大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・43『甲府城・4・地下蔵』

2023-03-03 16:04:37 | 小説3

くノ一その一今のうち

43『甲府城・4・地下蔵』 

 

 

 広いと言っても地下のこと、単線のトンネルぐらいの、奥行きは三十メートルほど。

 中央に通路が通っていて、両側は重いものを置いていたのか枕木状に石が並んでいる。

―― レールを撤去した複線トンネル? ――

―― いいや、石は三本ごとに間隔が広くなっている。三本の石を土台にして重いものを置いていたんだ。広い間隔はその重いものを動かすか中身を出し入れするための通路だ ――

 そう言われて、三本を一組で見れば、図書館や大型書店の書架の配置にも見えてくる。本というのは書架にまとめると非常に重たいもので、床はしっかりと補強がしてあると聞いたことがある。

―― 本よりも重たいものだ。三本の石を敷いているのは隙間を作って空気の流れをよくして、湿気やカビから守る必要があった……おそらくは木箱に小分けした金銀の類だろう ――

―― 地下の金蔵? ――

―― 使われていたのは、相当の昔だ。石の上に物を置いた形跡がない ――

 なるほど、触ってみると、石の上も通路の上も同じように埃が積もっている。

 夜目を効かしているが、さすがに、それ以上のことは分からない。

―― 一段落したら灯りを入れて調べてみよう……いや、その時は学者の領分になっているかもしれないがな ――

―― 右奥に通路があります ――

―― 行ってみよう ――

 不定形な岩肌に隠れるようにして通路が穿たれている。

 潜ってみると、数メートルで開けて同じような地下トンネルに出た。

 二人とも足が止まった。

 地下トンネルは、さらに続いている気配なんだけど、直ぐには先が読めない。

―― いくつか枝分かれがあります ――

―― まるで松代大本営のようだ ――

 なんですか?……聞き返す余裕はなかった、トンネルの向こうから、こちらを探る複数の気配がしてきた!

 こういう時の判断は二つ。逃げるか戦うか。

 

―― 逃げる! ――

―― 応! ――

 

 前を向いたまま通路を後ろ向きに飛び退る。

 コンマ5秒で元の石室に戻ると、気配は集約されて覚えのある一人の気配になった。

 

「しばらくぶりだな、その。そして、ずいぶんの久しぶりだな、服部半三」

「猿飛佐助!」

「…………」

「半三、口をきいてくれてもいいじゃないか、古い付き合いだろ」

「…………」

「まあいい。いやはや感服したよ。ひょっとしたら、半三はそのを好きなんじゃないかって勘ぐってしまった」

「な(#;゚Д゚#)!?」

「忍び語りとはいえ、こんなに口数の多い半三は初めて見た。並の弟子になら一年分の量をそのに話しかけていたんじゃないか。なんだか微笑ましかったぞ」

「それは(#'∀'#)」

―― 心を動かすな! ――

―― すみません ――

「まあいい、二人が推測したように、ここは信玄の埋蔵金が収めてあった、一部だがな。ここにあった分はとっくに霧消してしまった。そっちの通路から奥は木下党が発見して活用させてもらった。これ以上の探索は無意味だ」

「フフ、木下の猿がすかしおる」

「やっと声が聴けて嬉しいよ、半三」

「すかすな。無意味なところに姿を現す猿飛ではなかろうが」

「もう一つ教えてやろう、あの本丸の謝恩碑。単なる戒めではないぞ」

「え?」

―― 聞くな! ――

「あれは、武田家の三つ者が大水害の洪水を封じた仕掛けなんだ。封を破れば、ただちに一万トンの水が、この坑道と地下蔵に流れ込む。そして、これが、そのスイッチだ」

「醤油さし!?」

 佐助は懐から取り出したのは、ひょうたん型の醤油さしに似たスイッチだ。

 なにか一講釈あると思ったら、佐助はいきなり、赤いスイッチを捻った!

