大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・185『ノンコが……』

2020-11-18 15:39:07 | 小説

魔法少女マヂカ・185

『ノンコが……』語り手:マヂカ    

 

 

 ちょっと困った。

 

 ノンコが陰でコソコソ言われるのだ。

「まあ、お下品」「むき出しでいらっしゃいますこと」「ちんちくりん」「お足りないのでは」「黙っていればお可愛いのに」 など他にも色々……。

 わたしは根っからの魔法少女なので、女子学習院に見合った立ち居振る舞いなど造作もないんことなんだが、ノンコは、つい昨日までは令和の時代の普通の女子高生だった。

「ごきげんよう」という学習院女子としての当たり前の挨拶もぎこちないし、背筋をまっすぐにして座ることもできなくて、朝から五回も注意されるし、面白ければノドチンコまで剥き出しに笑うし、授業がつまらないとあっさり寝てしまうし、まだ昼休みにもなっていないのにお腹の虫が鳴ってしまうし、その一つ一つが庶民じみていて、クラスメートの笑いにタネになってしまう。

 まあ、令和の時代のようないじめを受けるわけではないんだけど、霧子も気にし始めている。

 霧子は勝気な子なので、このままでは、そういう子たちに何かしかねない。

 わたし達の任務(納得して引き受けたわけではないけど)は霧子が無事に学校生活を送れるように気を配ることだ。任務の相棒であるノンコがハミられたりイジメられているようでは話にならない。

 前回にも言ったけど、小さな原因はノンコの苗字にある。

 華族と言うのは狭い社会で、学習院の生徒ともなれば『野々村』という姓の華族は存在しないことを知っているのだ。華族というのは、元の貴族、大名、大名クラスの武士、維新の元勲と決まっている。口にこそ出さないが野々村などと云う苗字は「どこの馬の骨」とか思っているし、ノンコの立ち居振る舞いが、それを裏付けてしまっている。

「教室の様子おかしくないこと?」

 三時間目が終わると、霧子はわたしに話しかけてきた。

「ああ、あれは国史の先生のせいよ(^_^;)」

「前田先生?」

「だって、家康のことを『タヌキ親父』っておっしゃったでしょ」

「あ、うん。門切り型だけど、特徴を捉えているわ」

「でも、徳川さんと松平さんにはご先祖の『神君』なのよ、きっと顔を赤くして俯いていたのよ、それが可笑しくて……」

「え、そうなの? ご先祖に対する畏敬の念はわたしにもあるけど、授業で習う歴史的な事実は別でしょ?」

「世間の女学生と言うのはそういうものなのよ。霧子さんのように恬淡(てんたん)としていられるのは、まだまだ先進的な例外だと思うわよ」

「そ、そうかな(n*´0`*n)」

「ええ、だから、そっとしておいた方がいいわ」

「そ、そうね」

 霧子は勝気で正義感の強い子だけど、やっぱり華族のお姫様。ちょっとプライドを刺激してやれば気休めにはなる。

 しかし、こんなことが四時間目を超えて続くようなら、こんな説明では済まなくなるだろう。

 いっそ、ノンコに魔法をかけて体調不良とかにして保健室に送ってしまうか……いや、順序としては、まず本人に話しておくことからだろう。

 ノンコには自覚が無いだろうから気休めにしかならないかも……と思いながらノンコの席に向かったところで、始業の鐘が鳴ってしまった。

 カランカラン カランカラン カランカラン

 仕方がない……つぎは古典の授業か。

 

※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員

要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 

野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員

安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長

来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令

渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る

ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員

ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 

春日         高坂家のメイド長

田中         高坂家の執事長

虎沢クマ       霧子お付きのメイド

松本         高坂家の運転手 

 

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やくも・02『お屋敷の中へ……』

2020-11-18 07:03:53 | ライトノベルセレクト

・02『お屋敷の中へ……』   

 

 

 お風呂掃除をかってでた。

 

 お爺ちゃんもお婆ちゃんも、お母さんだって「なにもしなくていいよ」と言ってくれた。

 でも、こんなに立派な家に住まわせてもらって、何もしなくていいというのはかえって気づまりだ。

 それで、頭をグルンとめぐらせて「お風呂掃除をやらせて」と頼んだんだ。

 お風呂掃除なら学校が終わった夕方で間に合う。庭とか家の周りの掃除も考えたんだけど、近所の人と顔を合わせたくなかったし、外回りの掃除は雨が降ったら大変だ。お風呂ならお天気に左右されないし、毎日同じダンドリでやればいいんだし。

