大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・08「MASCHERA大成功!」

2018-01-09 14:50:25 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・08

『MASCHERA大成功!』

 

「フフ、偽りの魔王ルシファーに魂を売りしディアブロ能力者漆黒よ。そなたの九尾鞭はささらに千切れ、使い魔共も数多のポリゴンの砕けとなって潰え去った。もはや、そなたに、この夜魔クイーン・オブ・ナイトメアに抗する術はない。マスケラの仮面と共に滅ぶがよい。食らえ我が堕天使の雷、メテオインパクトオオオオオオオオオオオ!!」

 人の目には見えないサタンの力を宿したごとく突き出された両掌から裂ぱくの電光が発せられ、数瞬の間漆黒が陰になり陽になってスパークすると九体の漆黒はのたうち回って上下のソデにハケ、クイーン・オブ・ナイトメアはジャンプしながら旋回しゴスロリ衣装を閃かせると月の守護神アルテミスの如き決めポーズになり、文化祭舞台部門会場である体育館は割れんばかりの拍手のスタンディングオベーションの嵐となった!

 あれだけ難産だった『マスケラ~堕天した獣の慟哭~』は主演女優佐伯さんの突然の開眼によって目出度く幕を閉じる。

 佐伯さんが覚醒したおかげで、門田は、たったニ十分で行き詰った脚本を書き上げ、父たる作家のDNAを受け継いでいることを全校に知らしめた。

「いいえ、佐伯さんが彗星のごとく覚醒してくれなければ、非才な僕には書き上げられませんでした」

「いいえ、わたしこそ、門田君やクラスのみんなに支えられて今日の舞台を踏めたんです」

 互いを褒めたたえる幕間インタビューには――やっぱり、わたしの目に狂いはなかった――校長先生の血圧を満面の笑顔と反比例して穏やかな数値に落ち着かせるという効果まであった。

 晴れがましいことが苦手なオレは、興奮のるつぼと化した体育館をそっと抜け出した。

 体育館の熱気のせいか、思いのほか外気が冷たい。秋本番の向こうに早手回しに冬を感じてしまうのはマイナス方向に敏感すぎる感性のせいかもしれない。

 クラスの舞台劇が上々の首尾におわったことはオレみたいなヤサグレでも仄かに嬉しい。嬉しいんだけど、そんな顔を人に見られるのも嫌だし、人に見られなくても居心地が悪い。

 似合わぬ火照りをクールダウンさせるために中庭を目指す。しかし中庭には、文化祭で雰囲気が出来あがったアベックが三組も……オレはスルーして自販機に六十円を投入してパックのコーヒー牛乳を買おうと思う。文化祭なので売り切れている公算が大だったけども、自販機は正直にパックを吐き出した。学食の最大の収入源は自販機だ。オーナーのオジサンは心得ていて何度も補給していたんだろ。

――意外に冷えてる――

 冷却が間に合わず生温いのを覚悟していたので嬉しくなる。

 パックを持ったまま本館裏に回る。

 本館裏は、グラウンドに降りるためにコンクリートの雛壇になっていて、最上段は等間隔に生け垣になっている。生け垣に隠れたベンチに腰掛け、パックにストローを差し込む。

 ズズズーーーっと吸い込んだところで、生け垣の向こうから声が掛かった。

――そっち行っていい?――

 聞き覚えのある声だった。

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高校ライトノベル・小説大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・18『加盟校活動報告・4』

2018-01-09 06:40:07 | 小説・2

小説大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ 
Vol・18『加盟校活動報告・4・大阪府立○○高校』

      

 今日は府立○○高校にお邪魔しました。

 ○○高校は、戦後○○市に府立高校が一つもないことを地元の人らが心配しはってできた、府立高校としては戦後できた学校です。
 ○○高校は、連盟が、まだ研究会というてたころに、副会長さんが出た学校でもあります。

 ※:浪速高等学校演劇研究会=連盟の前身で、運営は全て生徒でやっていて、会長は酒呑童子高校の校長さんでしたが、実際に組織を動かしていたのは、生徒だけで行われる総会の選挙で選ばれる副会長以下の生徒の役員でした。加盟校は50校ほどでしたが、当時の大阪の高校は今の半分ほどしかなかったんで、組織率そのものはあんまりかわりません。

「先生は、地区の役員校やってはるんですね?」
「はい、ちょっとでもお役にたてたらと思いまして。また、勉強にもなりますからね」
「失礼なこと言うようですけど、建前やのうて本音のとこ聞かしてほしいんですけど」
「本音いうと?」
「先生とこ、三年前から部員ゼロでしょ。せやのに連盟に加盟してはるのはなんでかなあと、不躾ですけど思うんです」
「噂には聞いてたけど、真田山は直球やなあ……」

