大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・177『夕べの紅顔 朝(あした)の白骨』

2020-11-08 13:26:53 | ノベル

・177

『夕べの紅顔 朝(あした)の白骨』さくら   

 

 

 夕べの紅顔 朝(あした)の白骨……て知ってる?

 

 子どものころに、お祖父ちゃんが本堂で檀家さん相手に法話をしてるのを聞いてびっくりした言葉。

 夕べに頬っぺたが赤々するくらいに元気やった者が、朝方には死んで白骨になってるという例え話で。

 テーマは『この世の無常』です。

 つまり、世の中一寸先というか一秒先は分からへんということ。

 子どものわたしは、コウガン言うのを別の意味に思てて、ひとり真っ赤な顔をしてた。

 キン〇マが白骨になる!?

 白骨になるということは、骨が入ってるわけで、お父さんとお風呂には行ったときシゲシゲと見て面白がられた。

 

 詩(ことは)ちゃん、どないしたん!?

 

 学校終わって山門の前まで帰って来ると、ちょうど向こうから帰って来る詩ちゃんと出くわしてビックリした。

「え?」

 自覚のない詩ちゃんはマスクの上の目ぇでビックリした。

「マスク、血ぃだらけ!」

 詩ちゃんがかけてるマスクの真ん中へんが真っ赤に染まって、なんや日の丸みたいになってる!

「え、あ……」

「ちょ、詩ちゃん!」

 マスクを外して、真っ赤になってるのに気ぃついて、フラ~っと気絶しそうになる!

「こ、詩ちゃん! ちょ、だれか、だれか来て! 詩ちゃんが、詩ちゃんが!」

 詩ちゃんを支えながら、うちは山門の中に向かって呼びかけた。

 すぐに、庫裏の方からお祖父ちゃんとおばちゃんが出てくる気配。

 広い境内や言うても街のお寺、十秒もかからんと山門にこられるはずやねんけど、顔色真っ青の詩ちゃんを支えてるうちは、めちゃめちゃ長く感じた。

 今朝、朝ごはんの時はうちの方が元気なかった。

 中学生のくせにと思われるかもしれへんけど、ネットで大統領選挙のあれこれ見てるうちにパソコンの前で寝てしもて、お布団に入ったのは午前五時ごろ。

 二時間も寝てへんので、もうヘゲヘゲで、規則正しい生活を心がけてる詩ちゃんに「ちょっと、大丈夫?」と心配されたぐらい。

 お祖父ちゃんとおばちゃんが来てくれるまでに、妄想が頭の中を駆け巡る。

 先月、美人の女優さんが自殺しはった……アイドルの女の子が真っ青になったかと思うと半日後には死んでしもた……一晩で優勢やったトランプさんが負けそうになってる……夕べの紅顔 朝の白骨……

「詩(ことは)、どうしたの!?」

「はよ、寝かさなら、お祖父ちゃんが背たらうわ」

 お祖父ちゃんが詩ちゃんを抱える。

「大丈夫、詩ちゃん?」

「あ、あ……ごめんなさい、血を見たら気が遠くなって……」

 三人で詩ちゃんをリビングのソファーまで運んで寝かせる。

「いや、大したことじゃないの……部活で唇切っちゃって……後輩に慣れないトランペット教えてたら、高音出したとたんに……あ、また……」

 きれいな形した下唇から、また血が湧きだして、おばちゃんがタオルで押さえにかかる。

「今は、喋らない方がいいわよ」

「ぐ、ぐめんなさい……」

 それだけ言うて、詩ちゃんは目ぇつぶっておとなしなった。

 美白美人の詩ちゃんが白い顔して寝てると、なんや、めっちゃ心配になってくる。

 白血病やったっけ、出血したら止まらんようになってしまう病気。

 マンガとかラノベやったら、そういうヒロインは不治の病に侵されて……あかんあかん、なにを縁起でもないことを。

 で、けっきょく詩ちゃんはあくる日は学校休むことになった。

 それで、詩ちゃんが引き受けてたお寺の用事をわたしが引き受けることになった……という前置きの話でした(;^_^A。

 

 

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まりあ戦記・034『ドカーン!』

2020-11-08 06:05:47 | ボクの妹

戦記・034
『ドカーン!』     

 

 

 カルデラは灰神楽が立つような騒ぎになった。

 文字通り灰神楽のような煙が五か所から立ち上り、最後の一か所は首都大学理学部の薬品庫を直撃されたもので四日目だと言うのに鎮火していない。
 どうやら学内で違法な薬品研究をやっていたようで、初期消火に使われた化学消火剤が裏目に出て予期しない小爆発が続いている。

