大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・176『専念寺さんの再入院』

2020-11-01 13:09:30 | ノベル

・176

『専念寺さんの再入院』さくら   

 

 

 専念寺さんて憶えてるやろか?

 

 去年の三月に、お母さんに連れられてこの家に来た時住職さんが入院してはって、うちのおっちゃんやらテイ兄ちゃんが代わりに檀家参りやお寺のアレコレしてあげてたご近所のお寺。

 その専念寺のご住職さんがまた入院しはった。

 それで、おっちゃんとテイ兄ちゃんが再びピンチヒッターで助けに行くことになった。

 お祖父ちゃんは腰が痛むので手伝いには行かへんらしい。

 専念寺さんとうちを合わせたら檀家の数は三百軒近くになるんで、おっちゃんもテイ兄ちゃんもめっちゃ忙しい。

「うちは本願寺派(お西さん)やから融通きくけど、他の派とかやったらしんどいやろなあ……」

 お祖父ちゃんがお茶を飲みながらしみじみ。

 お寺の事はよう分からへんけど、うちの如来寺が本願寺派やいうことは知ってる。

 末寺が一万ほどもあって、檀家さんは八百万人ほども居てるらしい。

「浄土真宗て、他にもあるのん?」

「うん、十派ある。西と東以外は千を切るさかい、同派同士の助け合いもしんどいねんやろなあ」

「十個もあるのん!?」

「ん……それは、どういう驚きや?」

「いや、親鸞上人が大本やから、もっとまとまってるんかと思た」

 親鸞聖人は『ひたすら念仏を唱えたらだれでも極楽往生する』というメッチャシンプルな教義やさかい、分裂のしようもないと思うねんけど。

「八百年もたつと、まあ、いろんな事情ができてくるさかいなあ」

「そうなんや……」

「お祖父ちゃんも若かったら、手伝うてあげるんやけどなあ」

「専念寺さんの入院は長うかかるのん?」

「せやなあ……再発した言うてはったさかいなあ」

 再発の意味は分かってる。

 専念寺さんは癌やったんや、それが二年足らずで再入院。ちょっと難しいかもしれへん。

「………………」

「おおきになあ、さくらも坊主の孫やさかい他人事とは思われへんねんやろなあ」

「あ、それは……」

「あそこは息子があと継がんと外に出てしもて、万一のことがあったら寺出ならあかんやろなあ……」

「寺出るて?」

「嫁はんと、孫娘がおったかなあ……親族がお寺継がへんかったらお寺には住まれへん、本山が仲介に入って近所のお寺が住職兼務することになるやろなあ」

「そうなんや……」

 他人事ながら、ちょっと俯いてしまう。

 去年の春に如来寺がなかったら、うちもお母さんも行くとこないとこやった。

「いや、おおきにおおきに、さくらみたいに心配してあげることが大事やねんで。さすがは、お祖父ちゃんの孫や」

 お祖父ちゃんは、そう言うと、子どものころにしてたように、頭を撫でてくれる。

 ほんまはちゃうんです。

 テイ兄ちゃんが車運転してくれてさ、残念さん、ほら、木村重成さんのお墓見に行くいう計画がね……。

 正直に言うたら、頭を撫でてくれてるお祖父ちゃんの気持ちを無にするんで言いません。

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まりあ戦記・027『マリア? まりあ?』

2020-11-01 06:22:48 | ボクの妹

・027
『まりあ? マリア?』    



 

 これが本当なら どんなにいいだろう

 ため息一つついて、まりあはチャンネルを変えた。変えたチャンネルはうるさいだけのバラエティーだったので、それ以上変えることもなくテレビの電源を切った。
 さっきの情報番組では「ヨミの攻撃はもう終わった」とコメンテイターが言って、スタジオのゲストたちが賛同していた。

 もう二か月以上ヨミの攻撃が無いこと、大気中の二酸化炭素が減少傾向にあること、北極の氷が減っていないことなどを理由にあげていた。
 ヨミの出現は、地球温暖化を始めとする環境破壊にあるとする俗説は、今でも人類の20%ほどが信じている。
 客観的に温暖化は終わっているのだが、局地的な異常気象や天変地異を取り上げることで「温暖化は進んでいる!」と言い張ってきていた。だが、ここ数年、世界の気候は寒冷化の兆しを見せており、温暖化を言い募るのは苦しくなってきた。
 
 度重なるヨミの出現で環境破壊のエネルギーは消費されてしまったので、温暖化もヨミの出現も終わりを告げたと説明している。

 なんとも仮定の上に仮定を重ねた理屈でお目出度い限りだ。
 理屈の主題は「我々は間違っていない」ということだけだ。「間違っていない」ことを言い募るために「ヨミ防衛のための軍事費を大幅に削減しろ」という主張までするようになってきた。

 さ、ちっとはお勉強するか。

 明日から始まる期末テストに向けて、まりあは重い腰を上げる。

 リビングから自分の部屋までは、ほんの六歩なのだが。地球の裏側に行くほどに遠く感じる。
「なんで『of』を三つも重ねるかなあ」
 すごく文語的で、日本語で言えば二百年は昔の表現の英文にプータレる。
「『af』は熱帯雨林だけど、記号だけ覚えても意味ないじゃん」
 地理というのを暗記科目にしていることにムカつく。
「『君死に給うなかれ』……与謝野晶子は大東亜戦争じゃ戦争賛美なんだけどなあ……」
 国語の解釈が気に入らない。

 学校の授業が嫌いなのか、勉強そのものが嫌なのか、まりあ本人もホトケさまの俺もよく分からない。

「ね、マリア、あたしの代わりに学校行ってくれたりしないかなあ」
 洗い物が終わったマリアにポツリと言う。
「あたしは、そういう意味での影武者じゃないんだけど」
 背中越しでも分かるジト目で非難するマリア。
「ジョーダンよ、ジョーダン」
 仕方なく、大きなため息ついて、まりあは机に向かいなおした。

 よく朝は、へんな気配で目が覚めた。

――これって……あたしの気配……?――

 服を着る衣擦れの音、リビングへ向かう足音、牛乳を飲む音……そう言ったものがまりあ自身の気配。まりあは夢を見ているのかと思った。
「じゃ、行ってくるから」
 まりあの声。
「行ってらっしゃーい」
 みなみ大尉の寝ぼけた声。
「!……ちょっと待って!」
 ガバッと起きて、爆発頭でまりあはマリアを呼び止めた。
「なんで、ペッペッペ(咥えた髪の毛を吐いている)マリアが学校行くのよさ!?」
「夕べ代わりに行けって言ったでしょ?」
「あ、あれは……」
「フフ、ちょっとした緊急事態でね……」
 それだけ言うと、マリアは通学カバンをぶら下げて出て行った。

「フヮ~~~ マリア、朝ごはんお願い」

 目覚めたみなみ大尉が、目をこすりながら頼んだ。
「えと……あたしまりあなんだけど」

「え? え?」

 事情が呑み込めないみなみ大尉であった……。

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ポナの季節・81『胸に秘める』

2020-11-01 06:12:15 | 自己紹介

・81
『胸に秘める』
        



「うん、それでいこう!」

 吉岡先生が手を叩いた、みんなの拍手がそれに続く。

「え、今の……」
 いつもの調子でやっただけなので、ポナは面食らった。
「今までのも完成はしていたけど、たった今のは突き抜けてた。ほら、ここんとこ」

 祈るようなまなざしで、クララの椅子を見つめ、気持ちをふりきるようにして、シャルロッテ退場。
 開幕の時のヨーデル急速にフェードイン。その高まりに比例して、クララの椅子きわだつうちに幕。


「いつものようにハイジを追いかけて出て行ったクララだけど、今度はシャルロッテ自身が命がけで相手をした。クララへの信頼だけじゃない、これはシャルロッテの自己肯定でもあるの。祈らなきゃならないほどにか細いものだけど、最後のところで自分がしたことに自信を持とうっていう、若者の自己肯定、それが本物になってきたわ」
「でも、できたって実感がないんですけど」
「それは自然にできたものだと思う。ポナがこの何カ月かで体験したことが糧になってできたものよ」
「あたしの体験……」

 実の子ではないと分かったこと、姉弟同然のポチの死、安祐美との出会い、SEN48の結成、何度も行った慰問ライブ、実の母真奈美との再会……

 確かにこの数か月は十五年の人生の中で一番驚きと変化に満ちていた、生まれてこなければよかったと思うこともあった……でも気がついたら、こうやって演劇同好会に混じって稽古に熱中している。
「ポナは何をしている?」と聞かれたら「前を向いている」とは答えられるだろう。

 そんなことを思いながら、もう一本通した。演技は定着しつつあった。

「もう一回通したいんですけど」
 ポナは貪欲に手を挙げた。
「気持ちは嬉しんだけど、本番も近いしペースを大事にしたいの。これくらいにしておこう」
「……はい、分かりました」
 土日はライブで休みますから……とは言えなかった。抜けることは舞台監督にも先生にも言ってある。みんなのペースを崩してまで言うことじゃないと胸に収める。

――おとついはありがとう、おかげで芝居は順調。週末勝負。がんばります(*^-^*) ポナ――

 と大輔にメール。

 大輔は以前のように行き帰りの電車で待つことをしなくなった。大輔なりの想いはあるのだろうけど胸に収めといる感じ。その分こまめにメールは打とう。
「自分で気がついていたら上出来なんだけどね」
 そうポツリと言ってスマホをポケットに。気づかせてくれたのはチイネエ。
「今日、渋谷でポナに間違われた」
「ひょっとして蟹江くん?」
「さあ、修学院の子だけどね……」
 この会話の前に大輔とは会っていたが、大輔は一言も、そのことは言わなかった。

 家に帰ってしばらくすると大輔からメールがきた。
――お疲れさま、チケット4枚さばけた。SEN48との両立大変だろうけど、がんばって。 ダイスケ――
 抑制のきいたメールだった。少しいじらしくなって返事を打とうとしたが言葉が浮かばない。逆にメールがきた。
「お、M企画の田中ディレクター……」
――T自動車のCMできました。明日から民放でオンエアーです。 田中――
「予定より早い……そうだ」

 ポナは、さっそく大輔に短いメールを打った。
 送信を押すと、それがスイッチだったように雨が降ってきた。まるで空が胸に秘めたものを吐き出したようだった。
 

 

ポナと周辺の人々

父     寺沢達孝(60歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(50歳)   父の元教え子。五人の子どもを育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員、その後乃木坂の講師、現在行方不明
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒
谷口真奈美 ポナの実の母
平沢夏   未知数の中学二年生

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かの世界この世界:119『四号戦車試乗会・2・ゲペックカステンを外す』

2020-11-01 06:01:24 | 小説5

かの世界この世界:119

『四号戦車試乗会・2』語り手:タングリス        

   「ゲペックカステ...」の画像検索結果

 

 ベンチだけでは心もとないので手すりを付けることになった。

  言い出したのはユーリアだ。

 戦車と言うのは意外にグニャグニャなのだ。四号の場合、サスペンションが転輪二個に一つの割合で付いている。発進するときには後ろが沈み込み、停車の時には前が沈み込む。不整地を走る時にもトラック並みにグニャグニャ揺れる。サスのストロークは自動車の倍ほどもあるので、ベンチに座っただけでは振り落とされかねない。

 ユーリアは、思いつくと近所の鍛冶屋に言づけて一時間余りで作ってもらえることになった。

 我々乗員にも仕事はある。

 ベンチを付けるために、砲塔の後ろのゲペックカステン(物入れ)を外すのだ。他の乗員は早くから集まってきた子どもたちの相手をしてくれている。   

 子どもの相手が苦手なわたしはヤコブとコンビを組んでゲペックカステンの取り外しとベンチの据え付けだ。

「なかなか良い妹じゃないか、ユーリアは……」

 二個目のボルトを外しながら声を掛ける。

「ええ、自分も驚いています。あんな積極的に振る舞える子じゃありませんでした。遊びに行っても、いつも自分の後ろに隠れていて……港のクィーンが務まったり、陽気に酒の席で喋れるようなやつじゃありませんでした」

「それに、今度の件でもくったくがない。生贄になると言うのに、まるでクラス委員を引き受けるくらいの軽さだ」

「自分が動揺すれば、ヘルムのみんなが後ろめたくなりますから」

「そうだな、夕べはあれだけのどんちゃん騒ぎだったが、心底から喜んでいる者なんかいなかったぞ」

 夕べ、寝返った勢いでわたしの胸に手を落としたオヤジの顔が浮かんだ。朝になって目が合うと少年のように顔を赤くしていた。

「ユーリアが生贄になりにいくときは、反対されても付いていきます……」

「乗り掛かった舟だ、わたしたちも四号で追いかけるからな」

「いいえ、ここまでご一緒してくださっただけでも感激です」

「そう言うな」

「脱走同然の自分を庇ってくださって……その上甘えるわけには……」

「ちょっと硬いなあ」

「は、すみません」

「いや、ボルトのことだ」

「あ、荷重を均等にかけなければ、持ち上げます」

「すまん……よし、もうちょい」

「これで、どうですか」

「……よし、全部外したぞ」

「は、はい。では、ゲペックカステンを外します」

「呼吸を合わせてやらないと、こんなものでも怪我をするぞ。いくぞ……いち、に、さん!」

 

 ゴトンと音がしてゲペックカステンが外れた。

 

☆ ステータス

 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

 

 

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