ライトノベルベスト
〔エピソード・赤鼻のトナカイ・1〕
サンタクロースがIT化してから久しくなった。
大昔のサンタクロースは、何万人も居て、半年がかりでプレゼントを用意し、主にキリスト教国の中産階級以上の家を個別に回っていた。それが日本などクリスチャンでもないのにクリスマスプレゼントを贈る習慣が世界中に広まり、主にドアーフの隠居仕事であったサンタクロースの仕事も大変になった。
それが前世紀の終わりごろからIT化が進んだ。
コンピューターで、世界中の子供たちの希望と家庭の実態、そういうことをデータ化し、親や、それに準ずるボランティアの人たちに「その気」にさせる。
スーパーコンピューターを導入してからは、いっそう楽になった。担当の若いサンタがバグのチェックやメンテナンスをするだけで仕事が済む。
前世紀の終わりごろまでは、ごく一部のアナログサンタが、伝統通りのコスでトナカイに橇をひかせて個別に回って行った。煙突がなくても、家に入る時はミクロンの大きさにまで小さくなり、プレゼントを置いていくのだ。
そういうサンタは、めっきり減った。もう世界に五人もいない。ちなみにサンタクロースには固有の名前は無い。シリアルナンバーで呼んでいる。
これは、そういうアナログサンタ、シリアルナンバー00……1号の、ちょっとしたエピソードである。
「高倉健も菅原文太も逝っちまった……わしも今年を最後にしようか」
暖炉の前でロッキングチェアーに揺られながら一号サンタは思った。一号サンタも時代に合わせてパソコンを使っている。若いサンタでは手に余る……実態はオールドサンタたちに生き甲斐を与えるために、若いサンタたちが、特別枠にした特別なところである。
昨日パソコンを立ち上げて、そういう特別枠が入っているのではないかとメールをチェックした。
なんと、迷惑メールの中に「サンタクロース一号さんへ」というのが入っていた。
「なんだ、バグか設定ミスかな……」
そう呟きながら開いてみると、大手ネットショップ『ジャングル』からのクリスマスプレゼントの特別バーゲンのお知らせだった。
「世も末だな。本職サンタのところに、こんなメールが来るようじゃなあ……」
どうやら、サンタ一号というのがハンドルネームと勘違いされ、シリアルナンバーをアドレスと間違われたようである。
で、サンタは、今年をもって、最後にしようと決心した。
「そうだ、最後のクリスマスだ。橇はあいつに曳かせよう!」
サンタは、そう思い浮かぶと、さっそく地味なオーバーを着て、何十年かぶりで、そいつの家に向かった。
サンタは、テレポすると、そいつ……赤鼻のトナカイのバイト先に急いだ。
〔エピソード・赤鼻のトナカイ・1〕
サンタクロースがIT化してから久しくなった。
大昔のサンタクロースは、何万人も居て、半年がかりでプレゼントを用意し、主にキリスト教国の中産階級以上の家を個別に回っていた。それが日本などクリスチャンでもないのにクリスマスプレゼントを贈る習慣が世界中に広まり、主にドアーフの隠居仕事であったサンタクロースの仕事も大変になった。
それが前世紀の終わりごろからIT化が進んだ。
コンピューターで、世界中の子供たちの希望と家庭の実態、そういうことをデータ化し、親や、それに準ずるボランティアの人たちに「その気」にさせる。
スーパーコンピューターを導入してからは、いっそう楽になった。担当の若いサンタがバグのチェックやメンテナンスをするだけで仕事が済む。
前世紀の終わりごろまでは、ごく一部のアナログサンタが、伝統通りのコスでトナカイに橇をひかせて個別に回って行った。煙突がなくても、家に入る時はミクロンの大きさにまで小さくなり、プレゼントを置いていくのだ。
そういうサンタは、めっきり減った。もう世界に五人もいない。ちなみにサンタクロースには固有の名前は無い。シリアルナンバーで呼んでいる。
これは、そういうアナログサンタ、シリアルナンバー00……1号の、ちょっとしたエピソードである。
「高倉健も菅原文太も逝っちまった……わしも今年を最後にしようか」
暖炉の前でロッキングチェアーに揺られながら一号サンタは思った。一号サンタも時代に合わせてパソコンを使っている。若いサンタでは手に余る……実態はオールドサンタたちに生き甲斐を与えるために、若いサンタたちが、特別枠にした特別なところである。
昨日パソコンを立ち上げて、そういう特別枠が入っているのではないかとメールをチェックした。
なんと、迷惑メールの中に「サンタクロース一号さんへ」というのが入っていた。
「なんだ、バグか設定ミスかな……」
そう呟きながら開いてみると、大手ネットショップ『ジャングル』からのクリスマスプレゼントの特別バーゲンのお知らせだった。
「世も末だな。本職サンタのところに、こんなメールが来るようじゃなあ……」
どうやら、サンタ一号というのがハンドルネームと勘違いされ、シリアルナンバーをアドレスと間違われたようである。
で、サンタは、今年をもって、最後にしようと決心した。
「そうだ、最後のクリスマスだ。橇はあいつに曳かせよう!」
サンタは、そう思い浮かぶと、さっそく地味なオーバーを着て、何十年かぶりで、そいつの家に向かった。
サンタは、テレポすると、そいつ……赤鼻のトナカイのバイト先に急いだ。