 でも、お爺ちゃんが晩ご飯の前に風呂に入る習慣だということには思い至らなかった。

 遅くとも五時には帰って風呂掃除しなくちゃならない。

 

 図書委員の仕事が遅くなって、焦っていた。

 

 普通に帰ったら五時を回ってしまう。

 だから、あのお屋敷の崖下で脚が停まった。

 あのお屋敷は、もうだれも住んでいない。生け垣の隙間から見えた一階も雨戸が閉められている。

 四日前からは工務店の工事に関する看板みたいなのが掛けられ、昨日は取り壊しのための足場が運び込まれ、今朝は工事機材を運び込むために門扉が外されていた。

 ここを抜けたら百メートルの近道だ。

 そう思ったけど、裏の出入り口が閉まっていたら元も子もない。

 

 その裏口も開いている!

 

 わたしは、ドキドキしながら階段を駆け上がった。

 裏木戸を潜ると猛々しく草が茂った庭。モワっと湿っぽい土の匂い、ちょびっとかび臭い。たぶん、取り壊すにあたって中の荷物を出したりしたんだろう。

 土蔵の脇を周って広い庭。

 お母さんとチラ見したお厨子が静もっている。

 ソーラーかなにかでオートなんだろう、お厨子の中のお燈明が点いている。

――すみません、通らせてもらいます――

 ペコリと頭を下げて通り抜けようとしたら、お厨子の下に光るもの……え、スマホだ。

 

 こちらに来るのあたってスマホを買ってもらった。

「好きなの選びな」

 お母さんは言ってくれたけど、離婚したてで大変なのわかってるから、指さしたのはキッズスマホ。

「これでいいの?」

「うん、いろいろ付いてても使いこなせないから」

 ほんとはカタログの表紙を飾っていた最新型。見ないようにするのに苦労した。見れば、お母さんが気を遣う。

 

 その表紙を飾っていたのと同じスマホが落ちている!

 

 わたしは、視界の中心を外してモノを見るのが得意。

 スマホ屋さんで、憧れのスマホはしっかり目に焼き付けてある。

 家の人か工事関係の人が落としたんだろう……思わず手に取ってみた。

 手に取ると、それまで暗かった画面がパッと明るくなった。

 静電気かジャイロのセンサーが付いているんだろう。ま、このくらいでは驚かない。

 

――いらっしゃい――

 

 声がすると同時に、画面にも「いらっしゃい」が現れる。

 やばい、どこか触っちゃったかな。

 うろたえると、文字が消えて鳥居が現れてズンズン大きくなっていき、いつの間にか画面からはみ出した。

 目の前に鳥居が現れた。

 首を巡らせると、鳥居を囲んでボンヤリと長方形の枠が滲んでいる。

 

 これって……わたし、スマホの画面の中にいるの!?

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まりあ戦記・044『そいつ!?』

2020-11-18 06:54:12 | ボクの妹

まりあ・044

『そいつ!?』   

 

 

 四菱のCM撮影に付き合ったので三十秒のロスが出た。

 

 むろん進んで付き合ったんじゃない、司令さえ従わざるを得ない軍産複合体への屈折したイラ立ちからであった。

 えーーと……。

 三十秒前には目視できたヨミの姿が見えない。

 0.5秒遅れて、バイザーコンソールの隅、ヨミの存在を示すドットに気づいた。

 三十秒前とは逆方向の丘の陰になっていたのだ。

 なんで?

 これまでの戦闘でヨミを見失ったことなど無かった。ぬかったか!?

 CM撮影と、それに付き合ってしまった自分がが恨めしい。

 一瞬思ったが、すぐに気を取り直しアサルトライフルを構え直す。

 

 ゴーーーーーーーー!

 

 構え直したライフルの先端を何かがかすめた。

 ドーーーーーーーン!

