大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベルベスト・〔エピソード・赤鼻のトナカイ・3〕

2016-12-11 07:06:05 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
〔エピソード・鼻のトナカイ・3〕



 サンタは、赤ずきんが「インターナショナル」を唄い終わるまで待った。

 起て飢えたる者よ 今ぞ日は近し
 醒めよ我が同胞(はらから) 暁(あかつき)は来ぬ
 暴虐の鎖 断つ日 旗は血に燃えて
 海を隔てつ我等 腕(かいな)結びゆく
いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あぁ インターナショナル 我等がもの
いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あぁ インターナショナル 我等がもの

 聞け我等が雄たけび 天地轟きて
 屍(かばね)越ゆる我が旗 行く手を守る
 圧制の壁破りて 固き我が腕(かいな)
 今ぞ高く掲げん 我が勝利の旗
 いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あぁ インターナショナル 我等がもの
いざ闘わん いざ 奮い立て いざ
あぁ インターナショナル 我等がもの


 佐々木孝丸/佐野碩訳詞・ドジェテール作曲

 赤鼻のトナカイは、赤ずきんが唄っているあいだ、コーヒーには口を付けず、ただ両の手で温もりを愛しんでいた。
「赤ずきんちゃんのインターも、捨てたもんじゃないな」
 サンタは、自分のカップを持って赤鼻の向かいに座った。
「これは……タワリシチ・サンタ!」
「懐かしいな、その呼び方」
「あんただけでしたからね、タワリシチって言っても嫌な顔しなかったの」
「インターも、今の女の子が唄うと、心地いい違和感を感じるね」
「ハハ、懐かしいね、あんたのシニカルなとこも。赤ずきんちゃんは『はらから』を『腹から』だって、大笑いでしたけど、意味なんていい。インターはメロディーとテンポにソウルがありますから」
「昔どおり、ノンポリでいいよ」
「この店に来れば、みんなタワリシチですよ」
「でも、我が祖国ソヴィエトなんて、気持ちの悪いことは言わんでくれよ」
「いまさら、コミンテルンでもないでしょ。あたしはアナクロじゃない」
「『資本論』の剰余価値説でケツ割ったオレが言うのもなんだけど、思想としても政治手法としてもインターが目指すところのものは蜃気楼に過ぎないことは、20世紀で勝負がついた。それを承知の上で、選挙運動やってる君の一徹さには頭が下がる」
「よしてくださいよ。この歳まで続けたことだ……ここで歳だからって、隠居顔してたんじゃ、人生の帳尻が合わない」
「だよな。パージ受けた時も、君は節を曲げなかった。ひ弱な学生諸君らとは腹の据え方がちがう」
「で、こんなロートルに、なんの御用ですか?」
「アナログサンタは、今年でよそうと思ってさ……」
 サンタは、老眼鏡を拭こうとしてハンカチを出そうとした。
「ハンカチじゃ、レンズの曇りはとれない。どうぞ」
 赤鼻は、専用の眼鏡ふきを差し出した。
「こういうところが、君の長所だ。先々代の赤ずきんが惚れたのも、そういう、ちょっとボヘミアンずれしたとこだったなあ」
「古傷です。あの子といっしょになっていたら、あの赤ずきんちゃんは、この世には生まれてませんからね」
「ん……この眼鏡ふきのイニシャル、刺繍だな」
「ただの年寄り同士の小さな親切です。誤解しないでくださいね、こういうことにかけちゃ、自分はプラグマティズムなんです」
「ハハ、そうか。じゃ、単なる年寄りのリリシズムと笑われるかもしれんが、最後の橇は、君に曳いてもらいたいんだ」
「……そうですか」

 赤鼻は、眼鏡を外してハンカチを出した。

「眼鏡は、眼鏡ふきだろ……」
「いえ、歳のせいでしょ、涙腺が緩くなっちまって……」

 二人は、やっとコーヒーカップに手を付けた。すっかりぬるくなってしまったが、ロートル二人の心は十分に温まった。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・120『ハリウッド情報』

2016-12-11 06:47:15 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・120
『ハリウッド情報


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評です。今回は番外ハリウッド情報です。



 てな訳で、お休み恒例“ハリウッド情報”

