大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくも・03『フフフフ』

2020-11-19 06:10:58 | ライトノベルセレクト

・03『フフフフ』   

 

 

 例えて言うと合わせ鏡。

 

 鳥居の真下に、わたしは居て、前と後ろにも鳥居がある。

 鳥居は前後にいくつも続いていて無限に続いて小さくなって、鳥居の朱色と夕闇色に溶け込んでいく。

 合わせ鏡と違って、前後の世界にわたしは居ない。

 

 これはヤバイ。

 

 鳥居一つが一つの世界で、一歩でも動いてしまったら別の鳥居に行ってしまいそうで、そうすると、もう元の世界には戻ってこれないような怖さがある。

 ジッとしていよう……

 ジッとしていたら、きっと元に戻れる。うちに帰ってお風呂掃除やって、晩ご飯の時にお爺ちゃんとお婆ちゃんに話そう。こんな不思議なことがあったって、ドキドキしたよって、面白かったよって、そして、夜遅く仕事から帰ってきたお母さんにも話すんだ。やくも、またおかしなこと言ってえ。そう言って笑ってもらおう。そうしたら、もちょっとはほぐれるよ。急に始まった祖父母と娘と孫と、不足のない四人家族。家族なのに血のつながりは無い……あ、あ、これは言っちゃダメなんだ。自然に家族であるためには、そういうさりげない日常会話が必要なんだから。だから、だから元の世界に戻らなきゃ。

 グラッときた。

 足許が揺れた……と思ったら、鳥居が前後にフフフフって感じで動いていく。前から後ろへ、後ろから前へシャッフル、もう、どれが元の鳥居だか分からなくなってしまう!

 フフフフてのは、鳥居が風を切る音……たぶん。スターウォーズでライトセーバー振るとフフフってするじゃない、あんな音。それが、ますます大きく高い音になって、まるで女の子が笑っているような感じになった。

 フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ

 突然女の子が現れた!

「突然じゃないわ」

 怖かったけど声はあげなかった。七つほど前の鳥居だったし、ゆうべテレビで観たアイドルの子と同じコスきてたし、なによりも可愛いし。

「フフフって、ちゃんと可愛い笑い声たててから出てきたでしょ」

「えと、だれ?」

「え……わたしは、あなたよ」

「わたし?」

「うん、わたしって……あなたなんだけど、自覚ないかもしれないけど、こんなに可愛いんだよ」

 ぜったいに嘘だ! もう十年以上可愛いなんて言われたことないもん!

 保育所のころ言われたような気がするけど、大人の社交辞令かわたしの錯覚。

「じゃ、これでどう?」

 その子の目や口元から元気と光が無くなっていき……わたしの顔になった。

 目を背けてしまう。自分の顔なんて、突然には見られない。

 とたんにグラッときて目が回る。

 

 目まいが止まると……もとのお厨子の前だ。

 手に持ったスマホは、自分のキッズスマホに戻っている。

 スマホは時計モードになっていて図書委員の仕事が終わった八分後の時間を示している。

 早く戻ってお風呂掃除しなくちゃ!

 お厨子の前を離れて、庭の角。

 つんのめるように立ち止まって、瞬間お厨子に手を合わせて、それから一目散にお屋敷を出る。

 古いアニメとかだったら、ピューーーー!! って効果音が入りそうな感じでね。

 

 不思議なことに、お風呂はすでに掃除をしたあとみたいに濡れていて、風呂桶やシャンプーやらもきれいに定位置に並んでいる。

 ボンヤリ不思議がっていると、お婆ちゃんがやってきた。

「あら、どこかやり残したの? いいのよ、そんな真剣にお風呂掃除しなくっても」

「あ、わたし……」

 もうすでに別のわたしがお風呂掃除をやったような口ぶりだ。

「おいしい栗饅頭いただいたから、食べよ」

「あ……」

「スィーツは別腹、さ、おいで」

 栗饅頭がスィーツか?

