タキさんの押しつけ書評
のぼうの城
この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは、友人の映画評論家の滝川浩一が個人的に仲間内に流している書評ですが、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです。
ハードカバー発売時、目には留まったんだけど手にはしなかった。
おそらくは同じように目に留まった “ど(「石弓」を現す字が出てこない)”がイマイチだったのが原因かと……来月映画公開されるのでまぁ読んどこかいと思って読み出したら、これがなんとも良い!
“のぼう”ってのはデクノボウの事、時は戦国の再末期 秀吉の北条攻めが舞台である。
北条方の一枝城「忍城(おしじょう)」守兵500人対秀吉方 石田三成・大谷吉継以下20,000人。この忍城守護のトップが“のぼう様”こと成田長親(なりたながちか)。
デカい身体をしているが武術・体術からっきし、城代の倅ながら 城下の村をうろつき百姓仕事を手伝いたがる。それがまともに出来るならまだしも、麦踏み程度の作業にも失敗する。 百姓にしてみれば有り難迷惑も良いところで 本人にメンと向かって「のぼう様は手を出さんで下され」と言い放つ。言われた長親、悲しそうではあるが一向に怒る気配なし。
さて、この話 れっきとした史実であり、成田側、石田側はたまた公式の戦記にもはっきり記載されている。江戸期の書物には 公方に逆らった者として、必要以上に石田三成を貶めた書き方がされているが、戦闘があった当時のリアルタイム資料が五万と残っている。 本作の面白さは、合戦のスペクタクルと、“のぼう様”が本当に馬鹿者なのか稀代の将器かトコトン最後まで解らないというこの二点。
時にハラハラ、時に爆笑(こっちの方が多い)しながら最後まで一気に読ませる。作中 長親が内心を吐露する部分は一切ない。その場に一緒にいる人間の評価が示されるだけで、読者にも全く判断が付かない形になっている。一読、隆慶一郎の何作かが浮かんだが…隆さんの作品にも この小田原攻めを扱った部分は多くあるのだが、また違った趣の小説である。
映画では この“のぼう様”を野村萬斎が演じる、さほどの巨漢ではない彼が いかなる“のぼう様”振りを見せるのか、今からムズムズしている。
他の配役も、なる程なあ~と思わせるのだが…ただ一点、石田三成が上地雄輔ってのが引っかかる。さて上地君、大化けして大向こうを唸らせる事が出来るか、彼にとってはキャリアの分かれ目になるとおもいます。本の内容にはあまり触れませんでしたが、面白いのは保証致します。是非とも御一読ありたい!
のぼうの城
この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ
これは、友人の映画評論家の滝川浩一が個人的に仲間内に流している書評ですが、もったいないので、本人の了解を得て転載したものです。
ハードカバー発売時、目には留まったんだけど手にはしなかった。
おそらくは同じように目に留まった “ど(「石弓」を現す字が出てこない)”がイマイチだったのが原因かと……来月映画公開されるのでまぁ読んどこかいと思って読み出したら、これがなんとも良い!
“のぼう”ってのはデクノボウの事、時は戦国の再末期 秀吉の北条攻めが舞台である。
北条方の一枝城「忍城(おしじょう)」守兵500人対秀吉方 石田三成・大谷吉継以下20,000人。この忍城守護のトップが“のぼう様”こと成田長親(なりたながちか)。
デカい身体をしているが武術・体術からっきし、城代の倅ながら 城下の村をうろつき百姓仕事を手伝いたがる。それがまともに出来るならまだしも、麦踏み程度の作業にも失敗する。 百姓にしてみれば有り難迷惑も良いところで 本人にメンと向かって「のぼう様は手を出さんで下され」と言い放つ。言われた長親、悲しそうではあるが一向に怒る気配なし。
さて、この話 れっきとした史実であり、成田側、石田側はたまた公式の戦記にもはっきり記載されている。江戸期の書物には 公方に逆らった者として、必要以上に石田三成を貶めた書き方がされているが、戦闘があった当時のリアルタイム資料が五万と残っている。 本作の面白さは、合戦のスペクタクルと、“のぼう様”が本当に馬鹿者なのか稀代の将器かトコトン最後まで解らないというこの二点。
時にハラハラ、時に爆笑(こっちの方が多い)しながら最後まで一気に読ませる。作中 長親が内心を吐露する部分は一切ない。その場に一緒にいる人間の評価が示されるだけで、読者にも全く判断が付かない形になっている。一読、隆慶一郎の何作かが浮かんだが…隆さんの作品にも この小田原攻めを扱った部分は多くあるのだが、また違った趣の小説である。
映画では この“のぼう様”を野村萬斎が演じる、さほどの巨漢ではない彼が いかなる“のぼう様”振りを見せるのか、今からムズムズしている。
他の配役も、なる程なあ~と思わせるのだが…ただ一点、石田三成が上地雄輔ってのが引っかかる。さて上地君、大化けして大向こうを唸らせる事が出来るか、彼にとってはキャリアの分かれ目になるとおもいます。本の内容にはあまり触れませんでしたが、面白いのは保証致します。是非とも御一読ありたい!