大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・393『江戸川アニメの危機・2』

2023-03-08 10:22:46 | ノベル

・393

『江戸川アニメの危機・2』さくら   

 

 

 その三時間後、うちは真鈴先輩に連れられて都内のスタジオに着いた。

 

 ちなみに移動手段は、車 ⇒ 飛行機 ⇒ 車

 

 パム

 

 アフレコスタジオやから、ドアはスポンジケーキで出来てるんちゃうかいうくらいに小さい音で閉まった。

 ブン

 音がしたわけやないけど、雰囲気としては『ブン』という感じでスタジオ中の人らの首がうちに向けられる。

 ほぼ全員の目ぇが血走ってる。

「や、やあ、急なことで、めんごめんご(^▽^)!」

 宗武真監督一人がハイテンションの笑顔。

 他に、見覚えのある制作進行さんやら脚本さんやらプロデューサーさんやら……それ以外は、見覚えのないスタジオのスタッフさんやらが顔を引きつらせてる。

「おはようございます……て、もう昼やけど、ほんまにうちで間に合うんですか(^△^;)?」

「だいじょぶだいじぶ、台本は読んでくれたよね?」

「はい、もう憶えてしまいました……」

「よし、音監いこうか!」

 監督は、うちの言葉の後ろ半分は聞かんと、眼鏡で表情の読まれへんオッチャンに振った。

 後ろ半分は―― ……けど、ぜんぜん自信ありません! ――なんですけど(-_-;)

 

 飛行機の中での話が思い出される。

 

真鈴: 八話の3カットがリテイクになってね、その中にカリナっていうのが出てくるの。

さくら:香里菜ですか?

真鈴: 香里菜の内面の声的な、みたいな、っぽい、まあ、香里菜の心の声かな。

さくら:はい。

真鈴: ここをね、飾りのない声でやりたいって言うのよ監督は。

さくら:はい。

真鈴: 最初は、新人の声優でやろうってことだったんだけど「うぅ~ん、ここは野生の声でいきたい!」なんて言うのよ。で、声質も似てるし、なんたって香里菜CVの花園あやめはさくらを意識してやってるしね、ここはさくらにやってもらうしかないってことになったのさ。ちょ、なにキョロキョロ探してるの?

さくら:次降りますボタン(꒪꒳꒪;)

真鈴:次は羽田だよ。はい、台本!

さくら:ちょっと、おねえさーん!

客室乗務員:はい、なんでございましょうか?

さくら:この飛行機にパラシュートはないんでしょうか!?

 

『じゃ、本番、テイクワンいきます』

 

 花園さんの香里菜の声だけ入ってるのを二回観て、リハとかテストやと思たら、いきなり本番。

 

香里菜:もう、辛気くさいのはこりごりや。

かりな:辛気くさいのは香里菜や。

香里菜:どういう意味や!

かりな:東京きてから文句ばっかり。

香里菜:せやかて、辛気くさい! 勝手に相談持ちかけてきてからに、うちがまるっとドガチャガに収めたろとしたら、とたんに迷惑顔や。ほんまに、東京の人間は!

かりな:そんな針突き刺すみたいに考えたら、どこ行ったってあかんわ。

香里菜:そんなことないわ!

かりな:人間、ひとに相談したから言うて、解決を求めてるとは限れへん。

香里菜:そんなことないわ。っていうか、それくらい分かってる。あの子らが言うてきたんは……

かりな:いまかて、香里菜、うちに言うてるけど、うちにどないかしてほしいて思てへんやろ。

香里菜:あたりまえやん、これは自問自答や。

かりな:あの子らも、自問自答するような気持ちで話したんとちゃうん。

香里菜:そんなん、分かれへんわ!

かりな:そうかあ……ほんなら、香里菜、あんたが寝てるうちにメール打っといたるわ。いや、電話がええかなあ。あんたは、目ぇ覚めたら顔洗て、クソして大阪帰り。それで、全部リセットや。

香里菜:なんで、かりながメールとか電話とかできんねん!?

かりな:うちは、あんたの本心やさかいな、ほら……もう眠たいねんやろ?

香里菜:え……あ……うちは……くそ、できそこないのアルターエゴ……

かりな:ちゃいます、アルターエゴはあんたの方や。もう起きてこんでええさかい。

香里菜:ちょ、ちょお、待てぇ……

かりな:あはははは……

 

 ビギナーズラックと言うんでしょうか、後で聞いても、我ながらええデキ……と思たのは100%錯覚。

 

「ちょ、駅着いたよ、さくら!」

「へ!?」

 留美ちゃんに怒られて、学校最寄り駅に着いてるのに気付く。

 ただいまの気温 13度  ただいまの自己嫌悪 39度

 東京から帰って三日間、じんわり物思いの春本番です(~ ̄▽ ̄)~。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
  •   

 

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宇宙戦艦三笠45[小惑星ピレウス・2]

2023-03-08 06:30:57 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

45[小惑星ピレウス・2] 修一  

 