 この間、先生は怒りもせんと、静かに言葉を選んではりました。

「難しい言葉で言うとアイデンティティーかな」
「あ、レーゾンデートルのことですね」
「あは、君らの方がむつかしい言葉知ってるねえ(笑)」

 ここで、また先生は黙った。思慮深い印象が強まる。

「むかし、高校野球の大阪大会で、応援賞もろたことがあるねん。野球部そのものはボロボロの一回戦負けやったけど、応援に来る生徒の数やら、底抜けに明るい応援が評価されてね。うちの生徒は、そういう可能性を持ってると思うねん。もちろんホッタラカシでは出てけえへん。衝動としては持ってると思うねん。その衝動に形と方向つけてやるのが僕の仕事やと思うてる」
「で、生徒がいてへんまま連盟に入ってて、その衝動に形と方向つける道はみつかりました?」
「こんなこと言うたら、年よりくさい思われるかもしれへんけど、こういうことは、直ぐに成果が出てくるもんとちゃうと思うねん。何年かやってるうちに身についてくることもあると思う。じっさい連盟の会議やらコンクールの仕事してて、アドバイスしてもらえることもあるしね」
「先生とこはθ地区やから、御手毬高校とか、京橋学院高校が実力校やと思うんですけど、そういう学校から得られることがある言うことですか?」
「そういうとこからもあるし、他の学校見て参考になることもあるよ」
「失礼ですけど、具体的には、どんなとこですか?」
「……地区は違うけど、連盟の運営委員長の先生の不屈の精神は見習うとこがあると思うた。うちと一緒で部員ゼロからの出発やったけど、夏の間に東京まで生徒連れてワークショップ受けに行って、そこのメソードで、そこそこの芝居作ってコンクールに出てはった。僕は面白い芝居やと思うたけど」
「あ、あれあたしらも観ました。感想は先生とはちがいますけど」
「どんな感想持ったんかな?」

 ちょっと言葉に詰まったけど、言いかけたことなんできちんと言うのが礼儀やと思うた。

「あたしらは、あれは芝居やないと思います。あれは、役者に一定の条件だけ与えといて即興で反応させるエチュ-ド、あるいは、エクササイズです。野球の試合でピッチングやら守備練習見せてるようなもんで、あれは観客に失礼やと思いました。ほんで、舞台に立った子らも、兼業部員……最初は、それでもええと思うんですけど、あの子らコンクール終わったら、さっさと演劇部辞めてしもて、実質は、現在部員ゼロやと聞いてます」
「手厳しいなあ(笑)」
「ちょっと話題は変わりますけど、先生は夏の講習会行かはるんですか?」
「一応は、そのつもりやけど」
「あれ、役にたつと思います?」
「なんか、いちいち引っかかってんねんな」

 先生真顔になってきたけど、あたしは続けました。

「一日だけ運転の講習受けた人の運転する車に乗る気持ちになります?」
「ちょっと、問題のすり替えのように思う」
「先生は、社会科ですよね」
「うん、いま日本史Aと現代社会やってる」
「日本史の授業一年分を一日でやれ言われたら、どないです?」
「いや、せやから、そういうのと講習会はちゃうて」
「どないちゃいますのん?」
「一つは、大勢みんなでやることに意義がある。普段はしょぼいクラブでも大勢でやったら、目に見えへんエモーションを感じられる」
「それて、ほとんど宗教団体ちゃいます? 演技やら劇作は、ほとんどマンツーマン指導でやらんと身に付かへん言うのが、常識です」
「それはやな……」
「ひところ、日本中の学校で『宿泊学習』が流行りました。いま高校でやってるとこほとんどありません。時間と労力だけとられ、結局は一年の学年はじめの大事な時間を無理して、普段の生徒指導が疎かになって、宿泊学習で皮肉なことに生徒に乗り越えられて、手におえんようになるからです。連盟の講習会は連盟が連盟として機能してることを見せるパフォーマンスです。本気で育てよ思うたら、週に一遍でも集めて一年通して指導することです。連盟の中には気ぃついてる人もいてます。せやけど口に出しては言いません。自分で猫の首に鈴を付けるのは嫌ですから」
「君なあ……」

 もう止まらへん。

「それに、ホンマのとこは、連盟にそんな指導ができる先生が居てないからです。本選の芝居の出来見たら分かります」
「ほんまに、なんにも得るもんは無いと思うてんのん?」
「一つだけあります」
「なにや?」
「反面教師……です」

 内容を鑑みて、今回は学校名を伏せさせていただきました。

 

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 

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