔法防御をかけた。だが、敵は、まさかの風属性の魔法をかけてきて、下着の上が吹き飛ばされてしまった。
「ハハ、あんたってバスト貧弱なんだね」
小学生の姿で言われるので、恥ずかしいより腹が立つ。
再生魔法をかけると、服は元通りになった。
「バカね、見場に気を取られて。今の再生魔法で、あなたのMPゼロになってしまったわよ。下手な羞恥心が命とりになるの覚えておきなさい!」
敵のガキは、連続攻撃を加えてきた。真由は反射的にガードしていったが、そのたびに着ているものがなくなり、あっという間に、元のパンツ一丁になってしまった。
「トドメ!!」
閃光が走り、真由は自分の浅はかさを思い知らされた……その瞬間、敵のガキが倒れていた。
「仲間がいたのね。ぜんぜん気配を感じなかったけど、あんたの周囲に二つエネルギーを感じる……」
そう呟きながら、ガキの姿はフェードアウトするように消えてしまった。
静かになった国際通りには、清明とシーサー姿のハチが居るだけだった……。