イスカ 真説邪気眼電波伝・17
『ギルドの徴は赤マント!』
あろうことか真っ赤っかのマントだ!
ただでさえ目立つことが苦手なオレが赤マントなんだぜ!
それもダースベーダーみたいな黒鎧の上からなんだから、もう死んでしまいたいくらいに恥ずかしい! チョー恥ずかしい!!
「フフ、顔まで赤くしなくてもいいのよ(*^^)v」
「い、言うなああああ!」
装具屋で買ったのが、このお揃いの赤マントだ!
「ギルドの徴に、なにか身に付けるアイテムないかな~?」
新品の銀鎧をキラキラさせながら、ブスがオヤジに聞いた。
「そりゃ、揃いの鎧でしょう」
商売熱心なオヤジは、いいカモが来たと、二割増しくらいに禿げ頭をテカらせて応えた。
「う~ん、鎧はもう買っちゃったからね……この銀鎧もオキニだしい……なんかカスタムアイテムでないかしら?」
「それなら旗指物になさいまし、サービスでギルド名を入れさせてもらいますよ」
「それは勘弁して!」
オレは胸の前で×に腕を組んだ。桃太郎じゃねーんだからゼッタイNG!
「わたしもイヤ! 旗指物って、なんだか雑兵とか足軽でしょ、わたし姫騎士なんだから!」
「さようでございますね……なら、これなどいかがでございましょう?」
そう言ってオヤジが取り出したのが、この赤マントだ。値段は旗指物の三倍する。
オレはピンときた。オヤジはハナから赤マントを勧めるつもりだったんだ。いきなり出しては「高い!」と言われることを見越して、揃いの鎧⇒旗指物⇒赤マントの順で見せたんだ。クールでカッコはいいが高額な鎧、実用的で安いけど見っとも無い旗指物、んで(本命の)赤マント。鎧と旗指物でNGなブスにはすばらしく見える。
「いいわね、これ!」
案の定ブスがその気になる。
「あ、でも、バトルの最中に剣とか鎧とかにひっかかって危ねーんじゃ……」
「大丈夫ですよ、ポリゴン抜けしますから」
モノも言いようだ、髪の毛が体に突き抜けたりするポリゴン抜けは、現在のPCでは髪の質感とならんで描画のネックになっている。いわば欠点で、ケラケラとメリットみたいに言うもんじゃねー。
「そうだ、これにギルド名入れてもらおうよ! ギルド・ブス!」
「やめてええええええ!」
で、無地の赤マントを翻しながら転送ゲートに向かうオレタチだ。
「さ、それでは四十九層目指して出発だーーー!」
ブスは右腕をブゥーーーンと回して、階層ボタンを押そうとした。
癪だけど、可愛くてカッコイイ……じゃなくて、攻略なんかに行きたくねーーー!
ピコピコピコピコ ピコピコピコピコ ピコピコピコピコ…………
急にアラームが鳴りだした。
「え、なに? なんなの?」
ブスの手が停まって、オレもキョロキョロ……しながら思いついた!
「そ、そーだ! すまないブス、オレってタイマーかけてたの忘れてた!」
「タイマー?」
「ああ、リアルが疎かになっちゃいけないからタイマー掛けたんだ。学校の成績もイマイチだし、すまん、落ちるわ!」
「え、あ、ちょっとナンシー!」
オレは、めずらしく寝落ちすることなくログアウトした。
しかし、あのアラームは……?