大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・289『夢見る魔法少女』

2022-09-13 14:49:00 | 小説

魔法少女マヂカ・289

『夢見る魔法少女語り手:マヂカ 

 

 

 わたしは令和の日暮里に休息のためにやってきている。都立日暮里高校に潜り込んで、まったりとJK生活を送るはずだった。

 

 それが、諸事情のため魔法少女の力を発揮せざるを得なくなって、いつのまにか、昭和で縁の切れたはずの特務師団に所属するハメにもなってしまった。

 魔法少女に休息が必要な事情、言い訳になるかもしれないが、すこし話に付き合ってもらいたい。

 魔法少女は人間離れした能力を持っているんだけど、少女というからには基本的に人間なのであって、とうぜん睡眠をとる。無理をすれば十日ぐらいは眠らずに済むのだが、そういう無茶をやるとガタが来るのも早くて、長期的に見れば稼働時間を短くしてしまうので、できるだけ並の人間のリズムで生きている。

 眠れば、自然に夢を見る。

 魔法少女の夢はクセモノなんだ。

 夢の中で、魔法少女は時空を超えてしまうことがある。無意識の位相変換と言ってもいい。

 時空を超えると亜世界や異世界に飛んでしまう。健康な魔法少女なら、夢をコントロールすることもできるし、意識しなくても目が覚めるころには実世界に戻って来る。

 疲れを貯め込んだ魔法少女は、時々行ったきりになってしまう。

 戻らなくっちゃ。そう思って戻ったところが別の異世界、あるいは亜世界。マズったと思って、再び飛ぶと、又違う亜世界や異世界。

 そういうことを繰り返しているうちに実世界の位相を見失ってしまって、戻れなくなってしまうことがある。体は生きているが、意識というか魂は向こうに行ったままで、自分の力で戻ってくることができなくなってしまう。

 そうなると、より高位級の魔法少女にサルベージしてもらうことになるのだけど、それにも限界がある。

 ほら、一定以上の深海に沈んでしまった潜水艦は、救難艦でも助けられない。大東亜戦争で技術将校に聞いた時は80メートルが限界だと聞いた。今は、どうなんだろう、技術が進んだと云っても200メートルぐらいではないかなあ。

 

 まあ、そうならないために、魔法少女は数十年に一度は休息をとる。

 何度も言ったけど、魔法少女の休息は、普通の生活をすることだ。

 その、普通の生活が、疎かになっているのは、ここまで付き合ってくれたキミ、もしくはアナタには分かってもらえるだろう。

 

 鎮遠と別れた夜、夢を見た。

 

 なぜか飛行機に乗っている。エアバスかジャンボジェットか、かなり大型のジェット旅客機。

 行先は、ハワイか西海岸か。到着すればブリンダが迎えに来てくれるような気がしている。

 戦時中は敵同士だったけど、令和の東京に来てからは仲間同然。

 そうか……そうだな……ブリンダと気ままにワイキキビーチで泳いだり、サンフランシスコのケーブルカーに乗ってみるのも面白いなあ。

 そんなことを思っていると、前の方のシートで立ち上がる女性が居る。

 女性は見覚えのあるメイド服を着ている……クマさんだ!

――クマさーん!――

 呼びかけるが声が出ない。

 くそ、掴まえなくっちゃ!

 通路を走ると、クマさんは螺旋階段を上って上のフロアーに行く。

「お客さま、通路は走らないようにおねがいします」

 CAに注意され、急ぎ足程度に落として追いかける。

 二階に上がると、クマさんは後方に歩いて行き、天井から下りているラダーに足を掛ける。どうやら、上のハッチから機外に出るつもりのようだ。そんなハッチがリアルの旅客機に付いているはずも無いのだけど、ここでクマさんを見逃すわけにはいかない。

 ブワアアアアアアアアアアア

 機外に出ると、猛烈な風で立っているのが精いっぱい。

「クマさーーーーーーーん!」

 渾身の呼びかけにも応えず、クマさんは、左の翼の上を翼端に向かって歩いていく。

「待て、待って、クマさん!」

 やっとのことで、クマさんの手の先に触れるが、それと同時にクマさんは翼から飛び降りてしまう。

「クマさーーーーーーーん!」

 叫んで感じた。

 ここで位相変換が起こっている。

 飛行機の翼を飛び降りるところまでは亜世界だけど、ここからはリアル! 実世界だ!

 

 セイ!

 

 気合いを入れて飛ぼう……としたが、一ミリも飛べずに、そのまま加速して墜ちていく!

 そうか、ブリンダに飛行石を貸したまま!?

