大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE滅鬼の刃・26『祖父をなんと呼ぶか』

2022-09-05 15:12:55 | エッセー

RE エッセーノベル    

26・『祖父をなんと呼ぶか』 

 

 

 お祖父ちゃんと暮らすことになった最初の日、お祖父ちゃんが聞きました。

「どうだ、栞、これからはお祖父ちゃんの事『お父さん』て呼んでみるか?」

 

 ショックでした。

 

 なんと言っていいか分からなくて、俯いていたら涙が溢れてきて、両手をグーにして目をゴシゴシ拭きました。

 それでも、涙は溢れてきて、その日初めて着た白のワンピースにポタポタ落ちてきて、シミになったらお母さんに怒られると思って、でも、もうお母さんに会うことは無くって、そう思ったら混乱して、ますます涙が止まらなくなって。

 でも、声を上げて泣くことはしなかったですね。

 声を上げて泣いたら、もう、張り詰めた髪の毛一本でもっているような心が壊れて、元に戻らなくなってしまいそうで、必死にこらえました。

 

 お祖父ちゃんを『お父さん』と呼んでしまったら、二つの大事なものが二度と返ってこない。

 

 一つは、おうち。子どもの言葉で『おうち』です。

 家庭、ファミリー、絆、そういったものです。それが『お父さん』という言葉で永遠に消えてしまいそうな、そんな怖れを感じていました。たとえ100点満点でなくとも、おうちはおうちです。

 ジブリの『ラピュタ』で、怖いシーンがありますね。

 パズーとシータがムスカ大佐に追い詰められて、二人で飛行石を握って「「バルス」」って言うじゃないですか。

 あれで、何百年、何千年続いたラピュタが分子結合を失ったみたいにバラバラになって落ちて行ってしまうじゃないですか。

 あんな感じで、怖くて言えませんでした。

 

 二つ目はお祖父ちゃんそのもの。

 お祖父ちゃんを『お父さん』て呼んでしまったら『お祖父ちゃん』が居なくなってしまうじゃないですか。

 わたしは、親の都合で、しょっちゅうお祖父ちゃんちに預けられていました。

 お祖父ちゃんは、いつも優しくって、何かの拍子で誰かの胸で眠ってしまって、目が覚めた時、お祖父ちゃんだったらホッとしました。もっと昔はお祖母ちゃんも生きていて、よく、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに挟まれて寝ていたもんです。

 お母さんでもよかったんですけどね。

 お母さんの場合、目が覚めたら、そこから、もうよい子を演じなければならないので、ちょっとくたびれるんです。

 お祖父ちゃんの姿をしたお父さん。そんなのは釈然としません。

 でも、大きくなって少し分かりました。

 友だちの中にお祖母さんと暮らしてる人が居たんです。その子が『お母さん』と呼んでいて、ちょっと「え? ええ?」って思って、その子は説明してくれました。

 その子にも、そこには居ないお母さんにも、むろんお祖母さんにも、なにも問題はありません。

 ただただ、居心地が悪いんです。

 お祖父ちゃんを『お父さん』と呼んでしまったら、目の前にいるのは『お父さん』と呼ばれるお祖父ちゃんの姿をした怪物になってしまいます。

 

 

http://wwc:sumire:shiori○○//do.com

 栞2号のドクロブログ☠!

 

 なんで『お父さん』て呼ばなかったかって?

 キモイからに決まってんじゃん。

 ジジイと暮らすようになったのは五歳になってすぐだったと思う。

 五歳っていうと、もう赤ちゃんじゃない。でしょ? 異議無いよね?

 今ほど具体的にアレコレ知ってたわけじゃないけど、分ってたよ、これから大変だって。

 もう一年くらい、ジジイとは、いっしょにお風呂に入ってなかったし。

 お母さんは問題アリアリな人だったけど、そういうとこは、いっしょだったし。

 ジジイのとこは、しょっちゅう来てたというか来させられてた。ま、家庭の事情ってやつさ。

 でもさ、毎日ってわけじゃないよ。

 お母さんは破滅的な性格だったけど、ドラマとかは、橋田寿賀子とか好きでさ、そういうのに憧れあるのよ。

 渡る世間は鬼ばかりと笑いながら、渡る世間に鬼はなしとも願ってる。

 世間の鬼は自分だと自覚しながら、自分の相手をしてくれる世間には鬼ではないと憧れてんのよ。

 虫良過ぎ!

 憧れてんだったら、自分ちをそうしろって思ったけどさ。ま、それは置いといて。

 わたしもね、うちでは母親似の剥き出し幼女だったけど、ジジイんちじゃ仮面孫娘やってたわけ。

 加齢臭は、ま、いいとして、ベタベタされんのは勘弁してよですよ。

 いっしょにお風呂どころか、いっしょに洗濯もNG!

 わたしがね、小五から洗濯してんのは、そういうことですよ。

 家庭科の洗濯実習で手際がいいもんで、感心されて「あ、お祖父ちゃんと暮らしてますから」ってコソッと担任の先生に言ったら、EテレのMCてか、24時間テレビ的な微笑み返されてゲロ出そう。

 そういや、24時間テレビも苦しいみたいね。もう何年も続かないでしょ?

 わたしもね、こんな仮面孫娘、そう何年もやってるつもりないし。

 

 あ、突然思い出した。安倍さんてさ、一発目と二発目の間に倒れてるよね。動画、何回も見たし。

 弾が見つからないとか、現場検証が五日後って、もう終わってるでしょ。

 ま、思っただけでさ、わたし的には、そういうことには目をつぶって、統○協会がーとか、テレビのワイドショー的に生きて生きればいいっす。

 

 

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くノ一その一今のうち・18『総務二課の秘密・2』

2022-09-05 11:05:07 | 小説3

くノ一その一今のうち

18『総務二課の秘密・2』 

 

 

 ソファーに座っていてさえ分かるくらいに短足。

 お腹はデップリ、顎は二重だし、顔は脂ぎってるし、頭はバーコードだし、耳に毛が生えてるし。

 街の中で会ったら、ぜったい視界の外に外すタイプ。

 だけど、面接だから正面から見ざるを得ないし。

 正面から見ていてもね、注目しないやり方もある。視野の端でものを見るのは忍者のイロハで、それとは知らずにお祖母ちゃんに教えてもらった。やろうと思ったら、この瞬間だってできるんだけど、さすがに面接だし、ちょっと油断のならない感じもするし。ここはガマン。

「……生まれた子はお庭番の女が引き取ってね、自分の子として育てたんだ。秀忠さんは『すまぬ、いずれ、世の中が許すようになった暁には身の立つようにしよう』とおっしゃってね、お墨付きを認められて日光東照宮にお納めになった。それが、八代吉宗公の時の日光改修で見つかったんだが、その内容を読んだ吉宗公は大岡越前……知っているかなあ?」

「はい、遠山の金さんと並ぶ名町奉行ですね」

「うん、その大岡越前を遣わして、その末の者たちがお墨付き通りであることを確認すると、添え状を書いて再び日光に封印された」

「はい」

「千人同心というのを知っているかい?」

「八王子の……」

「うん、武田家の旧臣たちを同心の身分で八王子に住まわせ、あたりの開拓や日光街道の警備なんかをやらせていた。万一江戸が攻撃を受けて将軍を逃がさなければならない時は、この千人同心たちが守護することになっていた。万一のためのSPということだね」

「はい」

「これに似たものに等々力百人同心というものがあるんだ」

「とどろき?」

「等々力と書いてとどろきと読む。世田谷だね、二子玉川と自由が丘の間当たり、等々力渓谷って景色のいいところがあるんだ」

「はい……」

 返事はしてるけど、話が飛んでしまって生返事になりかける。

「そこに居たのが百人同心。八王子同様で北条氏の旧臣たちで構成されていてね、役目は似たり寄ったりなんだけど、一つ別の大きな役割があった」

「別の役割ですか?」

「うん……豊臣秀頼の子孫を保護する役目なんだ」

「と、豊臣秀頼の子孫?」

「うん、秀頼は大坂夏の陣で淀君とともに亡くなったけど、子孫は残った。家康も、そこまで鬼にはなれなかったんだね。島津家に身を寄せさせた後、秀忠さんの代に呼び寄せてね、豊臣とは名乗らせなかったけれど面倒をみたんだ」

「はい」

 これが、どうわたしのバイトと関係してくるんだ?

「幕末、幕府が瓦解した時に、慶喜さんが大政奉還して、江戸城明け渡しになって静岡に移る時にね、その子の子孫に『徳川』を名乗ることを許したんだよ」

「あ……」

 これが、この徳川社長の事情か……

「そう、それが、わたしの五代前。それからは、いや、それからも等々力徳川は、その恩に報いるために貿易で力を付けながら豊臣家の血脈を守っているわけさ」

「は、はい……」

 スジは分かったけど、なんかピンとこない。

 

「説明は、そのくらいでいいんじゃないかなあ」

 

 いきなり声がした!?

 音源のハッキリしない声、部屋の四方にスピーカーが仕込まれていて、それが一斉に鳴ってるみたいに、自分の頭の中から声がでているみたいで、気持ちが悪い。

 キシ

 微かに音がしたかと思うと、ドアに近いソファーの座面が凹んで、次の瞬間スーツ姿が現れた。

「まだ呼んどらんぞ」

「社長の話は長いんですよ」

「やれやれ、課長代理の服部君だ。この部屋での君の上司になる。まあ、憶えてやってくれ」

「あ、どうも、風間そのです」

「君は、どこの高校なのかなあ……」

「はい、えと………………え? あ、ああ!?」

 

 そいつは、丸の内に着いた時、あたしに絡んできた並ではない警察官だった!

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・55『リバース』

2022-09-05 06:31:15 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

55『リバース』小菊 




 ピンポンパ~ン

―― 一年三組の増田汐さん、一年三組の増田汐さん、伝えたいことがありますので司書室まで来てください ――


 学食を出たところで校内放送がかかって、増田さんは、食べたばかりのランチをリバースしそうな顔をあたしに向けた。

「だいじょうぶ、あたしが付いて行ってあげるから」

 増田さんはゴックンしながら頷いた。ほんとにランチが喉元までリバースしていたのかもしれない(^_^;)。

 昨日は、あれから学校中を探し回った。

 

 そんなに広い学校じゃないけど、落とし物の本を探すのには十分すぎるほどに広い。

 探し回ったお蔭で、オリエンテーションでは覚えきれなかったゴミ捨て場や、いろんな準備室や倉庫の位置を覚えてしまったけどね。

 でも、増田さんが失くした図書室の本は見つからなかったんだ。

 それが、あくる日の昼休み、図書室から指名の呼び出し。

「探し回ってるの、みんなに見られてるから、きっと叱られるんだ……(#'∀'#)」

 あたしは別の可能性を思ったけど言わなかった。増田さんは、ちょっと鍛えられた方がいい。

 あたしが付いて行ってあげなかったら、彼女は、そのまま校門から飛び出して二度と学校に来ることはなかっただろうと思うよ、大げさじゃなくて。

 スーパーで買ってきた玉子からヒヨコが孵ったらビックリするよね。そのヒヨコが、早手回しにフライドチキンとかになたら、もうビックリのしようもないよね。

 そんな展開になって来た。

「拾ってくれた人が居たの!」

 あたしの予想が当たった。けど、友だちの礼儀として「ほんと!?」と驚いてあげることは忘れなかったよ。

「「よかったよかった! よかったよ!」」

 図書室前の廊下で、二人ハグしながらピョンピョンした。

「でね、今から拾ってくれた人にお礼を言いに行くの!」

 学食前のリバース顔から完全にリバースした笑顔で目をキラキラさせながら増田さんは宣言した。

「三年生の鈴木さんて男子生徒なの♡」

 初対面の人間に一人で会いに行けるような子じゃないんだけど、『耳をすませば』妄想に陥っている。「付いて来て」とは言わずに、いそいそと階段を上って行ったよ( ´艸`)。

 喜んであげるべきなんだろうけど……後姿が小さくなってうちに、なんだかムカついてきた。

 渡り廊下通って本館へ、そして階段を下りる。本館の二階は三年生のフロアーだ。

 こういう時に気取られる妻鹿小菊じゃない。

 あたしは、階段上がったところの壁に背中を預けた。

 反対側の壁には身の丈の姿見があって、そこに写ってる増田さんと三年の男子を偵察。

―― ウ……なんだかいい雰囲気じゃん ――

 そろって左と右の横顔を向けている二人はドラマのカップルみたくよさげだ。

―― 鈴木って云ったっけ? ちょっといい感じじゃんよ…… ――

 しばらくして、こちらを向いた鈴木の正面の顔を見てブッタマゲタ!

 ゲロゲロლ(‘꒪д꒪’)ლ

 それは、腐れ童貞の悪友のノリスケではないか!

 そうだ、ノリスケの苗字は鈴木だった。

 なんちゅうリバースなのよ!

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート

 


 

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