大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・014『入学式・1』

2023-03-25 11:38:04 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

014『入学式・1』   

 

 

 こんなに可愛いんだよ、元気出してがんばれo(>ω<)o!

 

 証明写真のメグリがこぶしを握って励ましてくれる。

 魔法じゃないんだ、アプリだよ。

 白黒の証明写真にアプリを使って色を付け、もう一つのアプリで動かしてみた。メッセージを打ち込むと写真に見合った人工音声で喋ってくれる。

「へえ、なんだか魔法みたいね」

 引退魔法少女のお祖母ちゃんも珍しそうにのぞき込んでいたよ。

 有料アプリなんだけど、5人分は無料の体験版。

 

 月も改まって4月1日の今日は入学式。

 

 クラスも発表されるし、本格的な高校生活が始まる。

 靴下までおニューの制服。

 おニュー独特の匂い。袖口や首筋に触れるブラウスの襟の微妙な硬さ。

 歩くたびに胸元から新品の香り。ローファーも新品で足を下ろすたびにコツコツと音がする。

 髪は悩んだ末にポニーテール。

 ゴムを三重にした上に紺のリボンシュシュ……うん、キリっと清楚で好印象!

 

 で、勢いをつけて家を出たんだけど、戻り橋を渡って昭和に足を踏み込んだとたん緊張してきた。

 そこで、歩きながらスマホを出して自分に励ましてもらってるというわけさ。

 

 宮之森で降りて改札を出る。乗ってる間は気づかなかったけど、同じ制服着た子たちがゾロゾロ歩いてる。

 保護者同伴の子と、わたし同様一人で来てる子と半々。

 入学式だから保護者も来るんだけど、新入生はいったん教室に入る。開式までは時間があるし、親が付いてると恥ずかしいし、だから一人。特に男子はほとんど一人。

 あ、十円足りない男子!

 あいつも宮之森だったの!?

 新入生には見えないんだけど……あんまり見ないようにしよう。

 自然に顔をそむけたところに売店。

 前に並んだ新聞の見出しは『日航機を乗っ取り』『金浦空港に着陸』の大見出し。

 通勤時間のピークは過ぎてるんだろうけど、けっこうな人たちが新聞を買っていく。

 思い出すと、電車の中で新聞を見ている人も多かった。やっぱ、ハイジャックのインパクトは大きい。

 商店街に入ると、電機屋さんの前、テレビは金浦空港を映してるけど、昨日ほど見ている人は居ない。

 膠着状態ってやつなんだろうけど、解決遅くない? 二十一世紀なら特殊部隊とかがダダって突撃して犯人撃ち殺しておしまいだと思う。

 

 学校に着くと昇降口。

 

 入り口のガラスにクラス編成の紙が張ってあって、そこで、クラスを確認。

 …………あった、5組だ。

 時司巡の頭に30とあるから、出席番号は30らしい。

 中学では23だったから、ちょっと後ろの印象…………ああ、48番まであるのか。昔の学校って、ちょっと多い。

「下足箱はクラスごとになってます、出席番号と名前を確認して上履きに履き替え、直ぐに教室に行ってくださーい」

 女の先生が、良く通る声で注意してる。

 声がいいってだけで、ちょっと嬉しい。オッサンの先生もいるけど黙って突っ立てる。

 

「トキツカサさーーん!」

 え?

 

 振り返ると唯一見覚えのある女の子。

「あ、宮田さん!」

「嬉しい、おんなじクラスなんですね!」

「あ、そうなんだ! わたしって、自分の名前しか見てなかったから(^_^;)」

「いいえ、宮田なんて目立たない苗字ですから」

「いやいや(^_^;)」

 なにがいやいやなんだか、二人アハハと笑って北館二階の教室に向かった。

 

 教室の前にはすでに先生が居た。

 中年のオッサン、藤田先生だというのはクラス表で分かってたけど、ちょっととっつきにくそう。

 セサミストリートだったっけ、眉毛のつながったキャラがいたけど、あの感じ。

 席は、窓から二列目。宮田さんは三列目で、ちょうどわたしの横。

 ちょっぴり嬉しくって宮田さんにピースサイン。

 ?…………という顔をして、すぐにグーを出す。

 え、ジャンケンだと思ってる?

「名前を呼んで確認します。返事しなさい」

 簡単に言って、出席番号一番から名前を読み上げる藤田先生。

 

 あれ、五番目の席だけが空席……先生は、その空席を不審にも思わずに六番目を呼んで、あっという間に点呼を終わる。

「では、時間なので廊下に、男女別二列に並びなさい。教室には荷物を残さないように」

 なんか無言で先生の指示に従って廊下に並ぶ。

 無駄口をきくものも居なくって、なんだか緊張。

 やがて、前の方……どうやら隣の四組が動き出したのに続いて式場に向かう。

 ペッタンペッタン……

 上履きがサンダルなので、大勢が揃って歩くとおもしろい。

 アハハ( ´艸`)

 つい笑ってしまう。

 とたんに先生が振り返って睨まれる。

 なんか緊張してきた(;'∀')

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 宮田博子              1年5組 クラスメート
  • 須之内写真館            証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館

 

 

 

 

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RE・かの世界この世界:048『ブロンズですか?』

2023-03-25 07:18:39 | 時かける少女

RE・

48『ブロンズですか?』テル  

 

 

 ケイトの回復スキルによってHPを全快したタングリスは、一本だけ残った鞭を高速回転させて突っ込んでいく!

 ビシビシビシビシビシビシ!

 我々のために時間稼ぎをするつもりなんだ……タングリスの自己犠牲の精神に胸が熱くなる!

 

 しかし逃げるわけにはいかない! タングリスの自己犠牲に甘えるわけにもいかない! 旅は始まったばかりだ!

 一瞬ケイトを見上げるが、十字姿勢のまま呆然と浮遊するばかりで、わたしやヒルデのHPまで回復してくれる様子はない。

「テル、突っ込むぞ!」

「おう!」

 ヒルデとわたしは、HPを回復することなくタングリスに続いた。

 

 数秒の間に事態は変わった。

 

 ヒルデの突進力はすごく、瞬くうちにタングリスに追いつき、首が千切れるんじゃないかという勢いでツィンテールを旋回させた。

 ブビューーーーン!!

 タングリスの鞭もヒルデのツィンテールも、高速回転のあまり熱を帯びて発光し、発散されるエネルギーが旋回半径の倍ほどの距離にいるシリンダーさえも粉砕している。

 凄い!

 感動したのは一瞬だった。

 瞬間、融合体が膨張したように見えた。

 ブワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワワ

 違う!!

 膨張したのではなく、融合を解いたのだ!!

 融合するときに圧縮されるのだろう、放たれたシリンダーたちは瞬間に空気を充填されたようになり、元の融合体のサイズからは想像できない数になって二人に襲い掛かった!

 ジュジュッ!

 最初に襲い掛かった数百は主従二人の得物によって、焼け石にかかった水滴のように蒸発した。しかし、続くシリンダーたちは、仲間の蒸発によって熱を下げた得物もろとも二人を覆いつくしてしまった。

 二人が危ない!

 

 ブオッ!!

 

 わたしの中を灼熱するなにかが突き上げてきた!

 ほんの数瞬のうちの目まぐるしいせめぎ合い! そして眼前に迫った二人の危機にわたしのコアが炸裂した!

 
 グオーーーーーーーーーーー!!!!!!

 
 制御できない叫びをあげて突進し、ソードを二閃させた!
 
 ズバッ! ズビッ!

 二閃させただけでは勢いは収まらず、わたしはコマのように旋回しながら数十メートル上空に吹き飛ばされた。

 からくも踏ん張って勢いを削ぐと、さっきまで融合体であったシリンダーたちは数十分の一までに数を減らして四方に逃げ散っていく。

 浮遊していたケイトが、ゆっくりと動作し始めてグリーンのヒーラービームを放ち始め、ほとんどゼロになっていた二人のHPを回復し始めた……。

 

「二人とも凄かったじゃないか(^▽^)!」

 

 融合体との遭遇戦が終わって、しばらくは口もきけない四人だったが、回復力が人一倍のヒルデがニコニコ笑顔で言う。

 こういう時のヒルデは、出会った時のように、ひどく幼い顔に見える。

「ケイトのヒーラーぶり、ちゃんとコントロールできるようになったら、弓士とヒーラーが立派に兼ねられるぞ!」

「はあ……でも、ぜんぜん憶えてないんですよね(*´0`*)」

「テル殿のソードも凄かった。 あれが無ければ、この旅は、このムヘン川のほとりで幕を閉じていたところです」

 タングリスもポーカーフェイスのまま褒めてくれる。

「とっさに出たスキルで、自分でやったものなのか実感が……」

「実感は大事だ! わたしが、スキルに名前を付けてやろう!」

 可愛く腕を組むヒルデ、額に皴を寄せること数秒。パッと灯りが付いたような顔になって宣言した。

「オーバードライブってことで、ケイトのがブロンズヒール! テルのがブロンズスプラッシュだ!」

「え、あれだけの力がブロンズなのですか?」

 二号戦車を街道に戻し、クラッチを二速にしながらタングリス。

「ブロンズにしとけば、これから、シルバー、ゴールド、プラチナって伸びしろを感じるだろ。いいか、ふたりとも、これからスキルを使う時は、スキル名を高らかに名乗るんだぞ。ブロンズなんとか! すると、敵も、もっと強力なのがあるんじゃないかとビビるからな。アハハハ」

 こういうところの無邪気さも子どもだ。

 じつに、いちばん正体が分からないのは、このヒルデかもしれない。

 

 え? 

 

 ヒルデと呼んでないか?

―― 姫! ブリュンヒルデ姫! ――

 戦いが始まって、ヒルデが融合体に突撃して……その時、タングリスはヒルデの真名を叫んでいた。

 そうか、ヒルデの突撃でトール元帥の戒めも緩んでしまったか。

 ヒルデ……わたしもブリの愛称で呼ぶのを止めてヒルデと呼んでいる。

 うん、こちらの方が似つかわしい。

 

 見上げた空にはポッカリ白い雲がゆっくりと後ろに流れていく。

 その緩い流れに逆らって二号戦車は西を目指した。

 

 

☆ ステータス

 HP:1000 MP:800 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・20 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 
☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 
 ブリ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
 グリ(タングリス)   トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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