 いや、返してはくれたけど、無茶な使い方をしてしまったために、粉々になってしまっているんだ(268『帰ってきたブリンダはエコノミー症候群よりひどかった』)!!

 一般人に比べればスーパーマン並みの身体能力だけど、さすがに、この高度から落下してはもたない!

 もう一度、五感を総動員して現状分析を試みる……が……何度考え直しても、これは、現実世界だ!

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長 アキバのメイドクィーン(バジーナ・ミカエル・フォン・クルゼンシュタイン一世)
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔
  • サム(サマンサ)     霊雁島の第七艦隊の魔法少女
  • ソーリャ         ロシアの魔法少女
  • 孫悟嬢          中国の魔法少女

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査
  • ファントム      時空を超えたお尋ね者

 

 

 

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泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・63『連休初日に寝坊して』

2022-09-13 06:34:11 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

63『連休初日に寝坊して』オメガ 




 朝寝坊したら食パンがなかった。

「遅いからよ!」

 お出かけ準備の仕上がった小菊が蔑んだ目で言う。

 キッチンのテーブルは、食後の湯呑やマグカップが空になって、それさえお袋が片づけにかかっている。朝のバラエティーは祖父ちゃん好みのお天気お姉さんが――素敵な連休をお過ごしください――と締めくくっている。

「えと、じゃ、食パン買ってくるわ」

 寝癖のまんまパーカーだけ羽織って家を出る。

「ちょ、邪魔!」

 ドアを開けると、戻って来た小菊に邪険にされる。なんだか忘れ物をしたようだが、冷やかすなんて無謀なことはしない。

 俺の座右の銘は『波風を立てない』なんだ。

 足許に気配、馴染みの街猫が二匹走って、後ろの猫が、駆け抜けざまに停めてあった自転車をひっかける。

 あ~~~~

 猫一匹のわずかな衝撃なんだが、物の弾みってやつだろう、自転車はジワっと傾いたかと思うと、すぐ横の自転車も巻き込んでガッシャーン!と倒れてしまい、路地と言った方が的確な道は自転車二台に塞がれてしまった。

「しょ-がねーなー……」

 ヨッコイショっと自転車を起こす。

「あーーーもーーーあんたって邪魔しかしないのよね!」

 再び小菊に罵倒される。

 プリプリ尻を振りながら表通りに向かう妹の足元は、さっきまでのエナメルじゃなくって、大人しめのパンプスだ。

 あいつ、このごろおかしいなあ……。

 夕べも「覗いたら殺す!」の捨て台詞。あいつの来客はくぐもった声しか聞こえなかったけど、あきらかに大人の男だった。

 それに、先日は段ボール一箱のポテチが届いていた。

 で、今日は、朝からパンプス履いてお出かけだ。

 女子の服装ってのはよく分からないけど、俺の節穴が見ても遊びに行くと言う風体じゃない。

 なんちゅうか……これから見合いに行ってきまーす!

 有りえねーよな、あいつは高校に入ったばっかしの十五歳だ。

 いやいや、小菊のことは考えるのも無駄ってか、危険でもあるので、脳みそをニュートラルにする。

 朝寝坊には眩しすぎる連休初日の日差しだ。

 この朝寝坊にはワケが有る。ノリスケが遅くまで電話してきたからだ。

 本を拾ってやったことがきっかけで我が親友は一年の女子と付き合い始めた。

 ノリスケは、今まで特定の女の子と付き合ったことが無い。

 あいつのスタイルは広く浅くだ。

 珍しいなあとは思ったが、恋の道は神のみぞ知る。だから、俺は生温か~い目で見てきた。

 それがどうやら悩んでいる。ノリスケ自身は言わないが、状況から、その女子はヤンデレさんのようだ。

――そう言うカテゴライズはするな――

 そう言われたら「あ、そ」という返事になるんだけど、親友を邪険にもできずに男の長話になったわけだ。

 コンビニというのは目的のものを買っても、ついぶらついてしまう。

 雑誌とかカップ麺の新製品とかスナックコーナーだとか……。

 ああ、やっぱしなあ。

 先月には三段の棚にビッシリあったポテチが一段の半分になってしまっている。代わりにコーンスナックが幅を利かせて、俺は少なくなったポテチに同情した。

 この気持ちは間違っている。同情すべきは人間のポテチファンの方なんだ。

 でも……小菊に届いた段ボール箱いっぱいのポテチはなんだったんだ?

 余計なことに関心は持たねえ!

 そう自戒して、五枚切りの食パンを買って帰った連休初日であった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
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