大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・『フェロモンの偽証』

2016-12-12 06:52:22 | ライトノベルセレクト

ライトノベルセレクト
『フェロモンの偽証』



 あれは、転落死したAの葬儀の日だった。

 出棺の時、霊柩車の横にクラスの全員が整列。その時から僕は感じていた。
――かわいい子だな――
 転校して間が無いときだったので、亡くなったAにも特別な感情はなかった。そして綾子の存在にも気づいていなかった。
 霊柩車がクラクションをならして、動き始めた時、綾子が、ほんのわずか前に出かけた。

 僕は察した。

 それからの綾子は、普段通り……と言っても、それ以前の綾子のことは知らないけど、本人と周囲の雰囲気から普段通りだと思った。
 周囲は口を閉ざしていたし、綾子も、あのわずかに霊柩車の前に出ようとしたことを除いて、そぶりも無かった。
 それから、何事も無かったように数か月が過ぎ、僕たちは、それぞれの高校に進学した。

 偶然、僕と綾子は同じ学校に進学し、クラスは違うけど、同じ演劇部に入った。

 本格的な演劇部で、基礎練習をみっちりやらされた。
 基礎練習の中に、人のウソを見破るのがあった。一人が前に出て話をする。ただ、その話の中に一つだけウソを入れ、他のみんなは、話しの後で、そのウソを見破るのだ。人はウソをつくとき、目が動くことが多い。
 僕が前に立った時、僕は、ほんのイタズラ心で、出てくる人間の名前を変えた。OをAと言いかえた。
 誰も、僕のウソを見抜けなかった。みんなには「うっかりウソを入れるのを忘れた」と言っておいた。でも、綾子だけは気づいていた。

 僕は確信した。

「古い話だけど、Aは綾子のことが好きだったんじゃないかな」
 クラブの帰り道に、ほんの世間話のつもりで言った。綾子の顔色が変わった。

 当たっていた。

 中学の頃、Aは綾子のことが好きで、自殺の数日前に告白していたが、手痛くふられてしまった。そのことを綾子は、ずっと気に病んでいた。
「あたしが悪いの、あたしが、あそこまでA君が思い詰めているなんて思ってもいなかったから……」
 綾子は嗚咽し始めた。
「そんな、Aのことは誰にも分からないよ。きっと他にも悩んでいたことがあるんだよ」
 綾子は納得しなかった。人目もはばからず、綾子は僕の胸に顔を埋めるようにして嗚咽し続けた。

 僕は、胸いっぱいに綾子の苦しさを感じた。そして綾子の温もり、髪の感触、匂い立つ香りも……僕は、綾子を本当に愛おしく思った。

 それから十年ちょっと。

「ちょ、じゃま」
 綾子は。寝転んでテレビを見ていた僕を平気で跨いでいった。
「もう三十路なんだからさ、そういうパンツ止した方がいいよ」
「いいの。アナのパンツはゲンがいいんだから」
 今日は上の子の卒園式だ。綾子は、スタイルも物腰も(亭主を平気で跨いでいくことなどを除いて)あのころと少しも変わらない。
 お母さんたちの集まりでも、その可愛いといってもいい女らしさは評判のようだ。会社の仲間からも「いいの見つけたな」とか「純愛の末だもんな」とか言われる。穿いているパンツも、あの時嗚咽した時に付けていたブラとお揃いのアナ雪のアナのパンツだ。

 で、亭主である僕本人は、多少嫌気がさしている。

 あのころ愛おしいと思ったのは、綾子のフェロモンだ。僕はフェロモンの偽証に騙された。

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ映画評・121『ハリウッド情報』

2016-12-12 06:20:01 | 映画評
タキさんの押しつけ映画評・121
『ハリウッド情報』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ



 これは悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内に流している映画評ですが、もったいないので転載したものです。


さて、エクスペンダブルス3は初登場1位になったんでしょうか?

