大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・011『茶筒の檻の正体』

2023-03-09 15:53:32 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

011『茶筒の檻の正体』   

 

 

「これはガスタンクだわよ」

 

 茶筒の檻の写真を見ると、老眼鏡もかけないで、あっさり言った。

「だって、お祖母ちゃん、こっちのは中身が無いんだよ、ただの檻だよ!」

 証明写真を撮りに行った日の檻だけになった写真も見せて説明する。

「昔はガス圧が足りないとかで、あちこちにガスタンクがあってね、溜めておいて少しずつ流したり、ガスを融通しあったりしたとか。それで、ガスが少なくなったら縮むんだよ」

「ええ、ほんとう!?」

「ガス会社に勤めていたわけじゃないから専門的なことは分からないけどね、みんな、そう思ってたよ」

「な~んだ……」

「そんなのググったら出てくるでしょ」

「んなの、いちいち検索しないよ。それに、茶筒の檻だって思ってたし。ひょっとしたら、ガンダムとかエヴァの格納庫とかさ……ほら、コンセプト似てなくなくない?」

 もう一つ別の最近の写真を見せてやる。

「え、なに、CG?」

「違うよ、実物大ガンダム。横浜にあるんだよ。ほら、動画もあるよ!」

「え…………お、おお!」

「中学の授業が終わった次の日に行ってきたの、壮観でしたよぉ!」

「なるほどぉ…………お祖母ちゃんの時代は鉄人28号だったからねぇ、テレビで実写版とかやってたけど、着ぐるみのショボい奴でねぇ。こいつは男前なロボットだねえ。だれか操縦してんの?」

「うん、中にパイロットが入ってグイグイやんの。完全にシンクロすると死んじゃうんだよ、で、使用を禁止されたりとかね」

「なんか、おっかないねえ。鉄人は正太郎くんがリモコンで操縦するんだけどね……ほら、こんなの」

 杖代わりにボールペンをクルリと回して3Dの映像を出すお祖母ちゃん。

 さすがに、スマホでも魔法には敵わない(^_^;)

「……なんか、デブで足短い」

「昔はこうだったのよ……おお、ガンダムも飛ぶか!?」

「設定じゃ飛ぶんだけどね、さすがに飛びません(^_^;)」

 確かに、しゃがんで片膝たてたポーズは期待しちゃうけど。せめて、走れ!……とかね。

「なるほど……こういうの見たから、ガスタンクの鉄骨とか見ると思っちゃうわけだ」

「まあね……他にも、駅前はこんな感じでね……」

「ああ、そうだそうだ。70年は万博の年だったんだ!」

 商店街に流れる三波春夫の『世界の国からこんにちは』に目をへの字にするお祖母ちゃんも可愛い。

 自粛しているつもりだったけど、いつの間に撮ったんだという写真や動画とかあって、自分でもビックリ。

 明日は証明写真ができあがる。

 それを受け取りに行って、その次は、いよいよ入学式。

 わたしの時空を超えた越境入学が本格的に始まる。

 ワクワク

 お祖母ちゃんと、いろいろ話したせいか、明日は写真を受け取りに行くだけなのに、ちょっと興奮して夜更かしをしてしまった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 宮田博子

 

 

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RE・かの世界この世界:032『無辺街道半ば』

2023-03-09 07:45:13 | 時かける少女

RE・

032『無辺街道半ば』  

 

 

 こんなやつでも街道の主なんだろう。

 
 魔物やクリーチャーに出くわさない。

 まあ、無辺街道程度の化け物なんか屁でもないんだけど、バトルの度に足を止められるのもかなわない。

 しかし「ブリのお蔭だな」なんてことは口にしない。

 誉めたりお礼を言ったりすれば、見た目四五歳の幼女にしか見えないブリは見かけ通りに「ニヘヘヘ」とか笑っていい気になるのに違いないからだ。

 こいつがいい気になったら、プラウダ高校のカチューシャよりも鼻持ちならないに違いない。


 タタタタ 

 ブリがいきなり駆けだした。

 
 駆け出して、そのまま消えてくれてもいいんだけど、また、シリンダーとかの化け物に出くわすのも嫌だ。

 ちょっと待ちゅのだ!  