 

 ドオオオオオン!!

 

 すごい爆発音がしたかと思うと、坑道の向こうからゾゾっと風が吹いてきて、埃と土埃の臭い、そして……

 ドドドドドド!

 かび臭い臭いと共に奔流となって水が迫って来る!

 

 ドガ!

 

 え?

 

 課長代理は、いきなりわたしの鳩尾に突きをくらわして……目の前が真っ暗に…………

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
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宇宙戦艦三笠40[宇宙戦艦グリンハーヘン・2]

2023-03-03 08:41:04 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

40[宇宙戦艦グリンハーヘン・2] 修一  

 

 

 意識が戻ると独房に入れられていた。

 セラミックのような独房には、床も壁も継ぎ目も無かった。ただ、出入り口と思われるところだけが、薄い鉛筆で書いたように、それと分かる程度。独房内はベッドが一つあるだけで無機質この上ない。

―― お目覚めのようだね。体には異常はない。ドアを開けるから、通れる通路だけをたどって、わたしのところまで来てくれ ――

 司令のミネアの声がした。

 通路に出ると、さすがに船の通路らしく、パイプや電路が走り、いたるところの隔壁はロックされていた。通れる隔壁は、あらかじめ解放されていて、十数回行き止まりに出くわして、やがて小会議室のようなところにたどり着いた。


 樟葉が先に来ていて、背もたれのない椅子に座っていた。


「艦長のくせに、遅いのね」

「通路で、ちょっと迷った」

「ハハ、あんな簡単な迷路で迷っちゃうの」

「樟葉は、迷わなかったのか?」

「あたしは、探索のために全ての通路を見て回ったのよ。通路の左側に手をついて、ぐるりと回ったら、全部見られた。遊園地の迷路攻略の方法よ。通路は、いかにも船の中らしいけど、大半ダミーね。配管配線ともに脈絡がない。どの隔壁の通路も何種類かのパターンの組み合わせ。よほど船の構造を知られたくないのね。本気になったら、案外簡単に船の弱点がみつかるかもよ」

「ダミーなのは、オレにも分かった。こんな宇宙戦艦がアナログなわけないものな」

「で、これからどうするの?」

 それから、樟葉の話は質問が多くなった。仲間のこと、地球のこと。

「大きな声じゃ言えない。もっと顔を寄せて」

 樟葉は、興味津々で顔を寄せてきた。

 俺は、いきなり樟葉にキスをした。

 ……なんと、俺の顔は樟葉の顔にめり込んだ……というよりは、重なってしまった。CGバグのポリゴン抜けみたいだ。


―― やっぱり ――


 思った瞬間、樟葉の姿は消えてしまった。

「やっぱり、ホログラムだったんだな。下手な小細工すんなよ、ミネア司令」

 そう言うと前の壁が消えて、部屋が倍の大きさになった。目の前にミネアがいた。


「思ったよりも賢いんだ」

「賢くはないよ。樟葉にキスするいいチャンスだと思っただけ」

「お、針が振れた」

「なんの針だ?」

「東郷君は見えないだろうが、目の前にインタフェイスがあるんだ……ほら」

 ミネアの前に仮想画面が現れて消えた。

「え?」

 今度は俺の前にインタフェイスが現れた。俺をスキャニングした時のままで、心拍数の針が元気に振れている。

「画面をタッチすれば、こっちをスキャンできるぞ」

「これか……え!?」

 軽くタッチすると、ミネアが骸骨になった。

「不器用だなあ、そっとやれ、そっと」

 やり直すと、様々なレベルでミネアの様子が分かる。骨格、筋肉層、内臓配列、神経系、その一つ一つに項目があって――心拍数――と思うだけで、数値とモデル化された心臓の様子が浮かび上がる。試しに、皮膚層で止めようとすると……着衣状態にジャンプしてしまう。