 反射的に首をすくめると、丘の向こうから衝撃波がやってきた。

 衝撃波に続いてヨミが煙を吐きながら燕のように急上昇、その後ろを赤い人型兵器が追っていく。

 人型兵器はウズメよりも二回りほども小さく、蜂を思わせる軌道を描きながらヨミに迫っていく。両手で抱えたアサルトはウズメのそれよりも小型に見えたが、それでも子供が大人用のそれを構えているような滑稽さがある。

 それに、なによりそいつはバイザーコンソールには映っていない。

 

 なに? ステルス!?

 

 ステルス効果はヨミに対しても有効なようで、ヨミが発する対空ビームは大きくバラけている。

 そいつはヨミと並行になって初めてアサルトの引き金を引いた。

 

 ドドドドドドドドド!

 

 速射タイプのアサルトは確実にコアに当てているようで、シールドの破片が飛び散る。

 ヨミのシールドは高いリペア機能があるので、小口径の弾を食らわせても回復が早い。早いが、この局面だけを見ていると、圧倒的にそいつが強いように見える。

 数発がリペアの間隙を縫ってコアを貫通、ヨミのコアからは血しぶきが上がり二筋ほど煙が尾を引いている。

――あれじゃ、バレルが焼きついて使い物にならない、弾だって……――

 懸念した通り、そいつはアサルトをパージして、直近のポッド目がけて急降下に入った。

 

――なにボサっとしてんのよ! 次はあんたの番でしょ!――

 

 え、ええ!?

 

 いきなり、そいつの思念が飛び込んできて、まりあは、そいつとヨミの間に割り込んだ。

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かの世界この世界:136『標(しるべ)』

2020-11-18 06:41:10 | 小説5

かの世界この世界:136

『標(しるべ)語り手:タングリス      

 

 

 ずっとヘルムを照らしてきましたが、ここまでです……

 

 ヘルム神の姿が薄くなってきた。

「あなたが消えると、この島は闇になるのか?」

「あなた方が思うところの闇ではありません、この世に光をあらしめているのは至高の神より託されたオーディンです。わたしは、オーディンがつつがなく役目を果たせるように、オーディンの世界の標(しるべ)の役割を果たしてきたのです。標を失った地上は闇よりもひどい世界になります……残り僅かの力を振り絞って、あなたたちをアグネスの家に戻します。家に戻れば、ユーリアの意識は戻ります。そこからは世界樹ユグドラシルの根元に住む時の女神ノルン姉妹が標の代わりをしてくれるでしょう……」

「標の代わりとは?」

「……もう時間が……オーディンの娘ブリュンヒルデ、姫に託します、この地上を……ヴァルハラを……」

 そこまでだった、ユーリアに似たヤマタの神は輪郭を失って無数の光の粒子となって我々を包んだ。光の粒子に包まれてホワイトアウトした我々は、次の瞬間、ユーリアとヤコブの母であるアグネスの庭に戻ってきた。

 街の住人が酔いつぶれて、あちこちで眠っている。半身を起こしてボーっとしているのは四号の四人の乗員たちだ。

「出発の朝に戻ったようです」

 ふらつきながらもタングリスが立ち上がって状況を確認している。テルも周囲を見渡しロキとケイトが無事なのを見て肩の力を抜いた。

「みなさーーん!」

 駆け寄ってきたのはユーリアだ。

「ユーリア、憶えているか?」

「はい、ヘルム神は『ユーリアを取り込んでも輝きを取り戻せるのは、ほんの僅かの時間だ。間もなくユーリアを取り戻そうとして仲間たちがやってくる。わたしは、その者たちに全てを託そうと思う、いっしょに帰るがいい』とおっしゃいました。どうやら、今朝の時間まで戻ったようです……時の女神ノルン姉妹に託したというのは、このことなんでしょうか?」

「いや……そうでもないようだ」

 目まいがした。いや、目まいがしたように感じたんだ。

 まるでVRゲームがバグったように空間が歪んでくる。遠近感がむちゃくちゃになり、雲がすぐ目の前に迫ったかと思うと、わたしの顔を覗き込んでいたユーリアの顔が数百メートルの彼方でゆらゆら揺れて、四号の車体がシュールにゆがんだり、風景そのものがバクテリアの鼓動に似た変形を繰り返す。

 気持ちが悪い……世界が標を失うということはこういうことなのか?

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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