大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・時かける少女・10『エスパー・ミナコ・5』

2019-02-15 06:44:20 | 時かける少女

時かける少女・10・
『エスパー・ミナコ・5』
      



「え、そんな偉い人に会うの!?」
 
 ミナコは、頭のテッペンから声が出た。
 大隊長のカリー少佐(こないだ昇進した)が直々に伝えにきた。
「そうだ、ミナコの噂を聞いて、ぜひとも会いたいそうだ。明日の朝、護衛付きのパッカードが迎えに来る」
「あ、このセーラー服でもいいの?」
「この服を着てくれ。オレは、それでもいいと思うんだが、連隊長が軍属らしい身なりにしろってさ。じゃ、明日。GHQ本部まではコワルスキーが付いていく。なんせ、あそこは、オレでもチビっちゃいそうなエライサンで一杯だからな」

 会いに行く相手はホイットニー准将。民政局のトップで、マッカーサーの懐刀。今は日本の憲法の改定で目の回るように忙しいはずだ。それが、なんでわたしなんかに……。
 よく似合う軍服を複雑な気持ちで鏡に映した。中尉待遇の軍属票が場違いだった。コワルスキーの口の利き方が上官に対するそれに変わったのには閉口した。

「やあ、いらっしゃい。軍服がよく似合ってる……ほう、立ち居振る舞いはまるで、十年も海兵隊にいるようだね」
「はい、わたしって影響受けやすいんです。でも、格好だけですから、とてもSemper Fi!という自信はありませんが」
「いや、君なら、今日からアナポリスの教官が務まりそうだ」
「ワオ、まさか、それをやれって、わたしをお呼びになったんじゃないでしょうね?」
「ああ、それもアイデアだな!」
 ミナコは、ホイットニーといっしょに笑った。いつの間にかホイットニー好みの控えめなギャグのトバシカタも覚えてしまった。
「で、陛下のご巡幸はいつごろからと考えておられるんですか?」
「驚いたな、わたしは、まだ、その話題には触れていないよ」
「あ……もう聞いたような気になっていたものですから」
「それが、君の力なんだね……会って正解だったよ」
「二月……ですか?」
「そう、天皇じきじきの願いでね」
「ですか……」
「なにか不安でもあるのかい?」
「准将のお考えに似ていますが、少し違います」
「どういうことかね?」
「GHQが認めたのは。物理的に陛下のお姿を国民の目にさらすためです。天皇とは、こんな貧相な中年男だったと。そして石の一つも投げられればいい……でしょ?」
「言っておくが、これを言い出したのは天皇自身なんだよ……君の心配は分かる。行く先々で天皇が酷い目に遭うことが心配なんだね。ミナコはいい子だ」
「そうじゃ、ありません。『オズの魔法使い』に、シャ-リー・テンプルじゃなくて、ジュディーガーランドを起用したよりも正解です。アメリカの子供たちは夢中ですものね」
「彼女は、これでスターになったんだもんね」
「大きな違いは、ジュディーガーランドは演技ですが、陛下はそのまま、あるがままです。国民は、そんな陛下を熱烈に歓迎します。イタリアのエマヌエレ国王のようなわけにはいきません」
「誤解しないで欲しい。天皇の力は、たった一日で戦争を終わらせたことで十分知っているよ。ただコミュニズムの影響も無視できないからね」
「准将がご存じなのは、ヨーロッパの王室です。日本は違います」
「どうちがうのかね?」
「イギリスを筆頭に、ヨーロッパの王族の方々は容姿端麗で、スピーチをされても一流です。ユーモアの感覚も。日本の皇室は、その点、まるでダメです」
「ハハ、上げたり下げたり。君の話は興味深いよ」
「ヨーロッパの王族は、基本的に国民と対立した存在です。例えば、イギリスの国王が議会に出るときは、議会は人質を王室に預けます。でしょ?」
「よく勉強しているね」
 勉強なんかじゃない、ミナコの心には、相手が思ったことが、そのまま読み取れる。准将は、一歩先で同意されているようで、心地よかった。
「日本の皇室は、この二千年近く、民衆と対立したことは一度もないんです」
 准将は、なにか閃いたような表情をした。
「あ~あ、答を教えたようなもんですね。あなたは、憲法草案を作るにあたって、今のをアイデアにしようと思いましたね。まあ、ソ連なんてのもいますから、いい落としどころにはなりそうですね。分かりました、お引き受けします」
「え、なにを?」
「陛下のご巡幸に付き添って、日本国民の本当の反応が知りたいっておっしゃるんでしょ?」
「あ、ああ、そうだ。よろしく頼むよ」
「こちらこそ」
 ミナコは、にこやかにホイットニー准将と握手した。

