大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくも・05『マップメジャー・1』

2020-11-21 04:57:05 | ライトノベルセレクト

・05『マップメジャー・1』   

 

 

 今日も図書委員の仕事だよ。

 

 図書委員の仕事というのは放課後の図書室当番。

 中学の図書室というのは司書の先生が居ない。

 いちおう図書部というか図書係の先生がいて、いちおう責任者なんだけど、管理責任ということだけでカウンター業務とかは図書委員が交代で当番に当たっている。

 男女二人一組の当番なんだけど、女子の当番が三日連続で休んでいる。

 それで、繰上りだかなんだか分からないんだけど「小泉さん、わるいけどお願い」ということで頼まれてしまっているんだ。

 転校して来て間がないわたしはアドバンテージが低くって、断ることはおろか、嫌な顔もできない。

 

「今日もよろしくね」

 相棒の男子にはあいさつしておく。転校生は過不足のない笑顔と挨拶が大事なんだ。ほどよく、付かず離れずを心がける。

「今日もよろしく」に「ね」を付けて、さりげに距離感を詰めている。精一杯の工夫。「今日もよろ~」とか、前の学校じゃ言ってたけど、さすがにねえ……。

 男子は杉野君という。

 男子はシフトが違って、杉野君とは最初の一日だけいっしょのはずだった。

 

 暖房が故障しているせいだろうか、放課後の利用者は少ない。

 文芸部の子が三人本を借りていったら開店休業状態。

 杉野君はカウンターに並んでラノベを読んでいる。

 規則では、図書係はカウンターに座っていなければならない。でも、閉館まで杉野君と並んで座っているのは気づまりだ。

 図書室のマニュアルを読んでみる……やったあ(^▽^)/ 図書係は適宜図書室内の見回りをする云々……とある。

「ちょっと見回りしてくるね」

「え、あ、うん……」

 ラノベに集中して杉野君は生返事。

 ゆっくりと見回った。

 奥の書架の横に八段ほどの引き出しがある。上から二つ目が少し出ていたので閉めようと手を掛ける。

 いっぱいの地図と時計みたいなのが入っているのに気付いた。

 地図は国土地理院発行の、ちょー真面目地図。お勧めのお店とか観光スポットとかは絶対載っていない、公民の授業のように退屈。その下にも種類の違う地図がありそうなので探ってみる。

 いっぱいある中に、この街の地図が目に留まる。

――けっこう広いんだ――

 通学路しか知らないので、他の地図よりは興味が出てくる。

――でも、これはなんだろう?――

 時計みたいなのが気になる。

 

「ね、これなんだろう?」

 

 杉野君に示した。

「わ!?」

 よっぽどラノベに集中していたのか、ビックリさせてしまった。

「あ、ごめん。おどかしちゃったね」

「ううん、いいよ。えと、近くで見せてくれる」

 カウンターの所まで持って行って、杉野君の前に置く。

「ああ、マップメジャーだよ」

「マップメジャー?」

「下の方に車が付いてるだろ、これで地図の上をなぞるんだ道路とかね。するとメーターに実際の距離が出るんだよ」

「杉野君、詳しい!」

「あ、ああ、実はいま読んでるラノベに出てくるんだ」

 ラノベのページをめくって挿絵を見せてくれる。女の子の手に同じマップメジャーが握られている。

 ちゃんとネタバラシをするところは、ちょっと好感。

 使い方までは詳しくないようで、二人であーだこーだいじくる。

 最初に地図の縮尺を入力することが分かって、けっこう便利なものだと分かる。

 地図に載っている学校の敷地を計ってみる。正確に間口150メートルと出てくる。

 次に、例の崖道を計ってみる。

 なんと84メートルと出てきた。てっきり50メートルと思っていたのに。

 

 無意識に、障害となる道を短く思ってしまったんだろうか?

 

 だとしたら、苦難を小さく見るわたしって、ちょっと健気で前向きってことになる……かなあ?

 

 

 

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かの世界この世界:139『みんなで協力……なんだけど』

2020-11-21 04:41:44 | 小説5

かの世界この世界:139

『みんなで協力……なんだけど』タングリス        

 

 

 乾ドックに海水を満たし、マーメイド号のエンジンを始動した。

 

 二百トンのマーメイド号は一万トンのシュネーヴィットヘンとは比べ物のならないほど振動する。

 ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・ア・アハハハ……

 ロキが振動で声を震わせて喜んでいる。ポチは甲板の振動をお尻で受けて煎り豆のように弾んで遊んでいる。

「もう、あんたたちは子どもなんだから・ら・ら・ら・ら・らららららら~🎵」

 二人に呆れたケイトも、語尾がトレモロになってくると、陽気に『ら』を転がして可笑しがっている。

「水位が海と同じになった」

 機械小屋のランプがグリーンになった。珍しモノ好きの姫がテルといっしょにポンプを操作しているのだ。

 ドックに水を満たし海面と同じ高さにしなければ、船を海に出せないのだ。

 

「マーメイドも準備OKです! ゲートを開けてください!」

 操舵室からメガホンで叫ぶ。数秒、ウィーンというモーターの音がしたが、ガクンという音がしてモーターは停まってしまった。機械小屋で、二人が焦っているのが分かる。二度三度と試してみるが、モーターは直ぐに停まってしまう。

「あれって、安全装置が働いているんじゃないかしら?」

 ユーリアが眉を寄せて推測する。

「どこかで負荷がかかり過ぎているのだろうか?」

 時間が止まってしまっているのだ、予期せぬ不具合が起こっているのかもしれない。ひょっとしたら、我々の船出を喜ばない者たちが妨害しているのかもしれないとまで思った。なんせ、ヘルムの守護神であるヤマタの力が消滅してしまったのだ。なにが起こるか知れたものではない。

 手分けしてドックの周囲を警戒してみよう……そう思った時、ポンとユーリアが手を打った。

「ゲートにも注水しなくっちゃ!」

 

 あ!?

 

 盲点だった。最大三千トンの船が入れるドックはゲートもいかつく、幅が二十メートル、高さが十メートル、厚みが一メートルもある。しかし、中はガランドウで、ドックに水を張れば浮力を持ってしまう。そのためゲートの回転部分に異常な力が加わって開かなくなってしまったのだ。

「ゲートの注排水ポンプはありますかーー!?」

 メガホンで聞くと姫が×印のサインを返してきた。

「タングリス、あれじゃないかなあ?」

 ケイトがゲートの横を指さすとロキがポチに指示を与えて調べさせに行かせた。

「なにか、スイッチがあるの~🎵」

「それだ!」

 機械小屋を飛び出した姫とテルがドックの縁を周って制御盤に取りついた。

 構造は簡単なようで、すぐにスイッチが入れられると、くぐもった音がしてゲート内部のタンクに海水が満たされていく。

 

 三十分後、満水になったゲートを開き、無事にマーメイドは海に乗り出した。

 

 これからは、なんでも、この六人とポチでやっていかなければならない。なんせ時間が停まって、動けるのは我々だけなのだ。協力しあわなければな。

 あらためて岸壁に着けて四号を載せて本格的に海に乗り出す。

「陽が落ちたら、交代でブリッジに立とう」

 日没から日の出までを五つに分けて当直を決める。それまでは、わたしが舵輪を握る。

 あと一時間ほどか……そう思ったが、いっこうに日は傾かない。

 

 そうだ……時間が停まっているのだから、日が暮れるわけがない……。

 ずっと太陽に照らされっぱなし、それが海面への照り返しと相まって光の強さは陸上の比ではない。目的地のある航海なので雲の陰ばかり拾って行くわけにもいかないだろう。なるべく短時日で着かなければならないし、小型船に不慣れな者たちばかりだ。

 あ、ああーーーーー

 ドッと疲労感が押し寄せてきた。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

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