大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・018『修学旅行・18・陛下のお気持ち』

2020-11-16 14:38:33 | 小説4

・018

『修学旅行・18・陛下のお気持ち』大石一   

 

 

 ダッシュ、おまえがまとめるとメチャクチャになりそうだから、僕がやるよ。

 そう言って、ヒコは自分のインタフェイスを広げた。

 

 陛下は、こういう意味の事をおっしゃったと、我々は理解している。

 

 陛下を襲った人たちにも理屈がある。

 むろん暴力に訴えることは間違っているが、あの人たちの理屈に耳を傾けることは必要なことだと思う。

 あの人たちは、陛下個人に恨みがあるわけでは無い。

 陛下が天皇であることに異議を唱えている。

 二十五年前、陛下は先帝が崩御された時に政府と国民の総意を受け、先年改正された皇室典範に則って皇位に就かれた。二千有余年の皇室の歴史始まって以来の女性天皇だ。

 先帝のお子には今上陛下である和子内親王殿下しかおられなかった。

 改正前の皇室典範では男系の家系を遡って、五代前に分かれた森ノ宮家からお迎えしなければならなかったが、すでに百年以上昔に枝分かれした家系で、国民の馴染みも薄く、先帝が広く国民に敬愛されていたことも鑑みて、国民の総意を汲み、皇室典範を改正して和子内親王殿下が131代目の皇位に就かれた。

 しかし、それは二千有余年の皇室の歴史から踏み外したもので、正しい森ノ宮家の皇位に戻さなければならない。

 彼らが言う正しい皇統に戻すことによって、日本の平和と繁栄、さらには世界と宇宙の安定的発展がもたらされる。

 彼らの行動の基礎には日本と皇室の弥栄(いやさか)を思う気持ちが潜んでいるので、そこは汲み取らなければならない。

 その上で暴力に訴えるという手段をとったことは非難され、取り締まられることは仕方がない。

 そして、それでも国民の総意と皇室典範に則った現在の皇室は正統なものであると締めくくられた。

 

 以上が、三十分にわたって漏らされた陛下のお言葉を我々の心で理解したことである。

 

ダッシュ:「なんだか、固くねえか、ヒコ」

ミク:「うん、もっと優しくおっしゃった気がする。それに、もっと御熱心にお聞きになったことがあるじゃない」

ダッシュ:「あ、将軍の事な」

ミク:「『たけくん、お元気?』って聞かれた時には驚いた」

ヒコ:「竹千代ってのが将軍の幼名だって気づくのに五秒ほどかかったな」

ミク:「子どものころに将軍が日本留学してたことは知ってたけど、陛下と同窓生だってのは知らなかった」

テル:「将軍、出べそだったあ( ´艸`)」

ダッシュ:「早食い競争の決着がついてないのはいちばん笑えたな(≧▽≦)」

ヒコ:「チャンスがあったら再試合しますかって聞いたら、子どもみたいな笑顔で『うん!』ておっしゃってたなあ」

ミク:「このことは書かないの?」

テル:「書けるわけないわさ」

ダッシュ:「なんでさ、テル?」

テル:「らって、あそこに陛下の本音がありゅから……」

ミク:「本音?」

ヒコ:「陛下は将軍に会いたがっておいでなんだ」

ダッシュ:「ああ……だったら余計に」

ヒコ:「これは記録には残せない、チャンスがあったら、直接将軍にお伝えしよう」

ダッシュ:「あ、ああ」

 そこまで書いて、陛下と元帥と六人で撮った写真を添えてヒコはインタフェイスを閉じた。

 

 ちょうど、そのタイミングで車寄せに元帥の車がやってきて、俺たちは皇居をあとにした。

 車窓から振り返ると長和殿の屋根に陽が落ち始めて、あたりを温もりの秋色に染めていた。

 

 

 ※ この章の主な登場人物

大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子

緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女

 ※ 事項

扶桑政府   火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

 

 

 

 

 

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まりあ戦記・042『大尉とまりあのイラ立ち』

2020-11-16 06:28:31 | ボクの妹

・042

『大尉とまりあのイラ立ち』    

 

 

 疑似ペーパーチケットは、ゲート横のマシンにスマホをかざせば記録され、列で待っている家族や恋人の所に戻ってゲートを潜ると、自動改札に似たディスペンサーから疑似チケットが吐き出される。

 これだと、ほんの数分列に並んで入場を待つという体験ができる。

 たいていの客は、それで入場する。

 金剛少佐は完全アナログで、チケットを買うところから並んで、アナログチケット専用のゲートを使う。

 おかげで待ち時間は十五分ほどと、疑似ペーパーチケット組の五倍ほどの時間がかかる。

「だって、おかしいだろ。入場してからチケットを受け取るなんてさ。親とか恋人が列に並んで買ってきたチケットを手に取って『ああ、これから入場するんだ!』というワクワクを感じて入るのが仕来りだ。な、これから楽しむんだって気になってきたろ?」

 少佐の言うことは分かったが、I lobe You! のネオンサインが背中で点滅するスタジャンを着せられているみなみ大尉は面白くない。

 

 ウズメの発進を数分後に控え、数日前のサンオリデートのことを思い出していたのは、やっぱり腹立たしかったのか、意識の底で楽しかったと思っているのか区別がつかなくなってきているせいかもしれない。

――システムオールグリーン、インターフェースクリアー、リリースインジェクション完了――

 ヨミの変異体が数週間ぶりに出現。バージョンアップしたCISからのオペレーションは快適でさえあったが、先日サンオリで並んだ時のようなイライラがある。

 リリースチーフの自分がこんなことではいけないと思う大尉であったが――おや?――と思った。

 

 まりあのコクピットコンソールも、まりあのイラ立ちを示すゲージが上がっているではないか……。

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かの世界この世界:134『ヤマタ……ヘルムの神』

2020-11-16 06:18:39 | 小説5

かの世界この世界:134

『ヤマタ……ヘルムの神ブリュンヒルデ        

 

 

 クレーターの中心へポチを含めた四人で飛び込む!

 

 ちょっと前なら、準備も偵察もなしに飛び込むような真似はしなかっただろう。ストマックとその変異体をやっつけて確信めいたものが湧いてきた、テルにもタングリスにも迷いはない、わたし(ブリュンヒルデ)もいつもの意地っ張りではない、ポチも小さな体に自信をみなぎらせている。

 穴には無数の横穴があって四人を惑わせる。惑わせるばかりではない、ほとんどの穴からは出くわしたことのないクリーチャーが攻撃を仕掛けてくる。しかし四人は、戦い慣れたダンジョンのように、あらかじめクリーチャーの出現が分かっているかのように切り抜けていく!

 ……この先に空がある!

 地下に向かって落ちているはずなのに空を予感した。落下しつつバク転をくわえると、予感の通り重力が反転し、急速にブレーキがかかった。

 スポ スポポポ スポポポポ ポン!

 小気味よくビール瓶の栓を開けたような音をさせて、旋回しつつ空中に躍り出た。

 

 そこは、本来のヘルムの奥つ城であった。

 ヘルムは分断されておらず、灌木林の向こうにはヘルムの自然や街が地続きで広がっている。

 四人が旋回する中心は穏やかな野球場ほどの草原があり、草原の真ん中には像ほどの大きさのエメラルドが鎮座している。エメラルドはキラキラ光り、あたかもヘルムの自然にエネルギーを供給しているかのように外に向かってエネルギーを発しているのが分かる。

 眩しくて目をつぶりそうになるが、こいつから目を離すと遠心力で振りとばされて何もかもがお仕舞になるか振り出しに戻されそうな予感がする。

「みんな、あれから目を離してはいけないぞ! 指の隙間からでも目を細めてもいい、あれをしっかり見ておくんだ!」

「わ、分かった」

「ラジャー!」

「承知!」

 四人が旋回するにつれ、エネルギーの中心がエメラルドの頂点に凝縮して人の形をとった。

 それは、ユーリアの形を結んだ。

「クリーチャーではないな……」

 声に出したのはわたし一人だったが、他の三人も同じ気持ちなのだろう、穏やかに着地した。

「「さすがはオーディンの姫君とお仲間、正しく理解していただけているようで心強く思います」」

 不思議だった、喋っているのはユーリアなのだが、声には二人分の響きがある。

「あなたは?」

「「ユーリアであったものであり、ヤマタであったものです」」

「つまり……」

「「この身をなんと呼ぶか、それは、わたしが伝説となっていく間に定まっていくでしょう……とりあえずはヘルムとでも呼んでください」」

「ヘルム」

 一歩前に出たタングリスが続ける。

「戒めを解いて、ユーリアを家族の元に帰してはもらえないだろうか」

「「それについては、少し話を聞いてもらえますか」」

「はい、謹んで」

 きっぱり言うと、タングリスは一歩退いて、わたしの斜め後ろに収まる。

 ここでは神域の序列を守らなければならないと思ったようだ。

「わたしはオーディン以前の神によって遣わされました、神としての有りようが違うのです」

「違うと言われると?」

「長い話になるが、聞いていただけるだろうか……」

「はい、みんなもいいだろうか?」

 三人は、草の上に腰を落ち着けることで賛意を示した。

 ヤマタの……ヘルムの神との対話が始まった……。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)

 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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