大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・イスカ 真説邪気眼電波伝・06「幻想神殿・3」

2018-01-07 14:28:46 | ノベル

イスカ 真説邪気眼電波伝・06

「幻想神殿・3」  

 

 

 幻想神殿のプレイヤーなら頭の上にIDバーが必ずある。

 ゲームのアカウントをとる時に付けるIDだ。三十字以内の平仮名・片仮名・漢字・アルファベット。

 オレはNANSHIだ。ネットのハンドルネームはデルス・ウザーラだけど、表立っては名乗っていない。

 本当はNANASHIなんだけど、登録するときにAを一つ忘れてしまいNANSHIになってしまっている。

 A一つの事なんだけど、ローマ字読みするとナンシとナナシの違いになる。

 オレは目立つことが嫌いなんで「名無し」にしたんだ。アルファベットにすることによって「名無し」の印象は薄まる。

 デルス・ウザーラだと、映画オタクとかオッサンのプレイヤーなら分かってしまうしな。

 それにアルファベットだと、人が読むのに少し時間がかかる。

 たとえゲームの中であろうが目立つのはいやなんだ。

 たまに行くバザールのオヤジなどは「ナン氏」と呼んでくれる。ナンシ氏じゃ発音しにくいもんな。

 

 網から抜け出したそいつは、ザンバラの髪と服装を整えているが、頭の上にIDバーががない。

 

「おまえ、NPCか?」

 言って自分でもおかしいと思う。NPC、つまりゲーム内にデフォルトで設定されているキャラなら、設定された場所からは移動しない。店のオヤジなら店から外には出てこない、ホテルのフロント係ならフロントの中、洗濯女なら日がな一日川で洗濯している。兵士とか巡査なら動き回るが、決められた街や任地の外に出ることは有りえない。

 じゃ、この森のNPC? 森の中ならドワーフかエルフ……こいつのミテクレは町娘だ。森に町娘、有りえない。

 それに所属のあるNPCなら名前と役割のIDが付いている[ハンス・店主]とかな。

 IDが無いのは単なる通行人だ。その他大勢のモブならいちいちIDが付くことは無い。

 だが、通行人ならこんなに喋ったりはしない。むろん単なるモブに話しかけたことなんかないけでさ。

「ボサっとしてないで謝ったらどうなのよ! こんな森の真ん中に罠を仕掛けて、ひとをひどい目に合わせてさ!」

「おまえの方こそおかしいだろ! ひとが仕掛けた罠をメチャクチャにしやがって、もう、おまえの臭いとかが染みついて、ピーボアも寄り付きゃしないだろが! っていうか、おまえ何者なんだよ?」

「あんたを叱りにきたのよ、ナンシー!」

「ナ、ナンシー!? 伸ばすな、オレはNANSHIだ!」

「ダメ、ナンシーで覚えちゃったんだからナンシーよ!」

「いや、だから、オレのIDは……」

 めんどくさいが、オレはIDの由来を穏やかに説明してやった。世の中めんどうを回避するためには忍耐が必要だ。予測されるめんどうを回避するためなら、少々の我慢はできる男なんだ。

「ハ! 軟弱な! 説教しに来て正解だったわね」

「おまえなーー!」

「いい若いもんが、森に引きこもっちゃって、有りえないじじむささじゃん。男だったらさ、スキル磨いて攻略目指しなさいよ! きちんとギルドに入って社交性にも磨き掛けなきゃ、イザって時に救けを呼ぶこともできないわよ」

「うっさい! オレは、こういうマッタリ生きるのが好きなんだよ!」

「ゲームの中に入ってまで引き籠るな!」

「引き籠りじゃねー、ライフスタイルだ! ロビンフッドだってシャーウッドの森で似たような暮らししてんじゃないか」

「ハ! ロビンフッドはやがては悪辣な王様やっつけるじゃん。ぜんぜん違うわよ。あんたはナンシー、軟弱な死にかけ野郎よ!」

「グヌヌ、人のことをメチャクチャ言いやがって、そういうお前は何者なんだ?」

「メレンブルクの娘よ」

「で、名前は?」

「ンなもん無いわよ」

「名前とかIDが無いのは、ただの通行人だぞ」

「そうよ、あたしはガラクタ通り三丁目のミス通行人よ、文句ある!?」

 

 こんな偉そうな通行人は見たことが無いぞ!

 

 

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高校ライトノベル・小説大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログVol・16『臨時増刊号』 

2018-01-07 05:58:58 | 小説・2

大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ
Vol・16『臨時増刊号』 
 
         


 昨日のVol・14は意外に反響が大きかったので、臨時特別号です。

☆反響のコメントなど

 実は、デリケートな問題なので、顧問の淀貴美先生からは書くなといわれてたんですが。概要だけでも書いておきます。学校訪問で行った誠学園や谷町高校でも話題ににはなってたんですが、あえて書かなかったことです。それほどデリケートかつ根本的な問題なんで、あえて要目だけでも書いておきます。みなさんにも考えていただけたら嬉しいです。

☆創作劇の偏重

 大阪は、90%以上が、顧問や生徒などによる創作劇がコンクールに出てきます。これは創作劇が特別な扱いをされるからです。
「既成脚本と、生徒が一生懸命創作してきたもんを同列にはあつかえません」という高校演劇の先生方の公式見解による影響です。
 うちらは、坂東はるか先輩のころから、この風潮には反対してきました。谷町の先生なんか「上演本探してはいてんねんけど、どうせ落とされることが分かってると気がなえてしもてね……」と、苦笑いされながら言うてはりました。
 前号を読んだ人には分かると思うんですが、谷町の先生は「野村萬斎のマクベスなんかええな」と言うてはりました。やっぱり手に合うたものを探してはいてはるんです。これを、実際の上演にまでいかさへんのは『創作至上主義』からです。
 うちらは既成の『すみれの花さくころ』をやります。まっとうな芝居を、高校生にやらせるためには、創作優遇主義、どないかせんとあかんと思いました。

☆審査基準

 二校ともそうでしたが、審査には不信感を持ってはりました。コンクールの2回に1回は「あれ?」と思わはるそうです。むろんうちらもそうです。創作劇の偏重との相乗効果で、コンクールの審査に疑問を抱かせてる大きな問題になってます。審査基準がないと、極端な場合「裏で、なにかあるんちゃうか?」と勘繰られてしまいます。実際学校訪問で行った学校の先生は「一つの地区で、同じ学校が四半世紀に渡って、地区で最優秀とんのはおかしいで」とおっしゃってました。やっぱり審査基準を作って、透明性のある審査が望まれています。

☆今年の審査員

 本選審査員のお一人は、三年前に真田山を「作品に血が通っていない、思考回路・行動原理が高校生ではない」いうわけ分からへん理由で落としておきながら、合同合評会では、レジメで、その審査を撤回した人です。この人を再び使うんやったら、それ相当の説明が必要です。
 三年前は落とされましたが、東京のNOZOMIプロのディレクターは、ちゃんとDVDの記録を観てくれはって、坂東先輩がプロの女優になるきっかけになりました。その結果から見ても、審査はおかしいです。個人名はひかえますが、この疑問と、三年前の誤審については釈明し、審査員の人選を再考すべきやと思います。

 では、もう学校に行く時間なんで、失礼します。

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 

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