「チ」

「皮膚層はキャンセルしてある、東郷君のスケベ属性は承知しているからな。露出部分ならスキャンできるぞ」

 たしかに、カーソルを胸から首に移すと画像も数値も現れる。

「ほおぉ、泣キボクロが拡大される。ちゃんとメラニンの構造まで分かる。おお……!」

「な、なにを興奮している!?」

「エ、エロイなあ、ミネアのホクロはぁ(^O^;)」

「地球の男は、ホクロで欲情するのか?」

「ホクロってのはな、体のアンナとこやコンナとこの反映なんだ、知識さえあれば分かってしまうんだぞぉ(#^0^#)」

「見るなア(#>0<#)!」

 手で顔の下半分を隠しやがる。

「DNAの塩基配列が妙な規則性があるな……」

「フフ……それは、わたしがグリンヘルドとシュトルハーヘンとのハーフだからだ。この船のクルーはみんなそうだ。ハーフだけで作った遊撃部隊なんだよ」

「でも、グリンハーヘンて船の名前は安直だね」

「分かりやすいだろ、名前なんて符丁みたいなものだから。直に会ったら、東郷君の考えやら思考パターンなんかが良く分かると思ったんだがな、どうやら時間の無駄のようだね。わたしの希望だけは、きちんとしておくぞ。わたしは地球人の絶滅までは考えていない。共存した方が、上手くいくと思っている。例えば、無菌で育った動物って耐性が低いだろ。多少のストレスは抱えながらやった方が、グリンヘルドにもシュトルハーヘンのためになると思っている。いまの東郷君の様子でも再確認できたからな。グリンヘルドもシュトルハーヘンも君たちの能力を高く評価している」

「評価してくれるのなら、寒冷化防止装置ってのを早く渡してくれないか。一刻も早く地球に戻りたいから」

「正直、君たちがたどり着けるとは思っていなかったんだよ、グリンヘルド、シュトルハーヘンの首脳たちもね。装置は、我々が運んで稼働させるつもりだった。しかし、君たちはやってきた」

「俺たちを呼んだのは、ミネア、君なのか?」

「ああ、地球で共存するためには君たちの力を知っておかなければと思ってね。知ったうえで対策を考えなければならない」

「なんだ、対策とは?」

「地球の定員は多めに見積もっても100億といったところだ」

「ちょっと、多すぎやしないか?」

「我々の力なら可能だ。だがね、こちらから移民させるのは50億」

「数が合わない、地球の人口だけで80億。130憶は無理だろう」

「だから、地球人類の半分は消えてもらう」

「なんだと?」

「地球を救うのは我々だ、それくらいの妥協はあってしかるべきだろう」

「勝手なこと言うな!」

「一律に減らしたりはしない。能力と適性を考えて判断する。君たち三笠の乗組員を調べさせてほしい。ここまでやってきた能力と胆力は驚嘆に値する。君たちと、君たちと同等の人類は残す。友好的であるという条件が付くがね」

「奴隷になるか滅ぶかの二択ってわけか」

「そんな目で見るなよ。君たちだって、野生動物たちを適正な数に調整したりするだろうが」

「俺たちは野生動物じゃねえぞ」

「首脳たちの中には地球人類など野生動物同然で殲滅しろと主張するものもいるんだ。こういう友好的なプランを持っているのは、グリンヘルド、シュトルハーヘン双方の血をひくグリンハーヘンの者だけだ。どうだ考えてくれないか」

「考えねえ」

「協力してくれたら、三笠の諸君たちを二級市民として受け入れよう」

「二級?」

「ああ、並みの恭順者には三級しか認められないがな。二級は破格なことだぞ」

「断る」

「どうしてだ? 二級は参政権以外は一級市民と変わらん。君一人だけなら名誉一級市民という道もあるぞ」

「俺たちは共存しようとは思ってない。それって共存とも呼べないけどな。地球は地球の人類と生物のためのものだ。けして隷属なんかしねえ」

「古臭い民族主義だね。もう少しファジーになってもいいんじゃないか」

「ならねえよ」

「そうか、仕方ない。じゃ、他の仲間といっしょに居てもらう。みんなで相談してみるんだね」


 そう言うと、ミネアの前の壁が再生し、左横の壁が消えた。五つのベッドに、樟葉、天音、トシ、クレア、猫の姿に戻ったネコメイドたちは一つのベッドにまとまって眠っていた。


「おい、みんな!」

 仲間に駆け寄ると、今までいた部屋との間の壁が再生し、雑居房になった……。

 

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 レイマ姫        暗黒星団の王女 主計長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊

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RE・かの世界この世界:026『風の向くまま』

2023-03-03 06:42:52 | 時かける少女

RE・

026『風の向くまま』  

 

 

 わたしには、有るべきものは有って、有ってはならないものは無かった。

 
「……健人だけがカミングアウトしたんだ」

「カ、カミングアウト言うなあヽ(≧Д≦)ノ」

 腕をブンブン振って抗議する健人、エキサイトすればするほど黄色い声になるので何ともおかしい。

「ちょ、慣れるのに時間かかるから、興奮しないでくれる……ハ、ハハハ、ハーーおっかしいよ~(≧∇≦)」

「おかしくなんかない……(;_;)」

「さて……」

 右手を上げてウィンドウを開いて、ステータスを確認する。

 
 HP:200 MP:100 属性:?

 持ち物:ポーション・5 マップ:1 所持金:1000ギル

 装備:始りの制服

 
 ポーションがエントリープライズのようだ。使ってみなければ分からないが、ポーションの効き目は250くらいのものだろう。

 いろいろやったRPGの初期回復アイテムの効果がそれくらいだ。

 逆に言えば、ポーションを一回まるまる使っても最大で199しか回復しない(HPは最低でも1は残していないと死亡判定になってしまい、直近のセーブポイントまで戻されてしまう。余った51は反映されない)ので、200というHPが、いかにショボイかが分かる。

 属性は経験値を稼いでコマを進めなければ決められないようだ。

 装備は始りの制服で、たぶん、いま身に付けている学校の制服のことなんだろう。

 攻撃用の武器も防御用の盾やシールドも無いので、システムは分からないけど、早く獲得した方がいいだろう。

 マップは『始りの草原』とある。たぶん、今いる野原がそうなんだろう。後にも先にも『始りの草原』しかないのは、冒険が進むにつれてマップが増えていく仕掛けになっているんだ。

「どこに行ったらいいか分からないよ……」

 同じようにウィンドを開いた健人が、早くも途方に暮れている。

「ヘタレるの早すぎ!」

「わ、悪かったよ」

「とにかく周囲を観察してヒントを探そ……始まったばかりの出発点なんだから、そんなに難しいはずはないよ」

「う、うん……」

 とりあえず立ち上がる。

 アテがあるわけじゃないけど、座ったままだと、気持ちが前向きにならない。

 ノロノロと立ち上がった健人は女の子らしく、制服のあちこちに着いた乾草の欠片をハタハタと掃う。

 ん……乾草の欠片は、わずかに健人の右後ろに落ちていく。

 
 そうか!

 
 わたしは、一掴みの乾草を揉みしだいて粉々にすると「えい!」っと頭上に投げた。

 乾草の粉は欠片よりもハッキリと右後ろに流れていく。

「わかった!」

「え?」

「風の向くままよ!」

 
 草原のあちこちに乾草の山の崩れがある。たぶん、わたし達より先に来た者たちが着地した跡だろう。

 その崩れで乾草を揉みしだいては「えい!」と投げ上げ、風の向きを見失わないようにして進んでいった。

 そうやって十数回繰り返して、やっと草原の中に伸びる一本の道を発見したのだった……。

 

 ☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長 
  •  小山内健人 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ
  •  

 

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