大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

明神男坂のぼりたい・52〔喜べ、明日香の気持ちは確実に伝わったぞ〕

2022-01-25 07:23:52 | 小説6

52〔喜べ、明日香の気持ちは確実に伝わったぞ〕 

    


―― 僕も、明日香のことは好きだ ――

 ドッキン!

 それが、まず目に飛び込んできて、思わずお手玉になってスマホを落っことす。

 パサ

 ベッドの上なので、スマホは無事なんだけど、明日香の心は無事じゃない。

 ドキドキドキドキドキドキドキドキ

 あたしの中に勝手に住み込んだ、山川の詳説日本史でもたった一回しか出てこない将門さまの娘が、あたしの関根先輩への煮え切らない思いに業を煮やした。

 そして、こないだ神田川のテラスで、あたしに「好き」って告白させた。

 それでも、それ以上なにもできないあたしにに苛立ったのか、意地悪か、善意か、よく分からないけど、あたしが寝ているうちに先輩の番号調べて、あたしの声で電話した。

 で、その返事がメールで返ってきた。

 心を落ち着けて続きを読んだ。

―― 保育所のころから好きだったけど、明日香は他にも男の友達がいて、俺のことは眼中に無いと思ってた。こないだのことも、あとのシラっとした態度でイチビリかと思った。夕べのことで、明日香の気持ちは分かったよ。正直、今は美保もいる。煮え切らん男ですまん。でも、夕べみたいなことはダメだと思うぞ。学 ――

 心臓がバックンバックン言うてる……ん……ちょっとひっかかる?

 夕べみたいなこと……電話以外になにかしたか? 

 電話の履歴を調べた。

 美保先輩と二人の電話の履歴はあったけど、関根先輩のは無かった。で、メールの送信履歴を見る。

―― 今から、実行に移します。明日香 ――

 え……な、なにを実行に移したんだ!?

 そう思うと、ジャージ姿の自分が浮かんできた。どうやら夕べの記憶(あたしの知らない)の再現みたい……。


 時間は夜の十二時を回ってる。


 素足にサンダル。自転車漕いで……行った先は、関根先輩の家……自転車を降りた明日香は、風呂場から聞こえる関根先輩の気配を感じてる。先輩がお風呂! だけど、覗きにはいかなかった。方角は、関根先輩の部屋。その窓の下。

 明日香は、そーっと窓を開けると、先輩の部屋に忍び込んだ。で……。

 あろうことか、先輩のベッドに潜り込んでしまった!

 先輩が、鼻歌歌いながら部屋に戻ってきた。

「先輩……」
「え……!?」
「ここ、ここ」

 あたしは布団をめくって、姿を現した。

「あ、明日香。なにしてんだ、こんなとこで!?」
「実行に移したんです……あたしもお風呂あがったとこです」

 ゲ、ジャージの下は、何も身につけてないことに気が付いた! そして、おもむろにジャージの前を開けていく。先輩の目が、明日香の胸に釘付けになる!

 それから、明日香の手は、ジャージの下にかかった。

「明日香! おまえ、なに考えて!」
「言ったでしょ。明日香の最初にあげるのは、先輩だって」
「声が大きい……!」

 それから、先輩は、あたしのジャージの前を閉めると、お姫さまダッコ!

 ……で、窓から外に放り出されてしまった。

 なんちゅうことをしたんだ!

 

「好きだったら、あたりまえだろ。この時代の男はしんきくさいぞ。好きなくせに夜這いの一つもやらないでさ。だから明日香の方から仕掛けていったのよ」

「さつきの時代とはちがう!」

「だから、夕べは大人しく帰ってきたぞ。関根、ほんとうにビビってたからな。ほんとに、お前も関根も分からんわ。好きなら突撃だろ、好きな女が二人いてもいいだろ。付き合って、相性のいいほうといっしょになったらいいんだ。そうではないか!?」

「グヌヌ……」

「しかし、喜べ、明日香の気持ちは確実に伝わったぞ(n*´ω`*n)」
「伝え過ぎ!」
「アハハ、まあ、そう、怒るな。お、そろそろ学校いく時間ではないのか?」
「あ、もう7時45分!」

 ぶったまげて、制服に着替えようと思って、パジャマ代わりのジャージを脱いだ……気がついた。夕べの朝だから、パンツも穿いてなかった……。

 

コメント
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