 トランスフォーマー/ロストエイジ……世界興行10億$〓で、現在歴代19位! 因みに“アナ雪”は12億5千万$〓の5位でんす。
 エクスペンダブルス3……またまた新顔登場、その中で、ハリソン・フォード/ウェズリー・スナイプス/アントニオ・バンデラスは味方みたいです。メル・ギブソンが敵役。ジェット・リーも復活、ただ 今回もミッキー・ロークは出ないようで……大ブーイングであります(個人的に)
 スピルバーグ制作/ヘレン・ミレン主演“THE 100FOOT JORNEY”全米先週末公開(日本11/1)の作品。ヘレンのミシュラン星付きレストランの向かいにインド人が越してきて、インドレストランを開くというお話。最近のハリウッドは、オイルマネーやら日本資本、中国資金と並んでインドマネーも絡んでます。映画のストーリーにも反映されてて、金は出さんが増える傾向にあるのが、ヒスパニック向けと黒人向け。キリスト教系作品は誰が金主かよぉ判りません。

 では全米ボックスオフィス順位です。

⑩プレーンズ2(4週目、5290万$)アニメとしちゃ、お寒い売り上げ。とは言え「カーズ」の成績からすりゃこんなもんでありんす。
⑨猿の惑星:ライジング(5週目 2億$目前)前作が7週で1億7千万$強でしたからスケールアップ。 ここらで止めた方がええんやけどね……続編はあるんやろなぁ。
⑧GET ON UP(2週目 2千万$強)“ゲロッパ”でお馴染み、ファンクの帝王 ジェームス・ブラウンの自伝。まあ、来週は消えてますね。
⑦ヘラクレス(3週目、63百万$)なんとか7千万$には乗りそうな勢い、たぁ言え少々微妙。日本公開10/24……この類、最近日本じゃコケるんで、さて、どないだっしゃろ?
⑥STEP UP ALL IN(1週目 640万$)STEP UPシリーズ最低スタート。ダンス映画で、ヒットしたためしが無いのに、毎年1本作ってます……まぁ、製作費が安いんでしょうね。これも来週には消える運命
⑤LUCY(3週目、1億$弱)人間の脳が100%覚醒したら? っちゅうSF、今月末公開で、次の押し付けはこれです。スカーレット・ヨハンセン主演ですから“華丸お薦め”決定しとります。アハハハ〓
④THE 100FOOT JORNEY(1週目、1千万$強)上記、スピルバーグ制作の作品、内容からすると破格のスタート成績、さて、どこまで伸びますやら、注目です。
③イントゥ ザ ストーム(1週目、17百万$)これも、何年かに1本作られる“竜巻映画”……今回は同時多発巨大竜巻で、まぁ、展開は読めとります。来週 急降下すると思います。
②ガーディアンズ オブ ギャラクシー(2週目、1億8千万$)ご存知マーベルの“アベンジャーズ”系譜の一本。次がいよいよ“
アベンジャーズ2”で、これまでのいきさつからすると“ガーディアンズ”が新メンバーとして参加します。はてさて、どんな突飛なストーリーに成るんでしょうね、“アベンジャーズ2”を見る予定の人は必見。日本公開9/13です。
①ミュータント・タートルズ(1週目、65百万$)ある程度年配の方ならご存知の“亀の忍者”のお話です。キャラクターの歴史は古いと思とりましたが、なんと30年前に出来たキャラクターらしいです。案外新しいキャラなんですね。“トランスフォーマー”を、自らの暴言で首になったミーガン・フォックスが共演(これだけで、見る気が失せますなぁ)してます。1億$〓には成るんでしょうが、私、何やら嫌~~な予感がいたします。

 さて、来週は、いよいよ“エクスペンダブルス3”の公開です。初登場1位を取れるや否や。今回もド派手な映画なのは間違いなし、日本公開11/1からです。
 今回は、もう消えとりますが、日本公開未定ながら注目されるのが、“TAMMYメリッサ・マッカーシーっちゅう太ったオバサンのコメディ、低予算作品ながら全米スマッシュヒット。もう一本、ロブ・ライナー監督(名匠)、マイケル・ダグラス/ダイアン・キートン共演“AND SO IT GOES”頑固爺と隣のオバチャン設定と来たら、こらみのがしちゃいけません。十戒”のリメイク、日本公開は来年のようですが、アメリカは年末公開。さぁて、どんなモーセが登場するやら、またもや賛否両論/侃々諤々大作なんでしょうかね、相当意地悪な気分で待っております。 では、来週も“押し付けハリウッド情報”の予定。“エクスペンダブルス”の成績はどうなんでしょうか、乞う ご期待。

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