 そいつは後のお楽しみ。月刊スクリーンの西森マリーさんのコーナー(この人、映画の引っ掛かり方が私と一緒ですわ)にまたまた注目です。
 今月のテーマは「いかにハリウッドは中国に媚びを売っているか」であります。あったりまえでは在りますが、「トランスフォーマー/ロストエイジ」があんまりっちゃああんまりだったので、アホらしいやら、フツフツと怒りが……中国は近日中に日本を抜いて世界第2の映画鑑賞国(アメリカがトップ)になると聞いていたのですが……2012年既に国内売上27億$を記録、堂々の世界第2にのし上がっています。この勢いだと、2020年にはアメリカさえ抜かれると予想されています。
 まぁ、そうはいかんと思います。数字の取り上げが偏っているし、映画産業総枠の稼ぎからするとまだまだ桁が違ってます。アメリカは何じゃかんじゃで1千数百億$ですからね。ハリウッドとしちゃ13億(15億とも)の人口は魅力ですが、映画を見にいけるのはそのうちの2億に過ぎません(それでもデカイ数字ではありますがね)
 アメリカ国内売上より中国での売上の方が上になる状況も続いています。「トランスフォーマー」がアメリカ17千万$の時に、中国では22千万$でした。「パシフィック・リム」の売上もアメリカ1億$少々に対し、中国11千万$(日本は1千4百万$で桁違い) とは言え、中国は自由市場ではなく「チャイナ・フィルム・グループ」っちゅう中国政府組織の上映許可がいります。外国映画の年間公開は34本(2011年まで20本)でかなりの狭き門。だからハリウッドはなりふり構わずチャイナ・フィルムに尻尾を振る訳です。 最近ハリウッドの悪役から中国人の姿が消えています。東洋人でなければならなければ「朝鮮人」になります。主人公が外国に行く設定も、原作ではフランスになっているものを中国に変えたり、主人公の恋人も、元々アメリカ人だったのに中国人に変更……日常チャメシすぎて、一々あげられない位です。

 当の中国人には、このハリウッドの“媚び”を「中国人を馬鹿にしている」と受け取る向きもあるそうで、何を考えてるんでしょうね? んなもん「商売」に決まっとりまんがな、ハリウッドが目指すのは「金儲け」に決まっとります。
 反中国の作品には、政府様から厳重なお叱りがございます。「セブン・イヤーズ・イン・チベット」なんざ“歴史改竄だぁ~!”てなもんで、どっかの国に対するようにカンカンです。ホンマにどの口がほざくやら、対するハリウッドは馬耳東風(今ならどうなるかわかりまへんけど)どこぞの国も知らん顔しとったらええのにね。いつ靖国に行こうと、こっちの勝手でんがな、ね〓 まぁ、チャイナ・フィルムにも抜け穴があって「合作映画」は範囲外っちゅう事で、今後中国資金がどんどこハリウッドに入りそうです。
 暫くは、ハリウッド映画で中国人が暴れ回りそうですね、しゃあないっす。
 
 まぁ、そら置いといて、“アリス・イン・ワンダーランド”の続編が決定いたしました。キャストはそのまんまで、2016年夏公開、もち“鏡の国のアリス”でんす。
 続編と言や“ミュータント・タートルズ”も2016年に公開決定。これ公開3~4日で発表されてます。
“シン・シティ”の続編が完成しました。ブルースとミッキーはこっちに出るから“エクスペンダブルス”に出なかったのかな?
 さて、ランキングですが、先週の⑧~⑩がランク外に、③~⑦が三つずつ下げてます。中でも「LUCY」が1億$〓“HUNDRED FOOT JURNEY”が邦題決定「マダム・マロリーと魔法のスパイス」…ムムゥ…このセンスはいかがなものか?新登場⑤THE GIVER(1230万$)ちょっと寒い売上、見てないんで解りませんが、“クラウド・アトラス”的失敗?④エクスペンダブルス3(1580万$)……信じられん低空飛行ですが、映画を盗まれ、違法ロードされたらしいです。ダウンロードが200万以上あったとか、災難ですね。③LETS BE COPS(2620万$)毎度お馴染みバディコップ・コメディ……全然知りませんでした。当の制作者が一番ビックリしてるようです。 ①②は先週と同じくタートルズとガーディアンズです。とは言え、どちらも3千万$以下、今週はどうも不作やったようです。
 年末にかけて、こんな感じで推移していくと思います。

 ローレン・バコールとロビン・ウィリアムスが亡くなりました。バコールは相当のお歳ですが、ロビンは60を少し超えたくらい。ご冥福お祈りいたします。 ロビンはまだまだ見ていたい俳優さんでした。色んなシーンが思い出されます。別に引っ掛けるつもりはありませんがクロエ・グレース・モレッツの最新作品は事故にあって肉体から離れてしまった魂の役、人間じゃないけど怪物でもない。久しぶりに普通の女の子を演じる彼女が見られそうです。では、この辺で。また、来週お目にかかります。

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