 

「間もなく完全惑星直列。一時間でピレウスに着けば、見つかる可能性はないわ」

 舵輪を握りなおして樟葉が呟く。

 俺たちは、完全に惑星が直列になるのを待っていた。それが今、グリンヘルド、ピレウス、シュトルハーヘンの三ツ星が串刺し団子のように一列になりかけている。惑星直列に成れば、三つの惑星の磁場が影響して直列の垂直方向に盲点ができるらしい。一番発見されにくい瞬間だ。


「最大戦速10分。あとは慣性速度でピレウスに到達」

「周回軌道に入ったら発見されてしまうわ」

「周回軌道は1/6周で、ピレウス火山風上の森の中に着陸」

「針の穴に馬を通すようなものね」

「樟葉の腕を信じてるよ……」

「横須賀に帰ったら、ホテルのスィーツバイキングおごりね……クレア、目的地までアナログでいくから」

 アナログ……さすがに息を呑んだが口にはしない。

 言われたクレアだけが小さく聞き返した。

「大丈夫……?」

「デジタルのオートだと、0・005秒惑星直列から外れる。発見される恐れがあるわ。トシ、出力は最大戦速9分45秒。それ以上だと、エネルギー残滓を検知される。いいわね」

「分かりました。タイミングだけはきっちり教えてください」

 トシは、死んだ妹を思った。自分が気づいてやるのが、もう少し早ければ、妹は死なずにすんだ……。

「発進まで10秒……」

 ブリッジの全員がデジタルカウンターを見つめた。5秒でトシは目をつぶり、カウンターではなく樟葉の呼吸に集中した。これに成功すれば、妹が生き返る……そんな妄想が頭を占めた。

 

「5……4……3……2……今!」

 

 三笠のクルーの心が一つになった。完全なタイミングで三笠は発進した。

「…………うまくいきました! 三笠の発進エネルギーの残滓は探知レベル以下、着地点は目標から30メートルずれただけです。デジタルでも、ここまで正確にはいきません!」

 クレアが感動の声で賞賛した。

 偶然だけど、目標地点は地面の傾斜角が30度もあり、そこに着地していれば三笠は転覆していたかもしれないことが分かった。ブリッジの窓から見える風景は、地球で言うカンブリア紀のようで、周囲の木々の高さは十分に三笠を隠していた。


 そのまま三日が過ぎた……なんの変化もなかった。


 ピレウスの森は原始のジャングルのように鬱蒼としていたが、予想していた生物の反応は無かった。外からの観察では人類以外の生物の反応はあったのだ。そして、この三日、植物系以外の生命反応は無い。

「三笠にも、みんなにも劣化や老化の兆候がありません……」

 トシが、首を捻りながら呟いた。

「三笠にバリアーが張ってあるからじゃないの」

「この程度のバリアーなら、ピレウスの滅んだ文明にもあったと思います。このジャングルの下にはピレウス古代文明の軍事基地の残滓があります。ジャングルに覆われているので比較的劣化が遅いので、技術レベルが分かります」

 クレアが、三笠の下の軍事基地の残滓をモニターに写した。残滓からでもかなり進んだ文明の様子が読み取れた。

「火山の方角から生命反応。微弱だけれど……人間よ!」

 その人間は、ピレウス火山を背に、ゆっくりと三笠に近づいてきていた……。

 

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 レイマ姫        暗黒星団の王女 主計長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊

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RE・かの世界この世界:031『無辺街道の眠り姫・2』

2023-03-08 05:24:27 | 時かける少女

RE・

031『無辺街道の眠り姫・2』  

 

 

 寝た子を起こすな……。

 
 言った時は遅かった。

 ケイトがツインテールのお尻を爪先でツンツン。

 
 プギャーーー! 

 
 アニメ調の悲鳴を上げて、ツインテールは地上五メートルくらいに跳び上がった。

「な、なにやちゅ!? 気配を消して機嫌よく昼寝をしておりゅところを!」

「と、飛んだ!」

 羽もないのにホバリングしているのに感心。ケイトは見かけによらず乱暴な反応をするツインテールにビビっている。

「我は主神オーディンの娘(むしゅめ)にして無辺街道を統(しゅ)べるブリュンヒリュデなりゅじょ! 狼藉は許さぬじょ!」

「あ……えと……起こして悪かった。な、ケイトも謝れ」

「あ、ご、ごめん」

 自分でチョッカイ出しておきながら、ちょっとそっけない。

「わたしは剣士のテル、こっちは妹分のケイト。なんだかメッチャクチャ可愛いお人形が横になっていたんで、ついケイトがツンツンしたんだよ。なにせ田舎剣士のことなんで、キチンとした礼も知らないんだ。キミが可愛すぎたからなんだ。ごめん、この通りだ」

