大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

まりあ戦記・036『司令の事情』

2020-11-10 06:26:01 | ボクの妹

戦記・036
『司令の事情』   




 首都大が……

 そう言いかけて、みなみ大尉は吹き出してしまった。

「まずいところを見られてしまったな」

 司令の声は異様に小さい。
 小さいはずである、デスクに収まった司令は呼吸をしているだけの抜け殻で、喋っているのはカップ焼きそばのカップの中でお湯に浸かっている体の一部だからだ。

「どう見ても十八禁ですね」
「それを見て笑うのは君ぐらいだがね」
「以前は、この姿は絶対、人には見せませんでしたよね」
「くだらん作戦会議のあとは風呂に入るのに限るからね」
 司令はカップ焼きそばの風呂の中で大の字になってプカプカ浮いた。
「お背中流しましょうか?」
「すまん、頼むよ」
 大尉はデスクの上の綿棒を持って、司令の背中を流してやった。
「司令こそ有機義体に乗り換えてみては?」
「この姿だからこそ非情になれる。非情でなければ司令なんぞは務まらんからな……もう少し強くこすってくれんか、体中凝りまくってるんでな」
「なけなしの理性が飛んでしまいますよ」
「……これだけが無事に残ったと言うのも不便なものだ、個人的には、ヨミの最初の出現で死んでいたらと思うよ」
「で、お話なんですが」
「あ、そうそう、大尉が司令室まで来るんだ、さぞかし重要なことなんだな?」

 風呂からあがり、特製のバスローブを羽織りながら話を続ける。

「首都大の薬学部、ちょっと問題なんじゃないかと思うんです」
「市民や学生の反応は度を越していた……と言うんだね」
「大学構内に被害が出たとはいえ、まりあの助けが無ければ命が無かったかもしれません」
「まりあのスーツに飛行機能を付けておいて正解だった」
「あの大学、なにかあるんですね?」
「ああ、ちょっとね……ん?」
「どうかしたんですか?」
「義体に戻ろうと思うんだけど、義体が動かない」

 義体への出入りは義体にプログラムされたメモリーで行われるのだが、義体は電池の切れたロボットのようにカタカタいうだけだ。

「わたしがやりましょうか?」
「あ、いや……」
「恥ずかしがる歳でもないでしょ、手袋しますし」

 そう言うと、大尉は司令を掴んで義体本体に戻してやった。

「やっぱり、この方が話をするにはいいな」

 義体が人らしい表情を取り戻し、いつもの司令らしく冷たい表情で大尉に目を向けた。

「あの……チャック閉めたほうが」
「あ、すまん」

 マジメな顔でチャックを閉める司令は、見ていてギャグそのものなんだけど、大尉は笑わなかった。

「大学でやっているのは何なんですか?」
「鎮静ガスだよ」
「鎮静ガス?」
「ヨミとの戦いは先が見えない。都民の間には不安やら不満が高まっていて、いつどんな形で暴発するか分からない」
「お気づきだったんですね」
「ああ、カルデラで隔てられていて、一見首都は平穏に見えるがね、潜在的には不穏だ。昨年のハローウィンが異様に盛り上がったのは覚えているだろう?」
「ええ、まりあも友だちと仮装して、ずいぶんハジケていましたし」
「ああいうところに現れるんだ、潜在化した閉塞感は、時に、とんでもなく陽気で明るい姿になる。大学の研究者たちは、人々の神経が昂り過ぎないように、鎮静効果のあるガスを流してパニックが起こるのを未然に防ごうと研究をしていたようだ」
「それが上手くいかなかったんですね?」
「マリアがまりあの身代わりになって火だるまにされた時に申し入れはしたんだがね、失敗を認めたくないのか、軍の介入と思われたのか、よけい頑なになってしまってね」
「なにか手を打った方がよくはありませんか」
「アマテラスは静観しろと言っている」
「AIの指示に従うんですか?」

 大尉の目が一瞬険しくなった。

「そんな顔をするな、美人が台無しだぞ」
「この顔は司令がプログラムされたんです」
「やっぱり有機義体にしたほうがいいと思うよ」
「お気に召しませんか」
「気に障ったのならすまん、もう少し考えて答えを出すよ」

