大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベルベスト〔エピソード・赤鼻のトナカイ・1〕

2016-12-09 18:12:32 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
〔エピソード・鼻のトナカイ・1〕
     


 サンタクロースがIT化してから久しくなった。

 大昔のサンタクロースは、何万人も居て、半年がかりでプレゼントを用意し、主にキリスト教国の中産階級以上の家を個別に回っていた。それが日本などクリスチャンでもないのにクリスマスプレゼントを贈る習慣が世界中に広まり、主にドアーフの隠居仕事であったサンタクロースの仕事も大変になった。

 それが前世紀の終わりごろからIT化が進んだ。

 コンピューターで、世界中の子供たちの希望と家庭の実態、そういうことをデータ化し、親や、それに準ずるボランティアの人たちに「その気」にさせる。
 スーパーコンピューターを導入してからは、いっそう楽になった。担当の若いサンタがバグのチェックやメンテナンスをするだけで仕事が済む。

 前世紀の終わりごろまでは、ごく一部のアナログサンタが、伝統通りのコスでトナカイに橇をひかせて個別に回って行った。煙突がなくても、家に入る時はミクロンの大きさにまで小さくなり、プレゼントを置いていくのだ。
 そういうサンタは、めっきり減った。もう世界に五人もいない。ちなみにサンタクロースには固有の名前は無い。シリアルナンバーで呼んでいる。

 これは、そういうアナログサンタ、シリアルナンバー00……1号の、ちょっとしたエピソードである。

「高倉健も菅原文太も逝っちまった……わしも今年を最後にしようか」
 暖炉の前でロッキングチェアーに揺られながら一号サンタは思った。一号サンタも時代に合わせてパソコンを使っている。若いサンタでは手に余る……実態はオールドサンタたちに生き甲斐を与えるために、若いサンタたちが、特別枠にした特別なところである。
 昨日パソコンを立ち上げて、そういう特別枠が入っているのではないかとメールをチェックした。
 なんと、迷惑メールの中に「サンタクロース一号さんへ」というのが入っていた。

「なんだ、バグか設定ミスかな……」

 そう呟きながら開いてみると、大手ネットショップ『ジャングル』からのクリスマスプレゼントの特別バーゲンのお知らせだった。
「世も末だな。本職サンタのところに、こんなメールが来るようじゃなあ……」
 どうやら、サンタ一号というのがハンドルネームと勘違いされ、シリアルナンバーをアドレスと間違われたようである。

 で、サンタは、今年をもって、最後にしようと決心した。

「そうだ、最後のクリスマスだ。橇はあいつに曳かせよう!」
 サンタは、そう思い浮かぶと、さっそく地味なオーバーを着て、何十年かぶりで、そいつの家に向かった。

 サンタは、テレポすると、そいつ……赤鼻のトナカイのバイト先に急いだ。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・118『るろうに剣心~京都大火編』

2016-12-09 06:35:11 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・118
『るろうに剣心~京都大火編』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


タケルンとエミチャンファンの皆様、お待たせ!必見であります。

 だから「るろ剣」ファンは、以下 読まないでええよ~~〓
 正確には完結編を見た上で最終評価します。取り敢えず今作の感想。
 長いよ~、2時間20分? マァジですかい、ほんで9月に続きがあります。 正直、原作を知らない者には辛い2時間強です。
 私、結局 アニメビデオを見ただけで原作未読。 そんな私でも、剣心/佐藤健、薫/武井 この二人がドンピッタリなのは判ります。

 今作志々雄役の藤原竜也が名演です。志々雄の狂気と悲しみ(今作に“悲しみ”は関係ないけど、次回完結編には出てくる…筈。原作読んでなくても、それくらいは知っている)が、目の表情から現れている。 やっぱ、巧い役者は余裕があります。逆にダメなのが、志々雄の部下の一人 沢下条と、家族を志々雄の一党に殺されたガキ。
 沢下条役、よう喋らんのなら「大阪弁」使わないで頂きたい。耳障りなだけ。 ガキ役、最近の子役は巧い子ばっかりなのに、この下手さ加減は一体何?
 ついでに言うと、エキストラを5000人使ったらしいが、ちゃんと演技指導してません。ほとんど衣装を着けてウロウロしているだけです。
 これを書くと、まぁた剃刀の刃が届きそうですが、原作の世界観が元々ムチャクチャ(漫画には説得力が在るんだと思いますが)なのに、それを実写映画としてリアルに見せる工夫が無い。
 瀬田役/神木隆之介も、現代の中学生が着物を着てチャラチャラしているようにしか見えない。神木隆之介は巧い役者なので、これは偏に監督の責任、それとも堤幸彦の作品に出過ぎて壊れたのかな? 大体が大嘘の明治初期が舞台。大嘘を本当に見せるには、舞台がグルッと回って虚構が真実に見えるまで大嘘を積み重ねる事。それが、何の説明の無いままに小嘘を並べてある。原作を知っていれば、総て「前提」なんだけど、原作を知らない身には小嘘が出る度に一々納得しなければ先に進めない。

 前作ではアクションがまるで「香港カンフー」だったが、今作は多少マシ。但し、これは原作の曖昧さなのか、映画監督(アクション監督)の無知なのかは判らないが、暗殺剣と技巧的剣術と戦場の剣の区別がついていない。剣心の剣法は明らかに多数を相手の戦場の剣、細かいようだが、これの区別がついていないとリアリティがすり抜けていく。
 同様に、薫が木刀で素振りしているシーン。ヨレヨレの振りだし、切っ先が震えている。芝居じゃあるまいし映画なんだから、いくらでも細工できるのに、なんでそのまんまなん? そういや剣心も、振り抜かずになぜているように見える所がある。アクション監督 何してた?
 とにかく、細かいお約束が多すぎて、そのまんま受け入れるのがしんどい。 何度も言うが、実写にはアニメとは違う作法があります。それを守らずに漫画をそのまま映像にしてもリアリティは生まれない。 せっかくスケールのある話と迫力シーンの連続なのに、小嘘で繋ぐと、そいつに引っかかって楽しめない。
 来月までに原作を、せめて京都編だけでも読もうと思いますが……あの絵柄があきまへん。結局、読まんやろなぁ。

 誰か、持ってたら貸しておくんなさい。

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