 ケイトの頭を押さえて、いっしょに詫びる。

「しょ、しょうか。我の稚けなき可愛さのあまりであったか。しょれならば無下に責(しぇ)めるのも無体というものじゃ……」

 ツインテールは、わずかに機嫌を直して地上に下りてきた。

「む、頭(じゅ)が高い……蹲踞しぇよ」

「そんきょ?」

「畏まって、頭を下げろってこと!」

 異世界ものアニメでやっているように、片膝ついて畏まる……が、それでも、こちらが少し高い。

「むむ……」

 ツインテールはキョロキョロすると、傍らの人の頭ほどの石を見つけて、その上に立った。

「近う寄れ」

 四五歳の子どもがツッパラかっているのはなんともおかしいんだけど、こじらせたくないのと、ここまでの無辺街道が退屈だったので、合わせてみることにする。

「して、しょなたたちは、何ゆえ物々しく武装して我が無辺街道を通るのじゃ?」

「話せば長いことになりますが、我らは並行世界からの旅人でございます。魔物を討伐して、この世界と共に我らの世界の安寧をはかろうと旅をしております」

「そか、しょなたたちも崇高なる使命を帯びておる勇者なのだな。ここで出会うたのも主神オーディンの賜物であろう。もう日も傾きはじめる。ここらで一夜のキャンプにするが良いじょ」

「はあ、しかし、歩き始めて、まだ五時間ほど。今少し距離を稼ぎとうございますので……」

 すると、ツインテールが空を指さす。つられて見上げると、俄かに空は夕闇の茜色に染まった。

「あ、いつの間に?」

「慣りぇぬ旅に、時間の感覚も狂ったのであろう。ゆりゅりと休むがよいじょ」

 ケイトは素直に茜の空を信じたが、わたしは「御免」とことわって立ち上がる。すると、茜の空は、ここを中心とする半径百メートルほどで、その先は、まだまだ昼下がりの日差しだ。

「こ、ここの夕暮れはまばらにやってくりゅのだ!」

「ならば、日差しを拾いながら進んでまいります。行くぞ、ケイト」

「う、うん」

 よっこら立ち上がって回れ右して歩き出すと、ブーーンと音をさせてツインテールが回り込んできた。

「な、ならば、わたちも連れてまいりぇ!」

「いや、二人で行きます」

「この異世界(いしぇかい)、ブリュンヒリュデを供とすれば無敵であるじょ! 奥つ城まで顔パス同然じゃぞ!」

「まっとうに行きます」

「つれないことを申しゅな(;゚Д゚)」

「けっこうです」

「しょこをなんとか」

「いささかウザったい」

「ウザったいくらいが旅の無聊の慰めにもなろうというものじゃ、なあ、どうじゃ、どうじゃ、どうじゃあ(^_^;)」

「あのね……」

「プギャーー! なにをいたしゅ!?」

 ツインテールを掴むと、傍らの灌木の枝にチョウチョ結びにしてやった。こいつは地上にいる限りは大したことは無いと見きったからだ。

「さ、行くぞ」

「いいの、ほっといて?」

「いいわけないだりょ! ほどけ! 連れてけ! 連れてまいりぇ!」

「テル、ちょっと可哀そう」

「仏心を出すな」

「連りぇてけ! 連りぇてってえ! 誰かに連れて行ってもらわなきゃ、オーディンの戒めで無辺街道の外には出れにゃいのー!」

「なんだか、訳ありっぽいよ」

「かまうな」

「プギャー! かまえ! かまえよ!」

 かまってらんないので、ケイトの手を引いてズンズン進んで半ば駆けるようにして街道まで戻った。

 プギャー! プギャー! プギャアアアアアアアアアアア!!

 数百メートル離れてもツインテールの叫び声が付いてくる。戒めが解けるわけもなく、どうやら、街道に居る限りは耳から離れないようだ。

「これは、たまらん!」

 もう、ガンガンと耳鳴りのようになってきて、たまらず戒めの灌木まで戻った。

 涎と涙でグチャグチャになった姿は、まるで、こちらが幼児虐待をしたような気分にさせる。

 しかたなく解いてやる。

「きっと戻ってきてくりぇると思ったじょ! じゃ、よりょしくな!」

「よろしくするかどうかは、お前次第だ」

「まあ、役に立つから、な!」

「行くぞ」

「合点! しょれから、わたちのことはブリュンヒルデって呼べ、ブリュンヒルデ!」

「ブリュンヒルデ……びみょうに長いかも」

 ケイトが困った顔をする。

「大きくなったら呼んでやる。それまではブリだ」

「ブ、ブリ……(;'∀')」

「行くぞ、ブリ!」

 
 三人の旅になって、無辺街道は、まだ道半ばであった……。

 

☆ ステータス

  •  HP:200 MP:100 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
  •  持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
  •  装備:剣士の装備レベル1 弓兵の装備レベル1

☆ 主な登場人物

  •   テル(寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる
  •  ブリ         ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
  •  ペギー        峠の万屋
  •  二宮冴子       二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空       三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美       三年生、ポニテの『かの世部』副部長 
  •  小山内健人      今度の世界の小早川照姫の幼なじみ
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