 言おうとしたら立ち止まり、ピョンとジャンプして両手を広げて振り返った。

 
「ここが無辺街道の真ん中だじょ\(° ꈊ °)/!」

 
「そうか、思ったより早かったね(-^o^-)」

 ケイトが無邪気なくらいホッとして、担いでいた弓も荷物も下ろしてしまう。

「なにをホッとしてるんだ。真ん中なら、もう少し稼いでおこう。まだまだ陽は高いんだからな」

「ま、真ん中なんだじょ。一区切りなんだじょ。ケイトの言う通り一休みするのが当たり前じゃにゃいか(;`O´)o」

「そういう根性が堕落の元なんだ。夏休みの真ん中で気が緩むと、あとはグダグダになって宿題をやり残して最終日にオタオタすることになるんだぞ」

「船らって、赤道を通過(ちゅうか)しゅゆときは赤道祭りをやって一休みするんだじょ!」

「休もうよおおお」

 仕方がない、二対一の三人旅だ。

「仕方ない、じゃ……ちょうどそこが宿営にピッタリだ」

 

 街道から少し入ったところが五十坪ほどの空き地で、先達たちがキャンプした跡もある。

 

「火をたいた跡もある、キャンプの用意をするか」

「どうやって火を起こすの?」

「なんら、ケイトは火も起こしぇないのか?」

「ふつう出来ないと思うよ」

「ガルパンではやっていたぞ、大洗女子が廃校になって寄宿生活始めた時に弥生時代みたく火を起こしていた」

「あれはアニメだろーが」

「マッチの使い残しがあるじょ。前に通ったやちゅが残していったんら」

 ブリが一抱えの薪といっしょに持ってきた。

「これ、学校のプリントだ」

 ケイトが燃え残りをつまみだした。

「先行した女子たちだな、ここでキャンプして先に進んだんだな」

「ちがうじょ」

「なんで!?」

 ケイトが突っかかるように聞く。自分を置いてけぼりにした相手だ、思うところがあるんだろう。

「ここから先に進んだのらったら、栄光の旅立ち、街道の先に行った足跡が光り輝くのら! ひと月ほどは残るんだじょ」

「ひと月より前かもしれないじゃん」

「そんなに前なら、マッチなんか湿気って使えないぞ」

「じゃ、ここで打ち上げのキャンプやって帰っていったってこと?」

「愚か(おりょか)な奴やだ、ここで戻ったら参加賞しかもらえないじょ」

「参加賞じゃ、だめなのか?」

「参加した者は安穏な人生が保障されるけじょ、世界の平和は二三年しか保証されないじょ。最後まで行ってミッションコンプリートしなければ、おまえたちの世界に本当の平和は訪れないのだじょ。フン、ヘタレの愚か者たちめ!」

「そうなの?」

「しょれに……」

「な、なんだ、その意地悪な目は!」

「こいつらが戻ったんなら、出口は閉じてしまっているじょ。エヘヘ、おまえたちは戻れないじょ」

「「そんなあ!」」

「戻りたいのなら、最後まで行ってミッションコンプリートしゅりゅことら」

「そうなの?」

「ああ、プロットの段階で決まったことだかりゃな」

「プロット?」

「そうだ、こりぇは、神がプロットの段階で放り出した世界なのにゃ」

「神って、ブリのお父さんのオーディンか?」

「しゃらに上の神なのりゃ、創造神なのりゃ……」

 最後までやって、真の勇者になるまでは終わらない設定なんだった(;゜Д゜)。

 て……なんで自分が作ったような気になってるんだ?

「やろう、三人で真の勇者を目指そう!」

「「お、おー!」」

「で、創造神って、だれ?」

「ミツコと言われてりゅ、それ以上は禁忌、考えると頭痛くなりゅ」

「テルは知ってる?」

「それは……」

 グラリ……うっ(><”)!

 とたんに目眩がして頭が痛くなる。

「テル!?」

「な、禁忌にゃ。しゃっしゃとキャンプの用意しゅるにゃ」

「そうだな……」

 火おこしに没頭すると、噓のように痛みがひいて、仰いだ空には、もう星が瞬き始めていた。

 

☆ ステータス

  •  HP:200 MP:100 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
  •  持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
  •  装備:剣士の装備レベル1 弓兵の装備レベル1

☆ 主な登場人物

  •   テル(寺井光子)   二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる
  •  ブリ         ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
  •  ペギー        峠の万屋
  •  二宮冴子       二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空       三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美       三年生、ポニテの『かの世部』副部長 
  •  小山内健人      今度の世界の小早川照姫の幼なじみ
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