大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 159『三蔵法師大説法会プラスアルファ・1』

2024-01-10 12:21:33 | ノベル2
ら 信長転生記
159『三蔵法師大説法会プラスアルファ・1』孫権 




 ドォォォン パチパチパチパチ ドォォォン パチパチパチパチ


 豊盃一番の大慶公園の空にいくつも花火が上がる。

 打ち上げる音は抑えてある。街の真ん中だということもあるし人を脅かすのが目的じゃないからね。普通の花火なら――ドゴオオオオン!――ぐらいの音になる。
 孫策兄さんの即位式は、この――ドゴオオオオン!――だった。まだ小さかった僕は、写真を撮るどころじゃなくなって、耳を押えてオシッコを漏らさないようにしているのが精いっぱいだった。

 でも、200メートルの上空に差し掛かって爆ぜる音はポップコーンのように大きくて陽気だ。
 昼間の花火なので、色薬が仕掛けられて、青・黄・赤・白・樺(橙)プラス輝きとメチャクチャ華やか。
 輝きを含む六色は仏教のシンボルカラーだ。仏陀の体からは、常にこの六色の光が発せられていたという伝説に則って仏教のシンボルカラーになっている。

 で、なんで、豊盃一の公園を借り切り、朝から花火を打ち上げているのかというと、三蔵法師さま御一行がやってくるから。


 そうなんだ、大橋姉さんは、とうとう三蔵法師さま御一行とコンタクトをとることに成功して、この豊盃の街に招いて説法会を開くのに成功したんだ!

 三蔵法師さまを招へいするのにはパサージュの中央路で書店を出していた書籍範のお爺ちゃんが骨を折ってくれた。

 わざわざ西安まで行ってくれて、西安からはラクダに乗って御一行と接触してくれた。
 
 三蔵法師さま御一行は、途中さまざまな難儀に出会われた。たいていは土地の妖怪たち。最後には始皇帝の兵馬俑たちまで現れて危機一髪だったんだけど、毘沙門天を兜に頂いた将軍が少数の部隊で兵馬俑たちを翻弄、始皇帝自身も重傷を負って御陵に引き返した。

 この将軍は扶桑の上杉謙信という美形の女将軍らしい。

 女将軍は、始皇帝たちが三蔵法師さまに手出ししない、できないことを見届けると、そのまま長城を超えて扶桑に帰って行った。

 その爽やかさと、我らが三蔵法師さまを救ってくれたことで、異国の越境軍であるのにもかかわらず、非難する声はない。

 そして、無事に三蔵法師さまを豊盃にお招きし、豊盃一番の大慶公園を借り切って、大説法会プラスアルファを開く段取りになったんだ。


「ちょっと、孫権、あんたの差し金か!?」


 花火のキラキラを撮っていると、突然うしろから怒られた。

 カメラマンの性で、ファインダーを覗いたまま振り返ると、フレームいっぱいに、三白眼のジト目さえ止めれば大橋姉さんの次に美少女の劉度姐。

 パシャパシャパシャ

「ちょ、人が真剣に怒ってるとこ撮るんじゃないわよ!」

「あ、ごめん(^_^;)」

「あのさあ、なんで、偉い坊さんの前座で踊らなきゃならないわけ!?」

「え、あ、それは……」

「出店とかもいっぱい出てるしぃ。元々スナイパーだから仏教とか宗教には興味ないけど、どうかと思うわよ。仏具屋とか本屋の出店はともかくさ、三蔵饅頭、三蔵クレープ、三蔵煎餅、なによ、まったく! あっちなんか、フィギュアまで売ってるし!」

「みんな好きだからねぇ、じっさいスゴイよ、たった二週間で作っちゃうんだから。1/12 1/8 1/6とサイズもいろいろだし。三蔵法師さまだけじゃないよ、悟空・八戒・沙悟浄も出てるし、兵馬俑のとかも、ほら……あっちのショップじゃ毘沙門天とかも。ほら、これ見てよ」

「写真に興味はない」

「いや、望遠で撮ったんだけどね」

「隠し撮りぃ~?」

「いや、業者が荷下ろししてるとこ撮ったんだけどね」

「なに、マネキン?」

「半分布で隠れてるけどね、この腰の捻り方とか右肩の上げ具合」

「腕と首は付いてないっぽいけど」

「リュドミラ、これは君のフィギュアだよ。フィニッシュの決めポーズの時の」

「え、ええ(# ゚Д゚#)!?」

「売り物じゃないよ、リュドミラのことリスペクトして作った参考作品だ」

「え、いや……だってぇ!」


 リュドミラは真っ赤になって立ち尽くした。

 僕は嬉しい。

 出会った頃のリュドミラは、俯いているか睨んでいるかしかできない子だった。
 それが、人前で踊るようになって、たとえ不満があってプンスカ怒っていても、こんなにたくさん喋って頬を赤らめて。

 僕は大橋姉さん小橋姉さん、それに魏の茶姫姉さんが好きだ。美人で行動力があって、少々の苦難にはへこたれずに笑顔で前を向いている。

 でも、コミュ障で言葉足らずで、口より先に引き金を引いてしまいそうな子だけども、こんな風に女の子らしさを取り戻していくリュドミラを見ているのも好きだ。

 さあ、いよいよ三蔵法師大説法会with豊盃フェスティバルが始まるよ。



☆彡 主な登場人物
  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主
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ここは世田谷豪徳寺(三訂版)第46話《コクーン・3》

2024-01-10 08:47:51 | 小説7
ここ世田谷豪徳寺 (三訂版)

第46話《コクーン・3》さつき 





 なんと陸自のレオタール君がシート脇の通路でニコニコしている!


「え、どうしてレオ君が?」

 あかぎの見学から名前を約めて呼んでいる。

「仕事だよ。幹部の通訳で付いていくんだ。一佐、お席はこちらです」


 CAのオネエサンと話していた制服のエライサンがこちらにやってきた。


「おや、このお嬢さんは、君の知り合いの方かい?」

 一佐の階級章を付けたエライサンがにこやかに聞いた。

「渋谷案件の相手の方です」

「ああ、あのときの……その折りは、ご迷惑をかけました。また、しっかりした対応をしていただきましたので、部隊としても大変助かりました。申し遅れました、連隊長の小林です」

「小林イッサ……ですか」

 世界の常識で言えば小林大佐なんだけど、自衛隊独特の呼称がユーモアを呼ぶ。

 シートベルトを外すころには、三人の会話はいっそうフレンドリーになっていた。

「ほう、お兄さんは『あかぎ』に乗っておられるのですか」

「はい、砲雷科で班長やってます。こないだはレオ……レオタールさんに来ていただいて兄も喜んでいました」

「あれが、新聞とSNSに出たことが、今回のことを円満に解決してくれました。お兄さんにお礼を言っておいてください」

「言い出したのは父なんです。昔は兄が防衛大学に入るのにも反対してた人なんですけど」

「自分も一度お目に掛かりましたが、とてもご理解のあるお父さんでした」

「わたしのフランス留学には反対なんですけど。なんてのか、心で反対、頭では賛成なんです」

「それが、親心というもんでしょうねぇ。わたしにも娘がいますが、素直には賛成しないでしょうね」

「けっきょく、コクーンなんです」


 このコクーンという言葉に小林一佐も、レオ君も反応してくれた。


「家庭がコクーンだという発想は正しいと思うな。コクーンに居る限り身の安全は保証されるけど、コクーンの中に居る限り成虫にはなれないもんね」

「だからレオタールは、コクーンを飛び出すために、アメリカの大学に行ったり、北海道で牛の世話とかしていたんだな」

「サンダースは、そこまでご存じだったんですか?」

「ああ、新入隊員の人事標は全部目を通すからね。君のは特に面白くて印象に残っているんだ」

「あの、サンダースってのは……懐かしの『コンバット』なら、軍曹だと思うんですが?」

「ああ、ケンタッキーの方ですよ」

「え、カーネルサンダース……ですか?」

「あれ、サンダース大佐って意味。なんか、一定の雰囲気になると、うちではサンダースって言うんだ」

「私服のときなど、業界用語ははばかられる場合もありますからね」

「他の部隊じゃ、オヤジとか言うんだけどね。なんか普通で面白くないじゃない」

「あ、これ、レオ君が考えたんでしょ!?」

「あ、その、変なことは、みんなボクみたいな言い方は止してくれる(^_^;)」

「ハハ、うちの娘ですよ。二佐の時に『今度進級したら小林イッサになっちゃう。イメージ壊れるから、他のにする』で、サンダース。これをある幹部に話したら機密保持ができんやつで、いつのまにか部隊中に広まりましてね」

「ハハ、面白い娘さんですね」

「いや、あなたもなかなかのものだ。フランスにいったらがんばってください」

「はい」

「で、気が変わったら、いつでも自衛隊に。ま、自衛隊も有る意味コクーンかもしれませんがね」

「サンダース。それは本人の心の持ちようだと思いますが」

「ハハ、そういうとこで突然真っ直ぐになるのも、レオタールのいいとこだ」

「え、ええ、そうですか?」


 レオは、わたしでも分かるコクーンとしての自衛隊の意味が分かっていない。こういうボケたところが、なんとも若者としてはおもしろい。自衛隊員としては……小林一佐の前なので、あたしは言うのを控えた。


 それは、シャルルドゴール空港に着く一時間ほど前のことだった。


『attention, please! attention, please!  Is there anyone who can fly a jet airliner?  どなたか、ジェット旅客機の操縦が出来る方はおられませんか!?』


 機内放送が、英語と日本語で喋り始めた……。


☆彡 主な登場人物
  • 佐倉  さくら       帝都女学院高校1年生
  • 佐倉  さつき       さくらの姉
  • 佐倉  惣次郎       さくらの父
  • 佐倉  惣一        さくらとさつきの兄 海上自衛隊員
  • 佐久間 まくさ       さくらのクラスメート
  • 山口  えりな       さくらのクラスメート バレー部のセッター
  • 米井  由美        さくらのクラスメート 委員長
  • 白石  優奈        帝都の同学年生 自分を八百比丘尼の生まれ変わりだと思っている
  • 原   鈴奈        帝都の二年生 おもいろタンポポのメンバー
  • 坂東 はるか        さくらの先輩女優
  • 氷室  聡子        さつきのバイト仲間の女子高生 サトちゃん
  • 秋元            さつきのバイト仲間
  • 四ノ宮 忠八        道路工事のガードマン
  • 四ノ宮 篤子        忠八の妹
  • 明菜            惣一の女友達
  • 香取            北町警察の巡査
  • タクミ           Takoumi Leotard  陸自隊員 
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