 アハ

 ちょっと笑っちゃったら、いつもの調子に戻って茶の間を目指した。

 

 今日のことは……とりあえず、黙っていよう。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

まりあ戦記・045『――どんなもんよ!――』

2020-11-19 05:51:04 | ボクの妹

戦記・045

『――どんなもんよ!――』    

 

 

 ヨミの狙撃を避けるために、ほとんどトップスピードのまま地上スレスレを飛び回り、指定されたポッドを掠めるようにしてアサルトライフルをキャッチする。

 そいつのアサルトよりもイカツクて、ほとんどウズメの全長ほどもある。

 ちなみに型式は四菱38式、通称サンパチ。

 77ミリ徹甲弾500発、フルオートで速射すれば二十秒ほどで撃ち尽くしてしまう。カートリッジを三つ持てば2000発撃てるが、重量過多で動きが鈍くなるし、リセットの時間が新らしいアサルトをキャッチするよりも時間がかかる。

 本当を言えば内蔵されているパルスを使いたい。レベルは使ったことのないギガパルスも含めて四段階。

 いちいちポッドからキャッチすることもなく連続使用できる。

 しかし、様々な理由から装着武器を使わざるを得ない。

 パルスを使うことによるエネルギーの消耗、わずかに姿勢制御が甘くなり、強力であるがゆえに外れ弾の影響、機体の損耗等々。

 真の理由は、無視できない産軍複合体への思惑……。

 

 食らえ!

 

 カルデラの山腹を蹴った勢いで、ほとんど180度の進路変更をしてヨミとの反航戦に持ち込む。

 彼我の合成速度はマッハ3を超える。

 つまり、アサルトの77ミリ弾は弾速のマッハ2を加えたマッハ5でヨミを捉え、やつのボディーをイカヅチのごとくに叩いて数秒間の行動不能に陥らせる。

 そこでダメ押しのアタックを掛けられればいいのだが、たいてい弾切れになり新しい携帯兵器をキャッチしなくてはならなくなる。

 ドッドッドッドッドッド ドッドッドッドッドッド ドッドッドッドッドッド ドッドッドッドッドッド ドッドッドッドッドッド ドッドッドッドッドッド ドッドッドッドッドッド ドッドッドッドッドッド ドッドッドッドッドッド ドッドッドッドッドッド ドッドッドッドッドッド ドッドッドッドッドッド

 軸線が合ったところで十二連射! 全弾命中!

 そこで弾切れ、逆放物線を描いて次のアサルトをキャッチ。

 今の全弾命中でヨミは三秒は静止している。数発はコアをぶち抜いているので、運が良ければ次で仕留められる。

 キャッチしたアサルトのセーフティーを解除したところで熱線を感じた。

 ズガーーーン!

 続いて衝撃! ヨミのリペア機能が追い付かず爆砕したのだ。

 え……まだ撃ってないぞ?

 三時の方向に首をめぐらすと、そいつが空中でガッツポーズをとっている。

 

――どんなもんよ!――

 ダダダダダダダダダダダダ(^▽^)/ ダダダダダダダダダダダダ(^▽^)/ ダダダダダダダダダダダダ(^▽^)/

 

 そいつはアサルトの残弾を空に向かって打ち上げて、子どものように飛び回っている。

 なんなんだあいつは!?

 

 まだ一発も撃っていないアサルトが、とてもお荷物に感じるまりあであった。 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

かの世界この世界:137『時の女神ヴェルサンディ』

2020-11-19 05:50:38 | 小説5

かの世界この世界:137

『時の女神ヴェルサンディ語り手:ブリュンヒルデ    

 

 

 

 右も左も 上も下も 遠いも近いも 重いも軽いも 前も後も 表も裏も 明るいも暗いも 太いも細いも 短いも長いも

 

 全ての標(しるべ)がグチャグチャになった。

 全てのものが存在して目には見えるが秩序が無くなり、本来あるべき状態では認識できなくなってきている。

 目をつぶるしかなかった。

 目を開けていては、三半規管どころか全ての感覚がおかしくなって気が狂ってしまう。

 気が狂ったブリュンヒルデなんて、ムヘンの流刑地に生息していたヒルのようなもんだ。ヌメヌメとナメクジのようにイヤらしく、ポタリと落ちて来ては人や動物の血を吸っうしか能がない軟体動物。ト-ル元帥に、その名を教えられた時は――我が名からブリュンとデを取ればヒルになる――そんな自嘲的なギャグを思いついた時よりも鬱になる。

 しっかりしろ!

