大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・395『湘南からの写真』

2023-03-19 16:10:16 | ノベル

・395

『湘南からの写真』さくら   

 

 

 朝に本堂であげるお線香の順番。

 ご本尊の阿弥陀さま ⇒ 聖徳太子ご尊像 ⇒ 歴代住職絵像

 いつもやったら、この三つなんですけど、昨日から一つ増えた。

 

 釋恋女(しゃくれんにょ)さんのお骨。

 

 釋が付くのは浄土真宗の法名です。他の宗派で言うところの戒名。

 法名は、お葬式で導師を務めた坊さんが付けます。

 釋恋女と付けたのはテイ兄ちゃん。

「恋の字使うのは、ちょっと艶めきすぎてへんかあ」

 おっちゃんは反対したんやけど、テイ兄ちゃんは押し切った。

「昴が『恋』の一字は入れてくれて言うしなあ、俺も『恋』は外されへんと思うんや」

 そない言うて仮位牌にけっこう上手な字で書いたんが六日前。

 そうなんです、この釋恋女さんは、俗名今井瑞穂。

 つまり、うちと留美ちゃんが毎朝自転車を預けてるスナック『はんぜい』の奥さん。

 奥さん言うても、うちらとあんまり変わらへん18歳。

 

 正月にお礼を兼ねて挨拶に行った(377『テイ兄ちゃんの偵察に付き合う』)。

 マスターの昴さんは、テイ兄ちゃんの大学の同期で歳は同じ30歳。

 結婚の知らせを受けた時、彼女いない歴=年齢の従兄の頬っぺたは引きつっとった!

 しかし、阿弥陀さんの啓示を受けたのか、ちょっと冷静になって友だちに聞きまくって事情を知って、その上に――自分の目で確かめる!――の信念で、うちを連れて偵察に及んだという次第。

 とにかくデレデレの新婚夫婦で、あれだけムカついとったテイ兄ちゃんが、わりと穏やかな顔でデレデレ新婚夫婦に付き合ってたんは不思議やった。

 学校が始まって、留美ちゃんとチラ見したお店の中では、十八とは思われんほどにテキパキ働いてた瑞穂さん。

 二人は、新婚生活が一年も続かへんことを承知で結婚したんや。

 昴さん、瑞穂さんのどっちが言い出したのかは分からへんけど、ほんまやったら何十年もあるはずやった二人の時間を四カ月で駆け抜けたんや。

 

「さくら、昴が写真送ってきよった」

 

 テイ兄ちゃんがタブレット持ってキッチンにやってきた。

 留美ちゃんと二人晩ご飯の下ごしらえしてた手を休めてリビングに行く。

「あ、やっぱり湘南の浜辺だ(^▽^)」

「ほんまや、よかったねえ、ええ天気で」

「ちゃんと瑞穂ちゃん抱っこしてからに……」

 湘南の浜辺、江ノ島をバックに砂浜に座ってる昴さんの膝の上に袱紗の袋に収まった小さな骨壺。

「二人で湘南の海辺を歩くのが夢や言うとったさかいなあ」

「このために分骨したんですか?」

「それもあるけどな、瑞穂ちゃんの家は山梨の甲府や。ご両親やら向こうの親類の事考えたら分骨するのが自然やろ」

「動画やったらよかったのに……」

「そうだね、この昴さんと瑞穂さん、波の音が似合うと思う」

「せやな……せやけど、これは昴の照れや、動画やったら、ちょっともたへんと思う」

「そうかもしれへんねえ」

「あいつも、三十のオッサンやねんで」

 他に、江ノ島のでの写真、江ノ電の踏切、鎌倉高校前のプラットホーム……なんや、アニメの聖地巡りみたいで微笑ましい。

 最後の一枚は小田急江ノ島の駅前。

―― これから瑞穂の実家に向かう ――

 短いコメントが入っていて、マスターの気持ちが伝わってきた。

 

 夕刊をとりに山門に向かう。

 境内から見上げる空は三日ぶりの晴天、せやけど湘南の空の方がもうちょっと青いような気がした。

 山門横のポストに夕刊は入ってへん。

 そうか、今日は日曜日やった(^_^;)。

 

 ニャ~~

 

 足元でダミアの一声「アホやなあ」いう感じに聞こえた。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
  •   

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE・かの世界この世界:042『ゲペックカステン』

2023-03-19 06:36:08 | 時かける少女

RE・

42『ゲペックカステン』テル  

 

 

  北門は南側の正門ほどの大きさではないが賑わいは比べ物にならない。

 
 城塞都市の日常生活をまかなう物資を積んだ大小さまざまのトラックが行き来し、商売や仕事で出入りする人々がバスや車、あるいはバイク、あるいは荷車や自転車、近隣の者は行商の大荷物を背負って行き来している。

 道の中央二車線は軍用車優先で、軍用のハーフトラックや装甲車、戦車が通る。中でも快速で軽快な二号戦車が半分近くを占めていて、我々の二号戦車も、その中に混じっている。

「なるほど、これなら目立たないな」

 そう呟くと、タングリスがクスリと笑う。

「目立たないもなにも、われわれ四人は正規の警備兵として登録されています。遊撃警備隊に属しているので、どこをどう通ろうと怪しまれません」

「でも、こんな子供みたいなの連れていたんじゃ、いくら警備隊のコスを着ていてもダメだろう」

「珍しくはありません、ほら、前からやって来る部隊……」

 タングリスが示したペリスコープを覗くと、警備任務から帰還してくる二号の車列が見える。数えて五両の二号は乗員たちが車外に出て、砲塔に腰掛けたり、道具入れの上に腰掛けたりしてくつろいでいる。

 そのくつろいでいる兵士の半分は女性であったり少年少女であったりする。

「ここからは言葉を改めます。軍服を着ている手前、こちらが上官ですので」

「あ、ああ、もっともなことだね。やることがあったら、遠慮せずに命じてくれ」

「では、さっそく。外に出て手を振ってやれ」

 さっそく口調が変わって、ちょっとたじろぐ(^_^;)。

「「え、いいのか!?」」

 ブリとケイトは気にも留めずに声が弾む。タングリスがハッタリをかまして「人目についてはいけません」と言っていたので、北門を出るまでは二号の狭い車内で辛抱していた。その開放感の方が大きいようだ。

 タングリスの意地悪にはには訳がある。

 リュック二つ分のおやつを諦めきれないブリが、タングニョーストに取り上げられたお菓子を魔法で取り戻してゲペックカステンの中に潜ませているのだ。

 二号の履帯ガードの上には左右共に大きなゲペックカステンという道具入れが付いている。ゲペックカステンは飾りではなく、戦車のメンテに必要な器具や野営の道具などが入っていて、余計なものを入る余裕はない。

 そこに無理やりお菓子を詰め込んだもので、一部の道具は下ろしてしまった。それで、タングリスは意地悪を言ったのだ。

「プハー! やっぱ、外の空気はおいしいぞ!」

 砲塔に腰かけて伸びをするブリに、すれ違う二号の乗員たちが手を振る。

「任務ごくろうさま!」

「あんたら、これからか、ごくろうさん!」

 元気よくエールの交換。だれも、ブリがブリュンヒルデ姫だとは気づかない。やっぱ、トール元帥がュンヒルデを取ってしまった効果は大きいようだ。

 
 しばらく行くと、一両の二号戦車が路肩に停まっていた。

 
「すまん、ちょっとツールを貸してくれんか」

 腕まくりして油まみれになった車長の軍曹が声をかけてきた。

「ここにきてエンコかい?」

「ああ、だましだまし来たんだが、北門の目前でこれだ」

「レッカーを呼べばあ」

 ブリが、なにごとかを予感してアドバイス。

「それは最後の手段だ、レッカー呼んだら、報告とか始末書が大変だからな」

「……(#・∀・#)」

 
 ブリは汗が出てきた。メンテツールはあらかた下ろしてしまっている。

 ケペックカステンを開けてしまえば大量のおやつがバレてしまう!

 
 ヤ、ヤバイ……ブリの心の声が聞こえてくるようだった。

 

☆ ステータス

  •  HP:250 MP:150 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
  •  持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
  •  装備:トールソード 剣士の装備レベル1  トールボウ 弓兵の装備レベル1

☆ 主な登場人物

  •     テル(寺井光子)        二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)      今度の世界の照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる
  •  ブリ              ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
  •  タングリス              トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
  •  タングニョ-スト        トール元帥の副官 タングリスと共にブリの世話係
  •  トール元帥           主神オーディンの将軍
  •  ペギー            峠の万屋
  •  二宮冴子           二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空           三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美           三年生、ポニテの『かの世部』副部長 
  •    

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする