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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 111『柿食えば……』

2023-03-07 16:02:08 | ノベル2

ら 信長転生記

111『柿食えば……信長 

 

 

 ごっくん

 

 一齧りした干し柿を呑み込むとキッチンのアレコレが消えて床だけになった。

 ドアがあったあたりに、小柄な人型の輪郭が現れる。

 この輪郭が人の姿をとったら干し柿どころではなくなるような気がして、もう一齧り。

 ムシャ ムシャ ムシャ…………けして急がない。

 美味いものを急いで食うのは下劣なことだ。

 茶人が言うところの一期一会だ。食べたいときが美味い時。何の用事か知らんが、ここで急く奴は小人だ。

 

 思い出す。

 

 こういう時、光秀はムスっと表情を殺して待っている。とたんに口の中にあるものまで不味くなる。

 サルなら笑顔になる。主が美味そうに食っているのが嬉しそうで、そして、美味そうに食っているのが羨ましくなってきて唾を飲み込み、それでも美味そうに食っていると、ついにはヨダレを垂らす。

「お前も食え」

 言ってやると「ありがたき幸せ!」と早口に言って、いっしょにムシャムシャ。

 気短な権六(柴田勝家)なら目を三角にする。権六が怒るのも面白い。怒らせ甲斐のある奴だから、そのまま怒らせておく。あいつの怒った顔も食い物を美味くしたからな。

 そう言えば、市も機嫌が悪くなったなあ……可愛い顔で「いつまで食べているんですか(;`O´)o!」と顔を赤くする。

 市も、食い物を美味くしてくれた。

 

 さて、こいつは……あ、食い終わってしまった。

 

 そいつの輪郭に中身が現れた……小柄な爺だ。

「なに奴だ」

「天照大神の使いで参った、オモイカネだ」

「オモイカネ? これでも見かけは美少女なんだぞ、美少女に向かって『重いかね?』とは失礼な爺だ」

「だれが体重を聞いておる、思う金の神と書いてオモイカネと読む。これでも高御産神(たかむすびのかみ)の子にして、天照大神の相談役だったりするんだぞ」

「あ、天照が付けると言っていた助手か? あ、ひょっとして、干し柿はおまえか?」

「ああ、ふるさと納税のお返しにも使っている高天原の名産品じゃ。この任務が終わったら箱に入れて送ってやる。まずは仕事じゃ」

「是非もない」

「聞き及んでいると思うが、素戔嗚さまは、高天原を追われて以来、ずっと荒ぶっておられる。人と違って、あちらこちら、時と場所を超えて現れては悪さをなさっておられる……上総介殿にお願いしたいのは、この素戔嗚さまじゃ」

 オモイカネが指を回すと、なにやら行軍中の若武者が3D画像で現れた。

 赤地錦の直垂に赤糸縅の胴丸鎧、陣羽織の背中には桃の実がデザインされて、売れ残りの五月人形みたいな奴。

 桃太郎か?

「いかにも桃太郎じゃ。ただ、荒ぶっておられるので……」

 画面が拡大されると、桃太郎に付き従っているのは犬・猿・雉の三匹だけではなくて三千余りの軍勢だ。

「これをやっつけろと言うのか?」

「いや、桃太郎、すなわち素戔嗚さまじゃが、大願を成就させてあげてもらいたいのじゃ」

「桃太郎の大願成就?」

「左様、桃太郎の大願成就」

「鬼退治か?」

「いかにも。ただ、この鬼退治、お伽話のように簡単にはいかんのだ。鬼がけっこう強くてな、何度立ち向かわれても返り討ちにされておられる」

「返り討ちなら、そこで話は終わりではないのか?」

「そこは神様なのじゃ、蘇ってはチャレンジを繰り返され、いよいよ軍勢は三千にまで膨れ上がった」

「やらせておけばいいだろ」

「それが、繰り返し負けておられるので、戦費も嵩み、犠牲者も多く、これ以上は見過ごしにできんのだ」

「…………で、俺に戦の指南をしろというわけか?」

「御明察。鬼退治を成就させてあげてくれ、この通りじゃ!」

 勢いよく下げたオモイカネの頭はブァリニャーニのようになっていた。

 オモイカネがキリシタンバテレンな訳が無く、これは、長年の気苦労によるものなんだろう。

 昼間の天照を思い出す……むべなるかな(-_-;)

 本能寺以外では失敗のない俺だ、軍勢も三千、なんとかなるだろう。

「分かった、行くぞ!」

「おお、やってくれるか(^▽^)!」

 

 オモイカネの顔が晴れ、とたんに、残っていたキッチンの床が消えて、あたりは尾張の田園地帯のようになったぞ……

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟

 

 

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宇宙戦艦三笠44[小惑星ピレウス・1]

2023-03-07 08:28:42 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

44[小惑星ピレウス・1] 修一  

 

 

 三笠は、用心しながらピレウスの衛星アウスの陰に回った。

 ピレウスは目的地だが、正体が分からない。

 それは覚悟の上だったが、グリンヘルドとシュトルハーヘンの中間に位置し、両惑星から絶えず監視されているに違いない。ピレウスの大気圏内に入ってしまえば、どうやらピレウスが張っているバリアーで分からないようだが、そこにたどり着くまでの間に発見されてしまえば、元も子もない。

「ピレウスが、グリンヘルドとシュトルハーヘンの間に入るのを待つ」


「そうするだろうと思って、惑星直列になる時間を狙ってワープしておいた」

 俺と樟葉は艦長と航海長としてツーカーであった。

「でも、ピレウスに敵が侵入していたらどうするんだ」

 天音が珍しく弱気なことを言う。

 普段は心の奥にしまい込んでいるが、父が中東で少女を救ってゲリラに殺されたことがトラウマになっている。もう大事な仲間を一人も失いたくない気持ちが、天音らしくない弱気にさせているんだ。

「その時は、その時。全てのリスクを排除しては何も行動できなくなる」

「天音の心配ももっともだから、できるだけピレウスと、その周辺をアナライズしておくわ。クレアよろしくね」

「はい、ピレウスの自転に合わせて表面と、地中10キロまではアナライズしておきました」

「結果が、これだな……」

 

 モニターにピレウスの3D画像が出た。

 

「地球に似てるけど、人類型の生命反応がありません。文明遺跡は各所で見られるんですけど」

「まるでFF10のザナルカンドみたいな廃墟ばかりね」

「何かの理由で、人類は破滅したんだな……」

 ネガティブな印象しか持てないほど、その人類廃墟は無残だった。

「この星には、負のエネルギーを感じます。アクアリンドよりももっと強い……これシュミレーションです」

 クレアが、モニターを操作すると、海に半分沈みかけた三笠が映った。

「三笠が沈みかけてる……」

「中を見てください」

 三笠の中には、4人の老人と4匹の老猫、一体の壊れかけたガイノイドの姿しかなかった。

「あれ……オレたちとクレア?」

「はい、一か月滞在していると、ピレウスでは、ああなります」

「いったいどうして……」

「推測ですが、ピレウス人の最終兵器が生きているんだと思います」

「滅んだピレウス人の……あれが?」

「はい、人類と人類が作ったものを急速に劣化させる……そんな装置があったんだと思います。装置そのものも風化して、どの遺物がそれか分からないけど、その影響だけが今でも残っているようです」

 クレアは、予断を与えないように、あえて無機質な言い方をした。

「これなら、グリンヘルドもシュトルハーヘンも手の出しようがないわね」

「でも、それで何万光年も離れた地球に目を付けられてもかなわない」

「それよりも、あんな死の星から誰が地球に通信を……それも地球寒冷化防止装置をくれるなんて」

 ブリッジは沈黙に包まれた。

「あの……」

「なんだ、トシ?」

 トシの一言で沈黙は破られたが、事態を進展させるものではなかった。

「三笠のエネルギー消費が微妙に合わないんです」

「どのくらい?」

 樟葉が敏感に反応した。

「誤差の範囲と言ってもいいんですけど、1/253645帳尻が合わないんです」

「ハハ、トシもいっぱしの機関長だな。それはアクアリンドのクリスタルを積み込んだせいだろう。あれだって、人間一人分ぐらいの質量はあるから」

 修一の結論にみんなは納得した。

「…………」

 ただ、トシは、それが人間一人分にあたることが気にかかっていた……。

 

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 レイマ姫        暗黒星団の王女 主計長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊

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RE・かの世界この世界:030『無辺街道の眠り姫・1』

2023-03-07 07:10:40 | 時かける少女

RE・

030『無辺街道の眠り姫・1』  

 

 

 無辺街道は単調だ。

 
 シリンダーをやっつけた後のしばらくは思わなかった。

 小さな起伏はあるし、街道の両側は草むらやら林や小川やらの変化があって、ちょっとした遠足気分。

 途中、もう一度だけ空間が歪んでシリンダーの団体が現れたけど、単調な攻撃パターンに慣れてきて一撃で倒せるようになると、あまり姿を見せなくなった。

「こんど現れたら、あたしがやっつけるのに!」

 言葉遣いまで女子化したケイトがぼやく。

 ただの強がりだとは分かっているんだけど「そうだね」と合わせておく。

 

 そうして五時間も歩いていると、慣れてきたというよりは飽きてきた。

 

 景色は相変わらず似たような、というか完全に同じ草むらやら林や小川の繰り返しで、たまのクリーチャーの出現も同じ。遊園地のアトラクションをグルグル回っているような気になってきた。

「なんか、手抜きのインディーズゲームみたいだ……ロケーションも敵の攻撃もただの繰り返し……ほら、あの薮の向こう……」

 ボヤキながら弓を射るケイト。

 シュッ! ピギ!

 現れると同時に射抜かれて、さっきと同じに二回転して墜ちていくシリンダー。

「このパターンは100回は超えてるよ」

 このボヤキが悪かったのか、それからはクリーチャーさえ現れなくなった。

「尻取りでもしようか?」

 小学生でも言わないような暇つぶしを提案すると「うん、やろう」と同意してきた。

 とにかく、このままでは歩きながら寝てしまいそうなくらい退屈だったのだ。

 
 ケイト……トンマ……まぬけ……けだもの……のろま……まぬけ……しまった!

 
 ボキャ貧のケイトは簡単に玉砕してしまうが、それが刺激になって退屈退治という所期の目的は果たせている。

「あれ? 降参?」

 メンマとか按摩とか「マ」で終わる言葉を連発しているとダンマリになって来た。

「ちがう……寝息が聞こえる」

「寝息?」

 立ち止まってみるが、草木がかすかにそよぐ以外の音は聞こえない。

「こっち」

 ケイトは手にした弓の先で街道脇の茂みを指した。

「どこいくのよ?」

 確信があるのか、ケイトはズンズン茂みの中を進んでいく。

「そんな滅法に進んだら、戻れなくなるわよ」

「すぐそこ」

 戻る道を気するわたしに、ケイトは確信的に指をさした。

 
「「あ……!?」」

 
 そこには、四五歳のツインテールの女の子が体を丸めて眠っていたのだった……。

 

☆ ステータス

  •  HP:200 MP:100 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
  •  持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
  •  装備:剣士の装備レベル1 弓兵の装備レベル1

☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長 
  •  小山内健人 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ
  •  ペギー   峠の万屋  
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