 何度か自分を叱り飛ばすと、それが功を奏したのか、ゆっくりと感覚が戻ってきた。

 

 右と左 上と下 遠近 軽重 前後 表裏 明暗 太細 長短 そして、さっきは意識さえしていなかった自他の区別がついてきた。

「姫、大丈夫ですか!?」

 真っ先にタングリスが飛んできた。

「ああ、他の者は?」

 見回すと、テルもケイトを抱き起し、ロキは自分の背中に乗っているのにも気づかず、キョロキョロとポチを探している。ポチは、まだ少しボケているようで、自分が乗っているのがロキの背中だとは気づかずにキョロキョロ、まあ、いつもの光景だ。

「どうも、動けるのはわたしたちだけのようです。ヘルムの住人は、まだフリーズしたままです」

「ポチ、ちょっと空を飛んで様子を見ろ」

「ラジャー!」

 飛び上がると、自分が乗っていたのがロキの背中であったことに気づいて「ロキ!」「ポチ!」と、二人でハグ。命じたことは瞬間で忘れている。まあ、ざっと見て四号の乗員以外は、ピクリともしない。呼吸している気配さえないが死んでいるのではない、わたしの直感が、そう言っている。直観? なぜだ、なぜ自分の直観を信じるんだ?

 考え続けられるほどには回復してはいない。

「姫、ユーリアが……」

 テーブルの横で伏せていたユーリアがゆっくりと身を起こした。身を起こすと、立った姿勢のまま薄っすらと光って地上一メートルほどの空中に浮きあがった。

「……わたしは、時を司るノルン三姉妹の次女ヴェルサンディです。ヘルムのヤマタから託されて時間を回復しました」

「ヴェルサンディ……ユーリアは時の女神がったのか?」

「いえ、ユーリアの体を借りているだけです。自分の姿を現すほどの力がありません……そう長く、こうもしていられません。要点だけになりますが聞いてください」

 穏やかな中にも凛とした響きがあるので、我々は居住まいを正した。

「時の女神は三人です。姉のウルズは過去の時間を司ります。わたしは現在の時を、妹のスクルドは未来の時間を司ります。姉と妹は眠っているので、回復できるのは、今の、この瞬間だけなのです」

「それで、他の人たちは……」

「過去も未来も止まったままなので、動くことはありません。姉と妹が眠っているのは世界樹の力が弱っているからです。ヤマタも力を失ったいま、完全な時の摂理を回復することはできません。そこで、あなたがたにお願いがあるのです。世界樹の勢いを取り戻すために、この閉じられた時間の中に湧きだすクリーチャーどもを退治してください。退治しつつ世界樹をを目指してください。それと……わたしが借りてしまったために、わたしが去ってもユーリアはあなたたち同様です」

「同様とは?」

「ユーリアは、この停止した現在に覚醒しています。ひとり、このヘルムに置いておくのは不憫です。姉と妹が目覚め、過去と未来が回復するまで行動を共にしてやってください、それから……ああ、もう戻らなければなりません……ユーリアを……世界樹をよろしく……」

 フッと力が抜けるようにヴェルサンディが消えると、地上一メートルのところから、ユーリアの体はドサリと落ちてしまった。

「あいた!」

 お尻から落ちたユーリアは、痛さのあまり口がきけない。

「大丈夫か!?」

 一番近くのロキが声をかけて、テルとケイトが介抱する。

 その間、わたしとタングリスは考えた。定員いっぱいに乗っている四号に、どうやってユーリアを乗せたらいいのかと……。

 

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする