大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・14「北斗君、見直したわよ」

2018-01-15 16:38:17 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・14

『北斗君、見直したわよ』

 

 

 佐伯さんがニッコリ笑った。

 

 数学の時間「北斗、やってみ」と黒板の前に引きずり出され三十四ページ三番の問題をやらされた。二次関数グラフの平行移動の問題だ。同時に三人が引っ張り出され、それぞれ問題をやらされている。

 野崎(数学の先生)の魂胆は分かってる。オレはできない生徒の見本で、黒板を前に立ち往生するのを見越してやがる。

 いい子・悪い子・普通の子の三通りだ。むろん、オレは悪い子の見本。

 ところが、数学はイスカにさんざん絞られたところなので、なんとかできてしまう。

 チョークを手にするまでは――また劣等生の見本にされんのか(´;ω;`)ウゥゥ――だったけど、詰まりながらも問題が解けた。ため息ついて黒板を背にすると前から二番目の佐伯さんと目が合ったんだ。で、佐伯さんがニッコリ笑ったということだ。

「ヌヌヌ……やっぱ正解だ!」

 二度見直してから野崎はオレの回答に赤チョークで〇をした。別にイヤミの一つも言ってくれていいんだけど、マジで――そんなはずはないぞ――の間を開けるのはやめて! ほら、クラスのみんながクスクス笑ってるし!

「北斗君、見直したわよ」

 起立礼が終わると、オレの横を通過しながらこそッと佐伯さん。

 情けないけど体に電気が走った。

 それまでの佐伯さんは好意的に無視してくれていた。佐伯さんみたいな才色兼備が下手に声を掛けたら、へんな意味で注目されて余計に惨めになることを知ってるんだ。憐れみは時に刃物よりも人を傷つける、さすが名女優の愛娘、心得ていらっしゃる。

「北斗君」

 今度はイスカ……いや、教室では西田さんだ。

「問題一個解いたくらいで安心しない……なによ、板書写しきれてないじゃない。ノート貸したげるから、さっさと写す」

「あとでやるよ」

「ダメ、すぐにやらなきゃ身に付かない」

「へいへい」

 

 つぎの英語の時間もつつがなく終わって……。

 

「さっきのプリント、ここからここまで三回写して持ってくる」

「え、いま?」

「もちろんよ、鉄は熱いうちに打てよ」

「へいへい」

 

 そして昼休み、オレは食後のジュースを楽しんでいた。トレーを持ってキョロキョロしている佐伯さんが目についた。委員会が遅れたみたいで遅めの昼食。空いてる席がないんだ……佐伯さんが近づいてきたのを潮にオレは腰を浮かす、自然な形で席を譲ったのだ。午前中の自然なエールに応えたい気持ちもあったので自然にできた。

 

「あ、いいわよ北斗君、ちょうど二人分空いたし」

「え、あ……」

 隣の女子が斜め向かいのお仲間といっしょに席を立ったのだ。オレはハンパな尻を席に戻した。

「あ、ひょっとして西田さんが?」

 今度は佐伯さんが腰を浮かせた。

「あ、そんなんじゃないから」

「え、そうなんだ」

 佐伯さんは詰まらなさそうな顔になった。

「いい感じだと思ってたのよ」

「え、そなの?」

「うん、クラスメートが幸せそうなのって、はたで見ていても嬉しいじゃない」

「そ、そう」

「うん、野崎先生のイジワルかわした時なんて、ヤッターって思ったし、西田さんが激励してるの見て、わたしまで幸せになったのよ」

「それは違うから」

「そう? ま、いいけど」

 それ以上は追及することなくランチをお召し上がりになる佐伯さん。

 佐伯さんは、合間にいろいろ話をしてくれて、なんだか、とても幸せなランチタイムを過ごすことができた。

 

 こうして、学校は平和なんだけど、今日もネトゲができそうにない。

 

 

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高校ライトノベル・小説大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・24『本になってます!』

2018-01-15 06:30:50 | 小説・2

大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・25
『真田山学院高校演劇部 本になってます!』 
           

☆『はるか ワケあり転校生の7カ月』発売

 ただいま『はるか 真田山学院高校演劇部物語』が連載中ですが、紙本でも発売中です!

 タイトルの通り我が先輩坂東はるかさんの時代。つまりうちらが、まだ中学やったころの伝説の話です。

 あのころも、今とあんまり違いがなくて、山田先輩と、玉城(たまぐすく)先輩の二人だけやったんですけど、4年前の福田乙女先生が強引……いや、熱心な顧問で、いろんな生徒に声かけては演劇部に引っ張り込んでました。
 その中の一人が坂東はるか先輩でした。

 先輩は、ご両親の離婚で東京の乃木坂学院高校から転校してきはったばっかりです。まだ制服もできてない登校初日に目ぇつけて強引に演劇部員にされてしまいました。他にも放送部の子らが兼業部員で入ってきますけど、本格的な専業部員で残ったのは坂東先輩一人だけでした。

 放送部の子らが居てたころに『ノラ バーチャルからの旅立ち』いう7人出てくる芝居に決まります。せやけど、稽古が進むにしたがって、部活に対する気持ちの違い、家庭事情なんかで難しなってきて、テキストレジーやって5人にまで登場人物を減らしました。それが、もう6月の終わりころ。うちらの真田山はOHPには参加せんと(なんせ、お金がかかりすぎます)A市が盆ごろに開いてるピノキオ演劇祭に参加してます。その公演一か月前に、また一人辞めて『ノラ』は上演できんようになってしまいました。

 うちらはヘタな創作劇はしません。コーチの先生の勧めで『すみれの花さくころ』に急きょ台本を替えました。登場人物は3人でいけます。道具はほとんどなし。その代り歌が6曲も入る音楽劇です。

 それを奇跡的に、3週間ちょっとで仕上げてピノキオの板に乗せました。

 そんで、その『すみれ』をコンクールの予選で最優秀をとって本選の舞台に……そこで、すごい不本意な審査されて「作品に血が通っていない。思考回路、行動原理が高校生のそれではない」いうわけ分からん評でした。それからやったと思います。大阪府全体で審査の在り様を考えるようになりました。はるか先輩は審査員からはケチョンケチョンでしたけどNOZOMIプロのプロデューサーの目に留まって、プロの女優さんになるきっかけになりました。

 同じ業界のプロが観ても、小劇場の人とプロダクションの人とでは見え方が天と地ほどに違ういう見本になった話です。

 はるか先輩は、単に演劇部員として励みはっただけやないんです。

 はるか先輩は、別れたご両親を元の鞘に収めて家族の復活を果たそうと時間かけて努力しはりました。せやけど、やっとお金貯めて東京に行ってみたら、お父さんには事実上の新しい奥さんが居てました。
 パニくって、荒川の河川敷で泣くしかなかった先輩でしたけど、このことが元で、お父さんと、その奥さんとも新しい人間関係が開けていきます。

 お別れだけどサヨナラじゃない。

 そういう新境地を発見したはるか先輩でした。この人間的な成長が先輩の演技を、ほんで『すみれの花さくころ』いう芝居そのものを変えていきます。

 
 以下に概要を書いときます。

『はるか ワケあり転校生の7カ月』 税込み799円 著者:大橋むつお

 星雲書房  〒590-0053 堺市堺区文珠橋通3-22 

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 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ)
  

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