 その時、ドアがノックされ、副官を連れただけの男が現れた。

 マッカーサ-元帥!

 思わず、ミナコは起立してしまった……。

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高校ライトノベル・🍑MOMOTO🍑デブだって彼女が欲しい!・40『時計が12時を打つまで』

2019-02-15 06:37:50 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!

40『時計が12時を打つまで』


 試してみたら成功した。

 妹とはいえ、素っ裸で現れてはたまらないので、ベッドの中にジーパンと厚手のセーターを入れておいた。
 出現したら「それを着ろ!」と言うつもりだった。少なくとも素っ裸で出現されることを嫌がっているという意思表示にはなる。

「もう、なによこれ!?」

 出現した桃は、最初に文句を言った。桃はジーパンとセーターを着た姿で現れた。どうやら服を置いておけば、身に着けた姿で現れるようだ。
「裸で出てこられたらかなわないからな」
「意識しすぎ! 素肌にこれじゃ、チクチクして気持ち悪い」
「あ、それもそうだな」
 オレは、起き上がると、桃の部屋に行って下着をとってきてやった。戻ってみると桃の姿がない……桃は、オレがいっしょにベッドに居なければ実体化できない。ベッドに潜り込むと、すぐに現れる。
「あの……」
「早く着ろよ。こっち向いててやるから」
「ベッドの中で、ジーパンというのがね」
「注文が多いなあ……」
 もう一度桃の部屋に行って、パジャマをとってきてやる。
「ほれ」
「ありがとう」
 礼を言うと、オレの背中でゴソゴソやって、ジーパンとセーターを放り出した。
「桃さ、どうせなら、お袋のとこなんかに現れてやったらあ。きっと喜ぶぜ」
「ダメなんだよ。お兄ちゃんのところにしか出てこられないの」
「じゃ、前みたいに、姿だけってのは? あれなら、どこにでも出てこられるし、壁とかも素通りできるじゃんか」
「それだと、こんなふうに温かみとか感じられないし、触ることもできないよ」
「ちょ、触んなよ!」
「嫌がんのって、生きてる人間の傲慢だよ」
 傷ついた声で桃が言う。
「そうなのか……」
「お兄ちゃん……」
 桃は、ピッタリと背中に貼りついてきた。互いのパジャマを隔てているだけなので、裸で抱き付かれているのと大差ない。
「こっち向いて、ギューってしてくれるの……だめ?」
「そ、それは勘弁してくれ」
「……分かった」
 そう言うと、腕と脚を大きく回して、オレの背中を抱え込むように密着してきた。桃のあちこちのデッパリを背中に感じる。
「あ、あのう……」
「……ん?」
「紀香のソックリが戻って来たんだけどさ。なんか情報ないかな、こないだみたいに」
「……こうやって実体化するのってエネルギーがいるの。前みたいに情報とってくるのはむつかしいんだ」
「そ、そうか」
「ごめんね」
 オレは腕を回して、桃のお尻をホタホタと叩いてやった。

 時計が12時を打つのを6っつまで聞いて眠りに落ちた。
 

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