 司令は椅子の背もたれに背中を預けると椅子ごとモニターの方を向いた。モニターには修理完了間近のウズメが映し出されていた。

 

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ポナの季節・90『ちょっと大輔くん!』

2020-11-10 06:14:22 | 小説6

・90
『ちょっと大輔くん!』
     


 白い花が一面に咲いている。

 花畑……と思ったが、地面まで白い。よく見ると地面は土ではなくシルクのようにきめ細やかにさざ波だっていて地平線のかなたまで続いている。
――いい香り……この先に何があるんだろう……――
 ミツバチは地面すれすれをドローンのように飛んでいる。

 さざ波は、いつか無限に続くレースのヒダになり、白い花たちともにそびえていって壁のようになった。
 ミツバチは壁に沿って上昇していく。上昇するにしたがって、いい香りはますます強くなっていく。
――この香り……どこかで……――
 記憶をまさぐろうとしたら、白い壁は反り返ってミツバチに迫ってきた。
――ぶつかる……!――
 海老ぞりになって反り返りをかわす。それから横ざまになって壁にぶつからないように飛ぶ。壁は丘を横倒しにしたような丸みになっている。丸みの頂点まで来ると、その向こうにもう一つ丘があり、二つの丘はゆっくりと隆起と沈降を繰り返していることに気づく。
 ミツバチは二つの丘の間の谷間を上昇、香りはますます強くなってくる。
――お、これは……――
 一叢の花々を超えると唐突にペールオレンジの艶やかな壁に変わった。壁はしっとりとした潤いと熱気に溢れていて、ミツバチは上昇を止めホバリングした。
――花畑は、このペールオレンジを隠していたんだ――
 見下ろすと、白い丘は二つのペールオレンジの丘を包んでいるにすぎないことが分かる。眼下に丘の谷間、いい香りはそこから匂い立っている。
――あそこに行きたい……!――
 ミツバチがダイブの姿勢をとったところで声がかかった。

「ちょっと、大輔くん!」

「あ、ポナ…………」
「見とれてくれるのはいいけど、もうじき式だからね」
 ウェディングドレスのポナが頬を染めて言った。
「え……式って?」
「しっかりしてよ、今日は……あたしたちの結婚式じゃないの」
「そうなんだ……ポナ、とってもきれいだ」
「えへへ(〃´∪`〃)ゞ大輔くんだって、タキシード……とっても似合ってるよ」
「え、俺タキシード?」
「そうよ……あ、ネクタイ曲がってる」
 ポナが頬を染めたまま大輔に近寄った。目の下にポナの胸が迫って、さっきの香りが立ち上ってくる。
「……あの、ネクタイ直った?」
「……ねえ、キスの練習しとこ」
「え……」
「だって、大輔くん下手なんだもん。本番で失敗したくないでしょ」
「うん……」
「じゃ……」
 ポナは爪先立ちして目を閉じた。
「うん……」
「ポナ……」
 大輔は両手をポナの頬に添え、間近に唇を近づける……とたんに大輔はミツバチにもどってしまう。
「どうしたの?」
 言われて大輔は人間にもどる。
「なんでもない……じゃ」
「うん……」
「ポナ……」

 もう一度大輔は唇を近づける……再び大輔はミツバチに。繰り返しているうちにアラームが鳴りだした。

「時間がないわ」
「うん……」
「始まっちゃう」
「結婚式」
「ううん、授業」
「授業……?」
「うん、もう先生来てる」
「え?」
「蟹江、起きたら、この問題やれ」
 目が覚めると数学の先生に当てられた。

 大輔は、遠慮していたポナへの電話を半月ぶりにした。


☆ 主な登場人物

父      寺沢達孝(60歳)   定年間近の高校教師
母      寺沢豊子(50歳)   父の元教え子。五人の子どもを育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員、その後乃木坂の講師、現在行方不明
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母
平沢夏   未知数の中学二年生

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かの世界この世界:128『灌木林を進む!』

2020-11-10 06:06:22 | 小説5

かの世界この世界:128

『灌木林を進む!語り手:テル       

 

 

 灌木林の獣道を進む。

 

 灌木とは言っても人の背丈の何倍もあって、その灌木たちはノンノンと葉を茂らせているので薄暗い。

 おまけに低木の枝とか蔓とかも手で避けられる量ではないのでアイテムフォルダーから出した鉈を振り回して道を広げなければならない。

 えい!……えい!……せい!……それ!……

 いちいち掛け声をかけて鉈を振りかぶるが、タングリスはほとんど無言で道を切り開いていく。

「力を入れていては直ぐにバテるぞ」

「ああ、分かるんだけど、声をあげないと力が入らない……せい!」

「そうか、なら、わたしがペースを合わせよう。ひとまず汗を拭け」

「あ、そうだな」

 言われて気が付いた、顎の先から汗がしたたり落ちている。ざっくり拭いてから首にタオルを巻く。ほんとうなら腕まくりをしたいところだが、蔦や小枝で手を傷つけるので我慢する。

「人間は図体が大きくてたいへんだね(^^♪」

 ポチのやつが喜んでいる。

 ポチは1/6フィギュア程度の大きさしかない。枝や葉っぱの隙間をスイスイと飛んでいける。

「ポチの基準で道というのは、こういうのも入るんだ」

「獣道だから仕方ないよ」

 言うことはもっともだ。獣道でないところは下草がハンパでは無くて鉈を振り回しても進めるものではない。

 

 ブイーーーーーン!!

 

 突如、斜め後ろで派手な音がした。

「これだとラクチンであろう🎵」

 ブリュンヒルデがチェ-ンソーを使いだした。

「姫、それはいけません」

「どうしてさ」

「音が大きすぎます、ヤマタに気取られてしまいます」

「気取られて、姿を現してくれたら勝負が早くなるのではないか?」

「こちらから仕掛けるのと、相手から奇襲をかけられるのでは勝率が全然違います」

「そんなものなのか?」

「はい、地味ですがコツコツとお願いします」

「ブリュンヒルデのツィンテールをぶん回せばいいじゃないか。いつだったかのプレパラート戦のときなんか大活躍だった」

「か、髪が汚れるだろ! 葉っぱとか湿ってるし、訳の分からない虫とかもいるし、そんなの付いたらあとの手入れが大変だ」

「口ではなく手を動かして!」

 タングリスのこめかみに青筋が浮く。ポチの力では鉈は振り回せないので、これはブリュンヒルデ一人に言ったのと同じである。

「ンモーーー」

 クリーチャーとの戦いでは大人びた口で冷静に戦闘指揮もできるブリュンヒルデだが、お姫様然とした我儘が出てくる。自分より年下のロキやケイトが居ないこととタングリスというおもり役がいるからこそのことなんだろう。

「ほら、しっかりやれー! フレーフレー! ブリュンヒルデーー🎵」

「ポチも手を動かせ! タングリスも言っただろーがあ!」

「動かしてるもん、ブリュンヒルデ応援するのに手を振ってるよ🎵」

「叩き落すぞお!」

「おっかなーーーい🎵」

「姫!」

「うい」

「ポチも、しっかり進路を警戒しろ」

「らじゃー……まだ百メートルも進んでないよ、まだ五キロはあるよ」

「いつまでかかるか分からんなあ」

 みんなの手が止まってしまった。

「ブロンズフラッシュを使ってみる」

 わたしはスキルを使うことにした。スキルはHPとMPを馬鹿みたいに必要とするが、回復系アイテムもふんだんにある。

「試してもらおうか……」

 わたしは「ブロンズフラーーッシュ!」と詠唱しながら勇者の剣を振った。

 ブリュン!

 ザザっと頼もしい音がして、枝やら木の葉やらが盛大に舞い散った。

 半径三メートルほどの灌木がきれいに薙ぎ払われた。しかし、たったの三メートルでしかない。もう少しいけると思ったのだが。

「ダメだ、我々の進路を暴露するだけだ」

 そうだろう、百回使って六百メートルほどは進めるが、同時に幅三メートルの空白を灌木林に着けてしまうことになって我々の存在を暴露してしまう。

「わかった、わたしがやろう……」

 ブリュンヒルデが俄然大人びた口調になって、ツィンテールのリボンを解いた。

「いくぞ……スプラッシュテール!」

 ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク!

 解かれたテールが数百の枝切ばさみになり人一人が通れるほどのトンネルを灌木林の中に穿って行ったのだった。

 

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・180 マップ:10 金の針:50 福袋 所持金:350000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

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