「ウズメの迎撃のせいではありません、ええ、迎撃は成功しています、ええ、ですから……」

 被害状況の確認に来たみなみ大尉は、大学関係者やマスコミや野次馬の市民に囲まれて、調査そっちのけで対応に追われてしまった。
「人的被害が無かったのが不幸中の幸いだけど、こんな被害を招いたのは特務旅団の責任だろ!」
「いえ、だから……」
「ヨミの脅威は無くなったんじゃないんですか!?」
「そんなことは……」
「だいたい、ウズメなんて危ないものを持っているから、ヨミの攻撃を受けてしまうんじゃないのか!」
「そうだ、こないだウズメのパイロットは死亡したはずなのに、また出動したというのはどういうことなんだ!」
「それについては……」
「ひょっとしてウズメというのはAIで、パイロットなんてダミーだったんじゃ?」
「ウズメなんてのが、そもそも危険なんだ!」
「この被害が、なによりの証拠だ!」
「だから、あ、ちょっと掴まないでください!」
「ちゃんと答えろよ!」
「ちょ、掴まないで!」
 ベリッ! プツン!と音がして、みなみ大尉の軍服の袖が破れ、ボタンが飛んでしまった。バランスを崩してしまったが、ここで倒れては群衆に踏み殺される、先日まりあになりきっていたマリアが学校に押しかけた群衆に、あわや焼き殺されそうになったことを思い出した。もっとも、この現場に駆け付けた時点で不測の事態を予見したので、助手の佐倉伍長は乗って来た車といっしょに帰してある。

――この人たち目つきがおかしい!――

 直感した大尉は、袖を掴んでいた大学職員の肩を掴むとジャンプして群衆の肩や頭の上を跳躍、一か八かで焼け残った倉庫の屋根に飛び移った。
「逃げたぞ!」「追え!」「殺せ!」「八つ裂きにしろ!」
 群衆は互いに焚きつけるようにして倉庫の周りを取り囲んだ。
「これを積んで火をかけろ!」
 あろうことか消防隊員が率先して燃え残りの瓦礫を倉庫の周りに積み始めた。
――万事休す!――
 大尉は、屋根の上に寝っ転がると、タイトなスカートをたくし上げて、両足を傾いた時計塔に向けた。
――生還の確率10%ってところかな……――

 ドカーン!

 太ももに手を伸ばしたところで、時計塔の真ん中が爆発して急速に傾き始めた。
 時計塔は、こちらに向けて倒れてくる。群衆は、ザザっと倉庫から離れた。

 みなみ大尉!

 声が空からかかった、と思う間もなく両足を掴まれ、大尉の体は逆さまになったまま吊り上げられた。
「ちょ、なんでまりあが空飛んでるのよ!?」
「とりあえず、ここから離れるわよ! しっかり掴まって!」
「ウンショ!」
 掛け声をかけると、大尉はコネクトスーツを着たまりあの背中に掴まり、大学の裏山に飛びさっていった。

 

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ポナの季節・88『陽だまりの五人』

2020-11-08 05:55:49 | 小説6

・88
『陽だまりの五人』
        


 

「どうしてプロにならないんですか?」

 そう聞かれて、SEN48のメンバーは答えにつまってしまった。

 初めての記者会見に呑まれただけではない、そんなこと考えもしなかったのだ。
「えと……二か月前に、やってみたいだけで集まって、気づいたら、ここにいたってのが正直なとこです。これでいいかな?」
 安祐美がメンバーに目配せ、ポナたちは顔を見合わせ、せわしく首を縦に振った。
「なんだか仲良しの小鳥みたいだな」
 若い記者が言うと、温かい笑いがそよそよと会場に溢れた。
「そうなんです、この空気なんです」
 田中ディレクターがニコニコしながら核心に触れる。
「T自動車からCMのお話しがあって、すぐに動画サイトで観たこの子たちに結び付いたんです。この子たちは、ごく自然に学校からはみ出たんです。部活へのアンチテーゼでもなくプロになろうという貪欲さでもなく、好きでやっていることが大勢の人たちの共感を得ました。この自然でゆるい明るさが、T自動車のコンセプトとも合いました。一言で言えば、今のこの空気です。この子たちといると、なんだか春の陽だまりの中に居るような気持ちになるでしょ」
「それで『陽だまりの五人』ですか」

 会場の記者たちは納得し、ポナたちは(?)になった。

「どうしよう、ドキュメンタリーだよ」
「いいじゃん、CM用に撮ったビデオ使うんだから、新しく撮ることはないでしょ」
「それが困る」
「なんで?」
「不細工に映ってるのもん、CMで流れてるのは一瞬だからいいけど、ドキュメンタリーだと尺長いから……」
「ハハハ、笑っちゃうなあ、奈菜」
 ポナが笑うと、他の三人もつられて笑った。
「もう、日本中に奈菜の不細工が流れるんだよ」
「奈菜、自分はおブスだと思ってるの?」
「今は違うよ。自分で言うのもなんだけど、あたし、この一か月で可愛くなった」
「奈菜はもともと可愛いよ」
「そんなことない。あたし最初のころは付いていくのがやっとだった。この一か月でなんとか……」

 歩道の向こうから自転車が走ってきた、それを避けようとしてポナたちは一列になった。

「……奈菜」
 最後尾の奈菜が、そのまま遅れてしまった。
「奈菜、これ見てごらんよ」
 ポナがスマホを手に奈菜の横に並ぶ。
「……なに?」
「この奈菜は?」
「こないだの福島ライブ」
 写メを見せられて奈菜は即答した。
「ブブー。初めての福島ライブのときの!」
「え、うそー、この顔は最近だって!」
「よく見てごらんよ、ここにお婆ちゃん写ってるでしょ」
「ああ、仮設住宅の……」
「お孫さんが亡くなって、お線香あげにいったじゃん」
「ああ、あの……また観に来てくれたんだ」
「ちがうよ……このお婆ちゃん、あの後亡くなったんだ」
「うそ……!」
「だから、これは最初に行った時の。仮設の人たち喜んでくださって、それであたしたちも嬉しくって……ね、奈菜は最初から可愛くてカッコいいんだよ」
「そうなの……」
「そうだよ」
「そうなのよ」
 前を歩いていた三人がポナと奈菜が遅れているのに気付いて、それが可笑しくてコロコロ笑いながら戻ってきた。二人もなんだか可笑しくなってコロコロ笑う。

 どんより曇って肌寒の街だったが、五人がいる歩道の上は、そこだけがまるで陽だまりのような温もりだった……。


☆ 主な登場人物

父      寺沢達孝(60歳)   定年間近の高校教師
母      寺沢豊子(50歳)   父の元教え子。五人の子どもを育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員、その後乃木坂の講師、現在行方不明
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母
平沢夏   未知数の中学二年生

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かの世界この世界:126『荒地の万屋』

2020-11-08 05:39:49 | 小説5

かの世界この世界:126

『荒地の万屋語り手:テル            

 

 

 それは荒地の万屋だった!

 

「「「「「ペギー!」」」」」

 みんなの声が揃った。

「いやあ~、あんたたちだったのか!?」

「ペギーさんて、魔法が使えるの!?」

「いやはやいやはや……」

 ペギーは目をまん丸くして慌てたペンギンのように両手をパタパタさせた。

「あんたたちは大得意さんのカテゴリーに入ったみたいだねえ」

「大得意?」

「ああ、大得意さんになるとね、ピンチの時は転送されるんだよ。さあてっと……ここはヘルムの島……神域の入り口に差しかかったところだね……それも、かなり深刻だ。神域が俗域と分断されてしまっているよ」

「分かるんだ」

「伊達に荒地の万屋やってないからね……おやおや、これから大変な戦いになろうって言うのに戦車を金ぴかに塗っちゃダメでしょ」

「金ぴかに塗ったんじゃなくて、金ぴかのピカ抜きにされたんだ」

「ピカ抜きの……って、この戦車、ゴールド!?」

「ああ、主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士であるわたしでも使えぬ錬金魔法だ」

「……純度99.6」

 さすがは荒野の万屋、一瞥しただけで純度を見抜いた。

「でも、純金の戦車ってダメなんだぞ、重くて柔らかすぎて使い物ならないんだぞ」

 ロキが仕入れたばかりの知識をひけらかす。

「ああ、そうだ。そういう相手だから、子ども二人は連れて行ってもらえないというところかねえ」

「ああ、我々の武器も純金に変えられてしまって、使い物にならない」

「それで、わたしが転送されたというわけなんだなあ」

「そうか、ちょっと品物を見せてもらおうか」

 やっと、我々も思い至ってペギーの品ぞろえを見せてもらうことになった。

 わたしは勇者の剣、タングリスは魔弾のワルサー、ブリュンヒルデは賢者のシュシュ、そして、それぞれのレベルに見合った魔法の福袋。

「支払いはカードでいいか?」

 タングリスがカードを取り出すと、ペギーは困った顔になった。

「悪い、転送販売はカード使えないんだよね……」

 三人とも手持ちのギルはそんなにはない。ギルや経験値を稼げるバトルはシュネーヴィットヘンに乗船している時にパラノキアの巡洋艦と戦って以来やってないのだ。

「そうだ、戦車の装具を一ついただけませんか、小さなのでけっこうです。なんたって純金なんだから」

「そうだ、それがいい」

 グルッと見渡して、予備キャタピラ一枚で手を打つことになった。

 しかし、一枚で十キロを超える重量の純金キャタピラだ。リボ払いまで完済したがおつりが大変だ。

「じゃ、いろいろアイテム付けとくから、残りは、次会ったときということで……」

 回復系やプロテク系のアイテムをしこたまもらった。

「それじゃ、みなさんなのご武運を祈ってるわ。怪我しないようにがんばってね!」

 やっぱり商売人、取引が成立すると嬉しそうに立ち上がった。

「ペギーさん、どうやって帰るの?」

 ケイトが根源的な質問を投げかけた。

「そりゃ、もと来た道を……あれ?」

 そう、ここはヘルム本島から突如切り離された神域の島。

 ペギーが現れた空間のシミのようなものも消え失せて、帰れなくなってしまったのだ。

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 その他いろいろ 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

 

 

 

 

 

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