大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・クリーチャー瑠衣・3『瑠衣の覚醒』

2019-02-19 07:19:04 | 小説3

クリーチャー瑠衣・3
『瑠衣の覚醒』



Creature:[名]1創造されたもの,(神の)被造物.2 生命のあるもの 


『都立希望野高校校長 人事異動内示書の違法公開!』『許せぬ民間人校長のパワハラ!』

 そんな見出しが各紙面のトップに踊っていた。報道各社は、いっせいに都庁二号庁舎にある都教委と学校に押し寄せた。
 瑠衣は都教委の廊下で待っていた。すでに廊下にはテレビ局や新聞社の記者で溢れている。
 やがて、校長が緊張した顔で記者たちにもみくちゃにされながら階段を上がってきた。
 途中まではエレベーターを使っていたが、狭いエレベーターの中で、記者たちに質問攻めにあうことに耐えられず、校長は発作的にエレベーターを降り、十五階分階段を上がってきた。記者たちも同時にエレベーターを降り、体育会系バラエティー番組のように、一気に十五階を校長を囲む集団で取り囲みながら上がってきた。
「校長、極秘であるべき内示書を何十枚もコピーして職員室で撒いたんですか!?」
「内示書が、極秘扱いになっていることはご存じだったんですよね?」
「パワハラになるという自覚あったんですか!?」
「内示書の中には個人情報が含まれてますよね!?」

 校長は、記者たちの質問には一切答えず、教委に指示されていた会議室へと向かった。

 校長は、嘘の答弁を用意していた。
「大切なものなので、取扱いに注意し、問題は職員みんなで共有しなくちゃなと教頭に話し、教頭はそれを誤解して印刷、職員室に積み上げたもの」
 これだけでは監督不行き届きにしかならない。驚いたことには生徒から集めた教材費をプールし、二重帳簿を作っていた。これは管理職はみな承知のことで、いわば運命共同体であり、教頭にも泥を被せたのである。

 会議室は遮音されていたが、なぜか会話は丸聞こえである。これが自分の力であるという自覚は瑠衣には無かった。

「こ、こ、こ……」
「校長先生、落ち着いてください」
「この件は、普段私の意に従わない教職員への見せしめであり、校長が学校で最高の権威者であることを、みんなに思い知らせるために……」
「正気ですか、校長先生?」
「え、あ、いや……」
 校長は狼狽したが、思ったことがそのまま口に出てしまう。
「内示書の中には、とても重要な個人情報が含まれています。年齢や履歴、さらに指導専従という記載のある先生は、それだけで本人が隠していた国籍まで分かってしまいますよ」

 瑠衣は意外だった。あの内示書には本名そのものが書いてあると思っていたから……それは、瑠衣の能力が高く、そこまで深く読んでしまったということが分からなかった。
「本日付で、休職していただきます」
「え……休職?」
「これが最終決定ではありません。事の重大さと、今の先生の答弁は予想を超えて問題があります。教育委員会に諮り、以後の措置を検討します。別命あるまで自宅で待機なさってください」

 その後、校長がマスコミから、ほとんど非難と言っていい取材に晒されたことは言うまでも無い。

 校長は方がついた……そう思った瞬間瑠衣は、学校の英語科準備室に瞬間移動してしまった。目の前に岸本先生がいる。
「岸本先生」
「わ、なんだ立花、いつの間に入ってきたんだ!?」
「先生、内示書見ましたね」
「あ、ああ、職員室に無造作に積んであったからな。なにか問題でもあるのか、あれを公開したのは校長だぞ」
「そのことはいい。先生は、あれを見て高坂先生が外国籍だということに気づいて、心変わりしたでしょう」
「そ、それは」
「高坂先生がどれだけショックだったか分かる!?」
「そんな、オレの責任じゃ……」
「先生にも、高坂先生と同じ目に遭ってもらう……」

 岸本は校舎の外階段の最上部まであがり、そこから飛び降りた。

 

 グシャ

 


 瑠衣は、そこで愕然となった。
「なんて、恐ろしい力……!?」

 瑠衣が、自分の力が覚醒したことを自覚した瞬間であった。

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高校ライトノベル・時かける少女・14『ピンチヒッター 時かける少女』

2019-02-19 07:08:59 | 時かける少女

時かける少女・14
『ピンチヒッター 時かける少女』
       




 東京タワーが見えたのは一瞬だった。

 その次ぎに紺色の服と帽子が真下に見えたような気がして、意識はそこで途切れた。
 気がつくと病院のベッドだ。

「看護婦さん、看護婦さん、この子意識がもどりましたよ!」
 知らないオバサンが、ナースコールで看護婦さんを呼んでいた。
「よかったわね、うちの子も、さっき峠を越したって、先生に言われたとこよ」
 横のベッドを見ると、頭をネットにくるまれ、あちこちチューブに繋がれた男の子が横たわっていた。

「こりゃあ、ちょっと時間がかかりますね。いいんだよ、無理に思い出そうとしなくても」
 お医者さんが、そう言った。

 わたしはミナコという名前以外は、なにも覚えていない……と、いうことになっていた。
「すみません。今は何年ですか?」
「ああ、平成五年、1993年だよ。なにか思い当たるのかい?」
「え……いいえ、なんにも」
「きみね、いきなり空からオレの頭に降ってきたんだよ」
 首を揉みながらお巡りさんが、不満そうに言った。
「空はおおげさよ。空だったら、宮田さん今ごろ命ないですよ」
 女性警官の人が、おかしそうに、宮田というお巡りさんに言った。
「そうだよ。この子の怪我もこんなもんじゃ済まない。推定でも、落ちてきた高さは二メートルは超えないよ」
「でも、渋谷のハチ公前ですよ……空はともかく、とにかく上からなんですよ、真っ直ぐに」
「そこなんだよね。車の上からとか、胴上げされて、あやまって落ちてきたんなら、もっと斜めに落ちてくるはずなんだけどね。状況的には真上、それも二メートル以下としか考えられん」

 そのとき、女性警官の無線に連絡が入った。

「はい、沖浦……あ、防犯ビデオに写ってましたか……え、そんな……こちらは意識は戻りましたが、記憶が……ええ。なにか分かりましたら連絡します。以上」
「なにか、分かったんですか?」
「この子が落ちてくる瞬間が、広場の防犯カメラに写ってたの……でも、宮田さんの頭の直ぐ上に現れて、直ぐに落ちてきたんだって」
「そんな……」
 お巡りさんと、お医者さんが同時に声を上げた。
「悪いけど、あなたの持ち物調べさせてもらったわ。カバンの中から、着ている服まで」
「あ……」
 わたしは、病衣の下に、なにも身につけていないことが分かって、ドキッとした。覚悟はしていたが、やっぱり、ガチ恥ずかしい。
「その制服は、どこの制服でもない。『女子高制服図鑑』の編集まで確認とったけど無し。メーカーにもあたったけど、その制服は作ってないって。靴や、下着まであたったけど、どのメーカーも作ってない。その時計に至っちゃ、メーカーも存在しない」
「最大の謎が、この携帯テレビみたいなの。わたしは新型のゲーム機かと思ったんだけど、電源入れてもロックされてんのよね」
「ちょっと貸してください」
 わたしは、なかば無意識で、それを受け取って画面を開いた。マチウケにしているアイドルの上半身が出てきた。この子が生まれるのは、まだ十ヶ月先だ。
「うわー、きれいね。画面も写っている子も!」
 沖浦さんが、女性らしい好奇心を示した。
 わたしは、アイドルの子の顔を二回クリックした。

 そのころ、富士の演習場では、自衛隊の総合火力展示演習がおこなわれ、メインのMBTの90式戦車が五両集まって千メートル先の的を目がけて、実弾射撃をしていた。
「てっ!」
 指揮官の号令のもと、二発目が五両の90式戦車の砲口から撃ち出された。
 そのうちの四発は無事、見事に目標を破壊したが、一発が、なぜか、土煙もあげなかった。不名誉なことではあるが、不発弾と、その時は判断された。

 同時刻、乃木坂に近い青山通りを走っていたセダンが大爆発を起こし、バラバラに吹き飛んだ。

 そのときは、この二つの出来事を結びつけて考える者はいなかった。

「ミッション成功……」

 ミナコは、表情にも出さず、そう思った。だが、その記憶は十秒後には自動的に消去された……。

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高校ライトノベル🍑MOMOTO🍑デブだって彼女が欲しい!・44『コホン!』

2019-02-19 07:02:17 | ノベル2

🍑・MOMOTO・🍑デブだって彼女が欲しい!

44『コホン!』


「「「「「「「「「「「「「「起立! 礼!」」」」」」」」」」」」」

 最後のあいさつが終わって、クラスが解散になる。三学期の終業式は格別だ。
「紀香、持ってやるよ」
 大輔が、紀香の荷物を持ち上げた。
「悪いわよ」
「いいよ、オレ自分のは昨日もってかえったから」
「で、でも」
 遠慮した紀香の手が荷物に伸びる。ほとんど息がかかりそうな近さに、大輔の頬が染まる。ご丁寧に、紀香の手は大輔の手に重なっている。
「いいからいいから」
「そ、そう……じゃ、おねがいね」
 そう言うと、紀香は通学カバンだけ持って、大輔の横を歩いて下足室のある一階に下りて行った。
 廊下も階段も、ホームルームが終わって下校する生徒でごった返している。ぴったり寄り添っていても不自然ではない。
 後ろから来た生徒が、追い越しざまに紀香の肩にぶつかった。
「キャ」
 かわいく叫んで、紀香は大輔の腕に掴まる。大輔の胸がキュンとしたのが後ろからでも分かる。

 そこで、オレは二人から距離をとった。もう、関わるのは止そう。

 110キロの腹を持て余しながら靴を履くと、後ろから声を掛けられた。
「百戸君」
 振り返ると、至近距離に紀香の顔があった。たった今の決心が吹き飛んでしまう。

「分かってると思うけど、あたしに関わるのは止めてね。あたしも組織も完璧だから、見破られることはないけど、嗅ぎまわられるのは疎ましいから」
「分かってるよ2号」
「2号じゃない、紀香よ」
「待てよ」
 踵を返した紀香2号の腕をつかんだ。
「こういうことを言ってるの、止めてって」
「オリジナル紀香はどうしたんだ?」
「あたしたち、みんなオリジナルなの」
「クローンだからな。でも、オレが言ってるのは持久走で救けた紀香だ。おまえを救けた憶えはないからな」
「生きてるわ。それ以上は言えない」
「仕草とか距離の取り方は、すごく上手いけど、目が生きてない。そのうちバレるぞ」
「バレない。ほら、百戸君と喋っているだけで……」
 下足室の出入り口で、大輔が怖い顔をしている。どうやら紀香の作戦に乗せられてしまったようだ。大輔が不審に思うことはないだろう。
「ごめ~ん大輔、いっしょ帰ろ。マックとか寄りたいなあ……」
 鼻にかかった声、大輔の目がへの字になる。
――やられたな。関わらないって決めたのにな――

「コホン!」

 真後ろで咳払い。
 振り返ると、桜子が怖い顔をして立っている。

 もう金輪際、あいつには関わらないと誓いなおすオレだった。


 

 🍑・主な登場人物

  百戸  桃斗……体重110キロの高校生

  百戸  佐江……桃斗の母、桃斗を連れて十六年前に信二と再婚

  百戸  信二……桃斗の父、母とは再婚なので、桃斗と血の繋がりは無い

  百戸  桃 ……信二と佐江の間に生まれた、桃斗の妹 去年の春に死んでいる

  百戸  信子……桃斗の祖母 信二の母

  八瀬  竜馬……桃斗の親友

  外村  桜子……桃斗の元カノ 桃斗が90キロを超えた時に絶交を言い渡した

  三好  紀香……クラスメートの女子 デブをバカにしていたが様子が変

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