大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・010『証明写真を撮りに行く』

2023-03-04 16:11:03 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

010『証明写真を撮りに行く』   

 

 

 ……ブラウスだけにしとく。

 

 そう言うと、お祖母ちゃんは上着とボータイを紙袋に入れてくれる。

「そうだね、フル装備は入学式までとっておこう」

「うん、一式持つとけっこうな量だからね……じゃ、言ってきます」

 ブラウスの上にカーディガンひっかけ、下駄箱の上のローファーに―― キミも入学式の本番でね ――と一撫でして、いつものスニーカーを履く。

「ってらっしゃい……」

 半身で手を振ってキッチンにとって返すお祖母ちゃん。

 糠漬けをするんだって夕べから張り切ってたんだけど、新品の制服にニオイが移っちゃいけないって待ってくれていたんだ。

 コンクリの『M』の標を確認して一歩踏み出すと『戻り橋』が現れる。

 いちど写真に撮ろうかと思ったけど、あっちの世界に行くのを見られるわけにはいかない。

 お祖母ちゃんの話だと、橋を渡っている最中は次元の狭間だとかで、人には見えないらしい。

 橋が現れて、橋に足を掛けるまでのコンマ何秒かが人に見えてしまう。だから、ノンビリ写真を撮るのはNGなんだ。

 

 ゴーーーー

 

 ダムの上を渡ってんのかという感じの時の流れる音には、まだ慣れない。

 そそくさと渡って1970年に足を踏み出す。チラっとだけ『G』の標を見て歩道を歩く。

 前回は、慣れなくって、ちょっと探したからね(^_^;)。

 荷物少なくしてよかった。

 もうババキャリーを引っ張っていくわけにはいかないしね。

 最初は、上から下まで制服を着ていかなきゃならないのかと思った。

 で、よくプリントを読むと―― 証明写真なので上着とブラウスとボータイだけでよい ――と書いてあった。

 そうだよね、上半身だけなんだし、ベストとスカートとローファーまで紙袋に入れたら、けっこうな量だよ。

 といって、上から下まで制服というのは抵抗がある。

 入学式もまだなんだからね。

 ほんと言うと、上着やブラウスも入学式にお初にしたかった。

 だいたい証明写真て、学校でまとめて撮るもんだ。そうすれば、生徒も写真屋さんも手間が省けるのに。

 

―― 明日も待ってる めぐみ ――

 

 切符を買おうと自販機に並ぶと伝言板のメッセが目に入る。

 こないだも有ったよね―― 明日も待ってる めぐみ ――ってさ。

 物品販売の時はキャリーが気になって見てなかったけど、あの時もあったのかなあ。

『めぐみ』って、メッセを書いた人? それとも伝えたい相手?

「ちょ、空いたよ」

「あ、すみません(;'∀')」

 急いで切符を買う。

 ンガーー

 大げさな音がして切符が出てくる。インクが手に付かないように、両端を挟むようにして切符を持って改札へ。

 注意した人が追い越していく。

 あ!

 乗り越し運賃で駅員さんに怒られてたやつ。

 ひょっとして、宮之森?

 いや、物販じゃ見かけなかったし。

 ああ、マジマジと人を見ちゃダメだ(^_^;)。

 

 茶筒の檻!

 

 電車のガックンガックンをいなしながら景色を見ていると、例の茶筒の檻が見えてくる。

 え…………檻だけで茶筒が無いんですけど!?

 茶筒のやつ、脱出に成功した!? っていうか、なんなのよあれ!?

 あれは、なにかのカプセルで、あれがパッカーンて割れたらガンダムとかエヴァ初号機的なものが飛び出していくとか!

 パシャ

 誘惑には勝てないで、スマホで撮ってしまう。

 ウ……前に座ってるオバサンが非難の眼差し……と思ったら、バッグからコンパクト出してファンデのノリとか確かめた。

 そうか、わたしのスマホを手鏡だと思って、今朝のメイクが気になってコンパクトで確かめた的な?

 宮之森城は、やっぱり見えない。

 

 あっという間に宮之森。

 

 軍艦マーチと三波春夫に迎えられ、早くも慣れた放置自転車を器用にかいくぐって商店街の写真館。

「ああ、制服なら撮影用のがあったんですけどね」

 にこやかに応対してくれたマスターがカーテンを開けると、各種サイズの制服がキャリーハンガーにズラリ。

 そういや、七五三の衣装も揃えてたよね。

 ブラウスなんか、ボータイを縫い付けた前半分だけのがあったりして、至れり尽くせり。

 こういうサービスがあるんなら、ちゃんと書いておいて欲しいんですけど。

 癪だから、自分の上着とボータイで撮った。

 撮り終えて、写真の仕上がりは明後日と聞かされて、またビックリ( ゚Д゚)!

 証明写真て、プリクラみたく、その場で出てくるもんだと思ってたし。

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 宮田博子

 

 

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宇宙戦艦三笠41[宇宙戦艦グリンハーヘン・3]

2023-03-04 09:02:43 | 真夏ダイアリー

宇宙戦艦

41[宇宙戦艦グリンハーヘン・3] 修一  

 


「ええ! また偽物!?」

 樟葉が警戒心丸出しの表情で後ずさる。気づくと天音もトシも、クレアでさえ疑惑の目で俺を見て、ネコのままのネコメイドたちは「フーーーー!」って唸りながら毛を逆立てる。

「どうやら、おまえらもホログラムの偽物に会ったみたいだな……」

 そう言いながら壁を叩く。

 ドンという音がして、みんな安堵のため息をつく。ちょっと、手が痛かったけどな(^△^;)。

「こっちも体が触れ合うまでは、分からなかった」

「触れるって、どんな風に?」

「何気なく肩に手を掛けたら、素通しになった」

「修一が、あんまりグダグダ聞くんで、おかしいと思って……」

「オレといっしょだ。樟葉がくどかったから、おかしいと思った」

「いっしょだ。あたしは頭をはり倒したら、空振りになった。修一は?」

「キスしようとしたら、顔が重なってしまった」

「ええー、キスなんかしたの!?」

「だから怪しいと思ったからさ。ちょっと大きな声じゃ言えないって誘ったら、顔を寄せてきた。で、ホログラムの偽物だって分かった」

「本物だったら、どうするつもりだったのよ!?」

 樟葉がむくれた。

 他のやつらは呆れながらも笑ってる。

「しかし、なんだな……俺たちって、あんまりスキンシップしてなかったんだ」

「されてたまるか!」

「それは文化の差よ。ウレシコワさんやジェーンさんはよくボディータッチやハグしてくれてた。日本人はしないから」

 クレアがフォローした。

「しかし、なにもキスしなくてもさ!」

「とっさだよ、とっさ!」

「それより、本物の艦長かどうか確認しておきましょう!」

「そうだな、ホログラムの偽物に会ったって言うけど、油断させるための罠かもしれん」

 トシの提案に天音が同意して、四人と四匹で迫って来やがった。

「ちょ、おまえら目つきが怖い」

「いくぞ!」

「ちょ、やめ、いて! 痛い! ちょ、アハハ ギャハハ……」

 で、捻られたり、つねられたり、くすぐられたり。俺は、まるで罰ゲームのような目に遭った。

「艦内に動きがあります……三笠にかなりの人数が……」

 笑い死ぬかと思った時、クレアが警戒の顔つきになった。

「何をしに行ってるんでしょう」

「あたしたちの情報を総合して、まだ誰か残っている人間がいると思っているらしいです……」

 クレアも自分でバージョンアップしているようで、この秘匿性の高い敵艦の中でも、ある程度は読めるようだ。

「他に、人間て……」

 みんなの頭の中で、同時に一人の顔が浮かんだ……ミカさんだ。

「敵に動き。三笠から退去しようとしています!」

「……ミカさんは船霊、神さまだから、予見できない能力を恐れたんでしょう」

 クレアの分析は正しく、ミカさんの能力は、そのクレアの分析を超えていた。なんと三笠に乗り移った敵兵たちが、三笠の艦内に閉じ込められてしまったのだ。

 そして、ミカさんの力は、それだけでは無かった……。

 

☆ 主な登場人物

 修一(東郷修一)    横須賀国際高校二年 艦長
 樟葉(秋野樟葉)    横須賀国際高校二年 航海長
 天音(山本天音)    横須賀国際高校二年 砲術長
 トシ(秋山昭利)    横須賀国際高校一年 機関長
 レイマ姫        暗黒星団の王女 主計長
 ミカさん(神さま)   戦艦三笠の船霊
 メイドさんたち     シロメ クロメ チャメ ミケメ
 テキサスジェーン    戦艦テキサスの船霊
 クレア         ボイジャーが擬人化したもの
 ウレシコワ       遼寧=ワリヤーグの船霊
 こうちゃん       ろんりねすの星霊

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RE・かの世界この世界:027『ペギーの店・1』

2023-03-04 07:02:19 | 時かける少女

RE・

027『ペギーの店・1』  

 

 

 しばらく行くと道は二つに分岐していた。

 
 二つの道は、いずれも畦道ほどのものでしかないけど、左側の方は、少し進んだところに宝箱が見える。

「あ、宝箱(^▽^)!」

 わたしの陰に隠れるように付いてきた健人は宝箱を開けようと駆け出した。

「ちょっと待って」

「え、なんでえ?」

「序盤でミミック(宝箱に化けた魔物)ってことは無いだろうけど、大事な選択肢だと思う」

 
 インタフェイスを開いて調べてみる。

 
―― 開ける前に難易度を選択すること、選択肢は、A・イージー B・レギュラー C・ハード D・ベリーハード E・ナイトメア ――

「どれにする?」

「もちろん、イージー! サクサク進みたいからね♪」

 わたしの意見も聞かずにA・イージーをクリックする健人。ま、いいけど。

 
 パッカーーーン 

 
 子ども向けアニメのようなエフェクトと共に宝箱が開く。

―― メンバー全員にポーション五つずつ ――

 ガチャピ~ン

 レトロなレジのような音がして、アイテム欄に五個のポーションが加えられた。

 
 HP:200 MP:100 属性:?

 持ち物:ポーション・10 マップ:1 所持金:1000ギル

 装備:始りの制服

 
「なんかショボイ」

「かわりに何かあるよ、きっと……」

 首を巡らせると、いままで来た道が消えていて、右側の道はいばらの道に変わってしまって、こちらの道の先は、分かりやすく虹がかかっていたりする。

 
 その道をしばらく行くと、ささやかな峠に異世界めいた田舎風の小屋が見えてきた。

 
 小屋ではあるんだけど、屋根やら軒やら壁やらに「激安の殿堂!」「ビギナーの味方!」「なんでも揃う!」「毎日特売!」など看板のネオンサインがキラキラ瞬きはじめる。

「どうやら、ここで初期装備を整えるみたいね」

「でも、肝心の店の名前が書いてないよ」

 女子化が板についてきた健人が可愛く口を尖らせる。

 すると、看板の全てが『ペギーの店』という店名だけになって、矢印が入り口を示した。

 
 ジャ~ン! ようこそペギーの店に!

 
 ドアをくぐると、店内いっぱいに声が響いた。

 声がするからには、店のオーナーとかスタッフが居るんだろうけど、わたしも健人も店内の広さと品数の多さに驚くばかり!

 外側は間口四メートルほどの小屋なのに、中は東京ビッグサイトほどの空間になっていて、雑多なグッズの山が本来の意味でのアマゾンのようだ。

 ボワ~ン……☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆!!

 「ルーキーの味方! 安売りコンシェルジュのペギーが初期装備の全てを見立ててさしあげま~す(^^♪」

 
 カーネルサンダースをオバサンにしたようなのが魔法使いの出現みたいなエフェクトとともに現れた。

 

 ☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長 
  •  小山内健人 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ
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